骨81本目 フィデル王国に行こう

 じいさん精霊と別れの時がきた。


「じゃあまたな、じいさん」


「達者でのう、また妖精駆除を頼むのじゃ」


「ああ、またその時に会おう」


「さらばじゃ」


 こうして俺はじいさん精霊と別れ、そのまま大樹国の冒険者ギルドに向かった。

 ギルド内で治療活動をして、金貨を稼ぐのが狙いだ。


「冒険者ギルド内で治療活動をしたいのだが」


「アルレット名誉伯爵様、申し訳ありません。魔族国から通達が届いております。冒険者ギルド内での治療活動は重傷者だけを対象にしてください」


「えっ、もうそんな情報がこの国にまで届いてるのか」


 驚いたな、情報の伝達が早い。

 何か便利な魔道具でも使ってるのか。

 流石は未来の冒険者ギルドだ。


「それなら仕方ないな。じゃあ重傷者を紹介してもらえないか?」


「少々お待ちください」


 そしてしばらく待ったが重傷者はどうやらいないようだ。

 これでは金貨を稼ぐことができない。

 これは困った、移動費も宿泊費も無いぞ。


「そうだ、使ってない魔法袋を売ろう。俺は最高ランクの魔法袋持ちだからな。容量が小さい最低ランクの魔法袋を売ろう」


 俺は受付で売れるか聞いてみる。

 どうせ売るなら魔道具屋に売った方がいいと教えてもらえた。


 早速、魔道具屋を訪ねる。


「いらっしゃいませー」


 受付にエルフの男性が1人いる。

 彼が店主のようだ。


「この魔法袋を売りたいのだが」


「確認しますね……うーん、この容量なら金貨500枚と言ったところですかね」


「それでいい、よろしく頼む」


「あっ、近くの防具屋に行けば、もう少し値段が高くなる可能性がありますよ?」


「いや、金貨500枚でいいから、買い取ってくれ」


「分かりました、では買い取らせていただきますね」


 よし、とりあえずの活動費は手に入れた。


 これで所持金貨500枚、危なかった。

 光龍クリノヴァに根こそぎ支払ったからな。

 これからは少しずつ使うようにしよう。



◇   ◇   ◇   ◇   ◇



 アルとレットの魔力を感知してルチャ達の居場所を特定した。


 どうやらルチャ達は食堂に居るようだ。


 俺は食堂に入り、個室に居た皆と合流する。


「さっきのはなんだ?」


 クリノヴァがお怒りである。


 俺は召喚したら、何故かクリノヴァしか召喚できなかった事を伝える。


「すまなかったな。わざとじゃないんだ」


「3度も召喚したのにか?」


「だから謝ってるじゃないか。もう召喚しないって」


「ふん」


 鼻息を荒く鳴らしたので、どうやら許してもらえたようだ。

 これから召喚魔法は封印するとしよう。


 そんな俺とクリノヴァを放置して、ルチャとアルとレットは食事を満喫していた。


「ルチャ、これからどこか行きたい場所はあるか?」


「ボーンに任せるの」


「じゃあフィデル王国のスライムダンジョンに行こう。アルとレットもそれで良いか?」


「ボーンに任せるのニャ!」


「任せるのー! どこでもいいのー!」


「よし、決まりだな!」


 ルチャ達の食事が終わり次第、フィデル王国に転移しよう。

 レベル上げダンジョンか、楽しみだ。


「おい」


「なんだよ、クリノヴァ」


「我は冒険者になったのだが?」


「まるで理解不能なんだが?」


 冒険者になったからなんなんだ。

 その睨みつける目はなんだ。


「……もしかして、クリノヴァも冒険者として活動するつもりか?」


「暇潰しだ」


「暇潰しでダンジョンに行くのか? まあ、別について来てもいいけど」


「ふん」


「クリノヴァは寂しがりなの」


「そうなのニャ! いつもの事なのニャ!」


「寂しがりなのー! 構ってほしいだけなのー!」


「黙れ、殺すぞ」


「いつも殺すとか言うけど、誰も殺さないの」


「ひどい事ばっかり言うのニャ!」


「クリノヴァは恥ずかしがりなのー!」


「ふん」


 なるほど、寂しがり屋で、構ってほしい性格で、ひどい事ばっかり言うのか。


 なんて面倒なドラゴンなんだ。

 しかも強いっていうのがタチが悪い。


 いや、クリノヴァの事を考えても仕方ないな。

 ついて来たければ勝手にすればいいさ。

 たとえ面倒を起こしても、俺には関係ない筈だ。



◇   ◇   ◇   ◇   ◇



 皆の食事が終わったので、食堂を出て転移場に向かう。

 食事の会計はクリノヴァがカードで支払った。

 随分と人の文化に慣れてやがる。


 行き先はフィデル王国。

 転移魔法陣であっという間に到着。

 移動費は金貨5枚だ。


 フィデル王国も他の国と同じように栄えている。

 この時代はどこに行っても人や建物、店や商品、あらゆる物が充実している。

 転移場がある街はどこも似たような感じなのだろう。


 まず冒険者ギルドに向かう。

 冒険者としての基本だ。


 案内の看板があるから迷わない。

 ありがたいのだが味気ない、いつもの事だ。


 冒険者ギルドの受付に行き、スライムダンジョンの場所を教えてもらった。


 完全攻略したらダメだとも教えられた。

 大人気ダンジョンだからな。

 それくらいは俺でも分かっている。


「よし、じゃあ早くダンジョンに行きたいし飛んで行こうか」


「分かったの」「分かったのニャ」「分かったのー!」


「ルチャはアルかレットのどっちかに乗せてもらってくれ」


「じゃあ、アルとレットに交互に乗るの」


「任せるのニャ! 飛ぶ練習がしたいのニャ!」


「じゃあ次はレットが乗せてあげるのー!」


「アル、レット、ありがとうなの!」


「「ニャッ!」」


「じゃあ行こうか。クリノヴァは……うん、勝手について来てくれ」


「ふん」


 目指すはスライムダンジョン。


 経験値が多く、世界で大人気のダンジョンだ。


 レベル上げが楽しみだな。

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