山の鬼

バブみ道日丿宮組

お題:つらい山 制限時間:15分

山の鬼

 鬼が出ると言われてる山は、高い柵によって包囲されてる。一般人は立ち入ることはなく、中に入るのは特別なライセンスを持った人間だけが許可されてる。

「鬼って本当に出るのかな?」

「帰ってこない人もいるし、写真だって公開されてるじゃない」

 カフェテリアのテーブルに背の低い少女と、背の高い少年が座ってる。テーブルの上にあるのは、少年が集めてきた鬼と呼ばれるUMAの資料。少年たちは部活動でUMAについて研究してるのだ。

「他のUMAはさ、未確認だからといって立入禁止とかしてないじゃん?」

 少女が首を傾げる。

「ツチノコがその理論当てはまったら、外歩くのは禁止行為になるだろうね」

「そうでしょ。だから、鬼はきっといるのよ。そんでもって、山に出てくる」

 ぽんぽんと人差し指で1つの写真を少女は示す。

「本当に出るなら会ってみたいな」

「会ってどうするの? 行方不明になるんだったら、殺されるんじゃない?」

 うーんと、少女は唸った。

「殺されるのはいやね。他のUMAだって調べたいし」

「そうでしょ。それに山に入るのはまず不可能だよ」

 シークレットと書かれた書類を少年は手に取る。

「部長が長年集めてきた資料によれば、入り口には兵士がいてなおかつ山を囲う柵の周りにはたくさんの監視カメラがある……らしいよ」

 実際の写真がこれと、書類の中から写真を一枚取り出して少女に見せる。

「確かに兵隊さんがいるわね。監視カメラってのは写ってないみたいだけど」

「そりゃ写ってるなら、こっちも撮られてるわけだからね」

 そこはちょっとと少年は口を挟む。

「自家用ヘリでもあれば、突入できそうじゃない?」

「さすがにその考えは安直すぎるよ。陸が監視されてるなら当然空も監視されてるはずだよ」

 ぐぬぬと少女は表情を曇らせる。

「じゃぁ鬼は諦めるしかないのかな」

「それっぽい写真を集めるだけは可能かなぁ。とはいってもこの国のように発見情報がある場所は立入禁止になってないからわからないね」

「そう。そこがおかしいのよね。どうして鬼がいるからといって立入禁止にするのかしら? 保有者は一般の人って情報が出てるじゃない」

 テーブルの上に置かれたコーヒーカップを手に取り、一息。

「まぁわからないね。名前だって偽装かもしれないし、本当なのかもしれない。ただわかるのは入ってはいけない何かがあるってことだよ」

 それがなにかってのはわからないけどと、少年は言葉を付け足す。

「うーん、不可思議ね。鬼が柵を超えられないとでも思ってるのかしら? 人間よりも強いんでしょ?」

「それはあくまでも調べてる人の見解だからね。実は弱っちいのかもしれない。弱ければ保護しなければ死んでしまう。そういうこともありえるでしょ?」

 はぁと少女は背もたれに体重を預ける。

「結局入ってみなければわからないことってことよね」

 そうだねと、少年は毎度のことのように言葉を作った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

山の鬼 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る