骨82本目 スライムダンジョン

 スライムダンジョンに到着。


 ここは大人気ダンジョンで、人も屋台も露店も多い。

 あらゆる種族の冒険者が居る。

 ダンジョンの入り口付近から賑わってる。


「おい」


「なぁクリノヴァ、俺はボーンだ。名前で呼んでくれないか?」


「ふん」


「それで? なんなんだよ?」


「ボーンよ、武器を貸すのだ。我はあれがいい」


「あれって、ハンマーがいいのか? ほら、壊したら弁償だからな」


「うむ」


 クリノヴァは相変わらず謎だ。

 どうして人が持つ武器を持ちたがるのか。

 何故ハンマーがいいのか。

 どうせ理解できないから聞かないが。


 ハンマーを振り回すクリノヴァは上機嫌だ。

 危ないからやめてほしい。

 ハンマーを振り回すドラゴンってなんなんだよ。


 ちなみにクリノヴァに貸したハンマーは、内包された魔力が素晴らしい最高級品なので壊さないでほしい。


 俺はハンマーを使わないが、価値ある装備品は壊されたくない。


 ああ、やっぱり、貸さなきゃ良かった。


 今さら後悔してきた。


 失敗したな、適度な距離感とは難しい。


 そんなクリノヴァは屋台で肉を食べ始めた。

 どんだけ食いしん坊なんだ。

 ライラのように協調性が欠けているタイプだな。



◇   ◇   ◇   ◇   ◇



 しばらくして俺達の順番がきた。


 身分証の確認は無し、入場料は金貨1枚だった。

 予想通り金を取られた、ちくしょう。


 ダンジョン内は鉱山のような岩山型だ。


 天井は高く、通路は広く、岩が転がってる。

 壁自体が魔力で光っており、視界は明るい。

 階段で下に降りて進む、普通のダンジョンだな。


 通路ではスライムを叩いてる冒険者をよく見かける。

 数人でスライムを袋叩きにしてる感じだな。

 スライムはたまに体当たりをするが、ほとんど抵抗しない。

 冒険者に対する敵対心が薄いのだろうか?


 スライムの行動原理はよく分からないが、経験値が稼げる理由は分かった。

 このスライムが相手なら余裕そうだな。


 それにしても冒険者が多い。

 ここではレベル上げなんてやってられないな。

 まずは人が居ない場所に行かなければ。


 あ、目の前にスライムが現れた。


 ――ズドンッ!


 と思ったらクリノヴァが一撃で粉砕した。

 スライムは跡形も無く消え去った。


「クリノヴァ、今回の目的はルチャのレベル上げだぞ。分かってるのか?」


「小癪な」


「次はルチャに譲ってくれよ?」


「ふん」


 なかなか扱いの難しいドラゴンである。

 悪い奴じゃないんだが、我慢が必要だ。



◇   ◇   ◇   ◇   ◇



 ダンジョンの奥に進むほど、冒険者の数は減っていった。

 これならレベル上げもやりやすくなるな。


 ――ニュル。


 壁の割れ目からスライムが現れた。

 スライムは土色で、丸くて綺麗な形をしている。

 大きさは両手で抱えられるくらいだ。

 俺達を警戒する様子もなく、その場で跳ねてる。


 これが海外のスライムか。

 俺の記憶にあるスライムとは随分と違う感じだ。


「ルチャ、倒してみてくれ!」


「分かったの」


 ルチャは得意の風魔法『風刃』を無数に操り、スライムを切り裂いていく。


 スライムは切り刻まれて呆気なく消滅。

 苦戦する場面はなかった。


「どうだ? 経験値が美味しい感じがするか?」


「分からないの、弱すぎるの」


「この辺りのスライムはレベルが低いのかもしれないな。もっと奥に行くか」


「うん」「「ニャ」」「ふん」


 俺達はどんどんダンジョンの奥へと進んでいった。



◇   ◇   ◇   ◇   ◇



 10階層に降りる階段に到着。


 大きな看板が階段付近に立ててある。


 ・これより先は10階層になります。

 ・10階層からレベル180以上推奨です。

 ・10階層からスライムが凶暴になります。

 ・無理せず撤退の決断をお願いします。

 ・ダンジョンコアは取らないで下さい。


 なるほど、分かりやすい警告だな。

 ここから危険です、と教えているのだ。


 とても親切だと思うが、せっかくのダンジョンが台無しだ。

 こんなの冒険者らしくない。

 今の時代は便利になったが、こうやって味気ない部分が増えたよな。

 思わずため息が出そうだ。


 やれやれ、仕方ない、頭を切り替えよう。


「ルチャ、アル、レット、ここからは油断せず、警戒しながら進もう」


「「「ニャッ!」」」


「我は?」


「クリノヴァは油断してても怪我しないだろ」


「ふん」


 階段を降りてすぐに、大きなスライムと戦う冒険者4人組を見つけた。


 おお、そうだ、これこそスライムだ!


 俺の身長くらいに大きな体。

 ウネウネと動く気持ち悪い触手。

 半透明の体の中で動く核。

 冒険者を飲み込もうと襲ってくる姿勢。


 これぞスライム、まさにスライムだ!


「皆、あの冒険者達みたいに触手に触れないように動くんだぞ。スライムの触手は物を溶かす性質があるからな。スライムは体の中にある核を破壊すれば死ぬ。核を狙っていこう!」


「「「ニャッ!」」」「ふん」


 スライムは沢山いるので戦う相手には困らない。

 この辺りのスライムは根こそぎ倒してやるぞ。


「あ、ボーンにわたしの結界魔法をかけるの」


 スライムといざ戦おうとした時にルチャがそう言った。


 ルチャの結界魔法か。

 それは是非とも試してみたい。

 なので「やってくれ!」とルチャに頼んだ。


 ルチャに結界魔法をかけてもらうと白い膜のような魔力が体を包み込んだ。


 これが結界魔法か。

 なんだか気持ちいいな。

 どれだけの防御力と耐性があるのか試してみよう。


 俺はスライムと対峙する。


 そしてわざと触手に触れてみる。

 スライムは白い膜を破って俺に触れることはできなかった。


 これは凄い魔法だな。

 魔力障壁を強力にしたような感じだ。


 俺は用済みとなったスライムの核を闇弾で撃ち抜いた。

 スライムはやはりスライム、弱かった。


「ルチャの結界魔法は凄いな! かなり使える魔法だ!」


「えへへ! わたしもそう思うの!」


「よーし、どんどんスライムを狩ろう! レベル上げするぞ!」


「「「ニャッ!」」」「ふん」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る