骨80本目 妖精駆除の結果

 妖精駆除が始まった。


 深い闇の空間に住む妖精達は、ひたすら闇弾のような魔法攻撃をしてくる。


 俺は前回の妖精駆除で思った事を試してみた。

 それは妖精をユニークスキルで吸収できないか、というものだ。


 果たして、結果はどうか。

 いざ、ユニークスキル発動!


「やった! 吸収できたぞ!」


 俺の考えは間違っていなかったらしい。

 妖精とは精霊がアンデッド化した存在だったのだ。


 妖精1匹で魔力量が10から20上昇する。

 空間のコアになっている小さな闇の玉1つで、魔力量が200ほど上昇する。


 妖精は経験値も美味しい。

 レベルも上がるのだ。

 何匹も妖精を吸収し、何度もコアを吸収する。

 その繰り返しの作業だ。


 今となっては妖精相手が楽になった。

 吸収できる存在なら怖くないからな。

 簡単に蹂躙できる。


 俺は改めて自分の骨体の性能を確かめる。


 キレのある動き、力強い骨体、翼を駆使した移動、溢れる魔力。

 全てが桁違いだ。


 今なら高位ダンジョンのボスとも良い勝負ができるのは間違いない。

 だが過信するのは良くないだろう。


 確かに俺は強くなったが、ドラゴンクラスには程遠い存在なのだ。

 幻獣のアルにも及ばないからな。

 まだまだこれから、少しずつだよな。



◇   ◇   ◇   ◇   ◇



 骨体の性能を確かめながら、妖精駆除は終わった。


 おそらく妖精を1000匹くらい駆除した。

 空間のコアは100個くらい吸収した。


 さて、ステータスを確認しよう。




 個体名:ボーン

 レベル:223

 魔力量:184560

 骨密度:113856

 ユニークスキル:全骨統

 属性:火・土・光・闇黒・回復




 よーしよし、体感通りの数値だ。


 レベルは220を超えた。

 魔力量は進化前の倍くらいに上昇した。

 骨体の性能は倍くらいに良くなった。

 ステータスの上がる調子が良い。


 良いタイミングが重なったからだ。

 クリノヴァの魔力と妖精の魔力。

 この2つの要素が大きかった。

 また骨密度上げをしないといけないな。


「これで全ての妖精駆除が終わったんだな?」


「そうじゃ、良くやってくれたのう。感謝するぞ。報酬は何も無いがのう」


「ケチだな。じゃあお願いなんだが、召喚魔法陣について助言をもらえないか?」


「それくらいなら良いじゃろう」


 俺は魔法袋から召喚魔法の本や、ライラから貰った最新の魔法陣集を開き、魔法陣を描いていく。


 魔法文字、記号、魔力が通る道などを丁寧に地面に描いていく。

 自分なりに魔力が通る線を配列し直して、完成させた魔法陣。

 我ながら自信のある、最高傑作の召喚魔法陣だ。


「完成だ、じいさんから見てどうだ?」


「全然だめじゃな。方向性が感じられない魔法陣じゃな」


「くっ……どこがどうダメなのか、教えてくれ」


「召喚したいのは魔物じゃろ? その召喚した魔物をどうするのじゃ?」


「……そりゃあ、召喚した魔物を相棒にするんだよ」


「では、召喚する魔物はボーンより弱い魔物にするのじゃな。召喚された魔物に殺されるのは嫌じゃろ?」


「うーん……そもそも、召喚した魔物とは主従契約のような形になるのか?」


「それらは全て、召喚された魔物次第じゃろう」


「なるほど……あ、卵を召喚する事は出来るのか?」


「何が生まれるのか分からん卵で良ければ、ふむ、可能じゃのう」


「それは困る。少し条件を考えてみるよ」


「そうじゃな、わしはこの魔法陣を少し描き直すのじゃ」


 さて、考えてみよう。

 俺が召喚したい魔物と言えば、ドラゴン一択だ。


 属性は俺と同じ『闇属性』がいいと思う。

 大きさは光龍のように変幻自在がいい。

 と言うか、家族になれるような相棒がいいよな。


 だが、自分より弱いドラゴンを召喚する事に意味があるのか。


 それは少し違う気がする。


 本気で相棒を召喚するなら、俺の弱い部分を補ってくれる存在がいい。


 俺は高位のスケルトンだ。

 飛べるし、回復魔法だって使える。

 それから俺は聖属性に対してめっぽう弱い。

 遠距離攻撃にも向いてない。

 巨人化は最終手段で、消費魔力が半端じゃない。


 つまり、聖属性に強く、遠距離攻撃が得意で、大きな魔物が最適な訳だ。


 そう考えると最強の魔物を召喚したくなってきた。

 やっぱり俺より強く、頼りになる魔物がいいよな。


 と、じいさん精霊に話してみる。


「なぁじいさん、そんな魔物は居ないか?」


「聖龍、神獣、ベヒーモス……その辺じゃろうな」


「なんだそれ、聞いた事が無い魔物ばかりだな」


「今のボーンは爪で弾かれただけで消滅するじゃろうな」


「えぇ……そんな危険な魔物はお断りだ。俺にぴったりな魔物は居ないのか? アルやレットみたいな魔物が良いんだが」


「アルは神獣に至る可能性のある魔物じゃ。レットも長い時間が経てば、高位のドラゴンである龍族になるじゃろう。アルやレットと同じように強くなる可能性のある魔物と言えば……ふむ、いくらでもおるじゃろうな」


「じゃあ……その、いくらでもの中で、俺にぴったりな魔物と言えば?」


「自分で考えるのじゃな」


「考えてみても、想像の中では大きなドラゴンしか思い浮かばない。だから俺は、召喚魔法の可能性に賭けたいんだよ」


「ふむ、ではそういう召喚魔法陣を組むのじゃ。そうじゃのう……強大な力を持つ魔物を召喚して、その召喚された魔物と交渉する、と言うのはどうじゃ?」


「おお! それは良い考えだ! そうしよう!」


「その結果、ボーンが消滅しなければ良いがのう」


「危なくなったら逃げる!」


「ボーンは無責任な魔物じゃのう」



◇   ◇   ◇   ◇   ◇



 俺の召喚魔法陣が完成した。


 後は魔力を込めるだけだ。


 じいさん精霊と視線を交わして頷く。


 さぁ、現れろ、最強の魔物よ!


 魔力を込めると魔法陣が輝きだした。


 モクモクと煙が上がり、召喚されたのは……!


「なんだ?」


 串焼きを両手に抱えた光龍クリノヴァだった。

 モグモグと串焼き肉を頬張ってやがる。


「なんでだよ!?」


「魔力を切るのだ」


 至って冷静のクリノヴァに言われて魔力を切る。

 するとクリノヴァの姿は掻き消えた。


「じいさん、どういう事だ?」


「ふむ、まるで分からないのじゃ。もう一度、試してみるのじゃ」


「そうだな、流石に連続でクリノヴァは出ないだろ」


 改めて魔力を込める。


 魔法陣が輝き出す。


 そして煙の中から現れたのは……!


「しつこい」


 やはりクリノヴァだった。

 さっさと魔力を切って送還する。


 ちなみに三度目の正直でも、召喚されたのはやはりクリノヴァだった。


「じいさん、説明してくれ」


「ボーンの魔力にクリノヴァの魔力が混ざっておるから、いくら召喚してもクリノヴァが召喚されるのじゃろう。魔物が魔物召喚をすると、こういう事になるのじゃな」


「なんじゃそりゃ……じゃあ俺は、クリノヴァ専用の召喚士って事か?」


「良かったのう!」


「良くないわ!」

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