骨50本目 骨密度ダンジョン

「ルチャ、アル、話がある」


「どうしたの?」「ニャ?」


「ルチャが寝てる間に俺はソロでダンジョンに入って、亀を吸収したい」


「え?」「ニャ?」


「俺はユニークスキルで魔物を吸収する事で栄養を得ることができるんだ」


「そうなの?」「ニャ?」


「だからできるだけこのダンジョンで栄養を貯め込んでおきたい」


「亀をユニークスキルで食べて元気になるの?」「なるのニャ?」


「ああ、そういう事だな!」


「ボーンのユニークスキルはおかしいの」「おかしいのニャ」


「まあ、そんなわけでルチャが寝てる間はソロで活動していいか?」


「分かったの」「ニャッ!」


「それとルチャのレベルがある程度まで上がったら、星5の戦争跡地ダンジョンにソロで行きたい。急な話で申し訳ないんだが、いいか?」


「もちろんなの」「ニャッ!」


「ありがとう。じゃあ俺はダンジョンに戻るよ」


「頑張ってなの」「頑張るのニャ!」



◇   ◇   ◇   ◇   ◇



 俺は簡易宿屋のテントから出た。

 テントの中からはルチャとアルの話し声が聞こえる。


「亀って美味しいの?」


「串焼きがおいしいのニャ!」


「そう言えば、屋台に亀の串焼きがあったの」


「串焼きを食べにいくのニャ!」


「そうするの」


 あいつら仲良しだな、と思いながら俺はダンジョン入り口に戻った。


 俺はダンジョン入り口でまた金貨1枚を支払う。


 なんてケチくさい国なんだ。

 ちょっと外に出ただけなのに。


 いや、この国はケチじゃないな、時代の影響だな。



◇   ◇   ◇   ◇   ◇



 巨大な亀系の魔物が降る平原に戻って来た。


 ここからはソロで骨密度上げだ。

 降ってくる亀を受け止めるだけの簡単な作業だ。




 現在の骨密度:7255




 俺は剣と盾と手袋を外し、魔法袋に収納する。

 降ってくる亀を素早く的確に吸収する為だ。


 俺は平原を疾走する。


 亀が落ちてくる地点に走り、吸収。

 のそのそ歩いてる亀も、吸収。

 亀の魔法を避けながら、吸収。

 もうひたすら吸収、吸収、吸収。


 俺の作業は、他の冒険者から見たら謎の行動だろう。

 亀の魔物が瞬時に消え去るなんて不審に思うだろう。

 そして狙ってた獲物を横取りされたとも思われそうだ。


 なので他の冒険者とすれ違う時に「ユニークスキルだ!」と大声で叫ぶ。

 ついでにサッと回復魔法をかける。


 これで文句を言われる事は無いだろう。


 それにしても、回復魔法とはなんと便利な魔法なのか。

 本当に素晴らしい魔法だ。

 あの王様リッチには感謝が絶えない。


 リッチと言えば、俺はリッチ系に進化するのだろうか。

 リッチは元を辿ればスケルトンの筈だ。

 だがリッチとは膨大な時間を経て進化するものである。

 俺の場合は何に進化するのか。


 今は黒のスケルトンだ。

 ブラックスケルトンという名称の魔物になるのか。

 俺の骨体が黒くなったのは、黒いスカルドラゴンを吸収した事がきっかけだ。


 これからどんな風に進化するのか。

 興味は尽きない。


 とりあえず星5の戦争跡地ダンジョンのボスが狙い目だな。

 きっと強力なアンデッドのボスが居る筈だ。



◇   ◇   ◇   ◇   ◇



 開始から2時間ほど経過した。




 現在の骨密度:7368




 凄いな、この短時間で骨密度が約100の上昇だ。

 これならルチャが寝てる間に500の上昇値が期待できる。

 これは美味しい、最高すぎる。


 まさに経験値ダンジョン、いや、骨密度ダンジョンだ!



◇   ◇   ◇   ◇   ◇



 そして約10時間後。




 現在の骨密度:7777




 骨密度の数字について特に深い意味は無い。


 素晴らしい効率の良さだった。


 目標は骨密度1万超えだな。


 ルチャとアルを迎えに行く為、ダンジョンを出る。


 簡易宿屋を訪ねると、ルチャがアルの体に埋まるようにして寝ていた。

 柔らかい毛が気持ち良さそうだ。

 勿論アルも爆睡してる。


 ルチャにとってアルは親友だな。

 この2人は縁があったんだ。

 羨ましいな、俺もドラゴンと縁を作りたい。


 遠距離攻撃や索敵に特化したドラゴンなら『雷』を操るドラゴンが良い。


 雷を操るドラゴンの卵。

 是非とも欲しい。


「むにゃむにゃなの……」「ニャー……ニャー……」


 というか、そろそろ起きてくれないかな。






 ===== ルチャとアル =====



「アルはボーンが言ってたこと、分かるの?」


「分からないのニャ」


「分からないのに、ニャッ!って言ってたの?」


「そうニャ、ボーンは分からないのニャ」


「そもそもボーンは変な人なの」


「ボーンは人じゃないのニャ」


「分かってるの。魔物を吸収するなんて、普通の人じゃないの」


「ニャッ」


「ユニークスキルが変なの」


「ニャ?」


「万能だけど、よく分からない、変なスキルなの」


「ニャ」


「アルはユニークスキルを持ってないの?」


「分からないニャ」


「アルにステータスはあるの? 見れないの?」


「分からないのニャ」


「ニャーニャーニャーなの!」


「ニャッ!?」


「アルはもう大人なんだからニャーは言わないの!」


「ニャッ……」


「また串焼き食べる?」


「食べるのニャ! ルチャ! あの串焼きにいくのニャ!」


「ニャー!」


「ニャニャッ!?」

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