骨49本目 ダンジョンでレベル上げ

 ダンジョンにやって来た。

 今回、俺が選んだのは星4のダンジョンだ。


 入り口は巨大な鉱山のような洞窟だ。

 岩山に巨大な穴が開いている。


 入り口付近は大勢の冒険者と行商人で賑わってる。

 これが冒険者の国の大人気ダンジョンか。

 沢山の屋台が立ち並び、まるでお祭り状態だ。


 ダンジョンの入り口には巨大な看板で注意事項が書かれてる。


「ルチャ、看板はしっかり読んで行こう」


「うん、分かってるの」


 看板にはこんな事が書かれていた。


 ・1階層は風と土を操る亀系の魔物が出現します。

 ・2階層は亀系の魔物に加えて飛竜が出現します。

 ・3階層は立ち入り禁止!

 ・空から亀系の魔物が降ってくるので注意!

 ・ここは星4以上の冒険者専用ダンジョンです。

 ・レベル100以上推奨です。

 ・魔物の取り合いは法律に触れる可能性があります。

 ・ルールを守ってダンジョンを利用して下さい。


 なんて親切、分かりやすい。


 流石は大人気ダンジョン。

 まさかダンジョン前にこんな看板があるとは驚きだ。


「しっかり覚えたの、アルに教えてあげるの」


「ああ、俺もしっかり覚えたぞ、行こうか」


 入り口の門番にギルドカードを見せて入る。


 なんと入場料金貨1枚。

 ダンジョンに入るのに金が必要だとは。


 なんてケチくさい国なんだ、と思いつつダンジョンに入った。


 ここはフィールド型と呼ばれるダンジョンだ。


 見渡す限りの大平原。

 太陽が無いのに明るく、風まで吹いてる。

 まるで外に居るようだ。


 大勢の冒険者が戦っている。

 そして空から巨大な亀が降ってくる。


「よし、行くぞ! アル、ルチャを守るんだぞ!」


「分かってるのニャ!」「頑張るの!」


 俺達は他の冒険者が居ない場所に向かう。


 近くに空から巨大な亀系の魔物が降ってきた。

 降ってくると分かってるなら避けるのは容易い。


 2つの頭が甲羅から生えてる。

 片方の頭の口から風の刃が飛んでくる。

 更にもう片方の口からは土弾が飛んできた。


 ルチャを守るように俺が盾で防御。

 アルが亀の頭に飛び込み爪で攻撃。

 青い血飛沫が舞い、片方の頭が落ちる。


 残った片方の頭が甲羅の中に隠れる。

 すかさず俺が闇魔法で甲羅を攻撃。

 ルチャも闇魔法で同じように攻撃。


 甲羅の半分が派手な音とともに割れた。

 すかさず闇魔法と土魔法を連打。


 そのまま全員で魔法攻撃して……撃破!


「やったの!」「やったのニャ!」


「まだまだ降ってくるぞ! 今の感じでいこう! ガンガン倒すぞ!」


「うん!」「分かったのニャ!」


 絶え間なく降ってくる亀の魔物。


 大きさや甲羅の魔法防御力は様々だ。

 魔法の威力にも個体差がある。

 だがルチャを守りながら戦っても余裕がある。


 ルチャの魔力が枯渇しそうになったら、俺が魔力を分け与えて回復させる。


 俺とアルは魔物なので、体力も魔力も底なしだ。

 いや違うか、アルには体力値があるだろう。

 ただ身体能力と体力が桁違いなだけか。


「凄いの! どんどんレベルが上がっていくの!」


 ルチャはとても楽しそうだ。

 レベルが一気に上がっていくのを見るのは確かに楽しいよな。



◇   ◇   ◇   ◇   ◇



 重大な問題が起きた。


 俺は早い段階でレベルが上がり、レベル100になった。


 そして気が付いた。


 レベルが上がらない、経験値が入らない。


 俺という『器』に限界がきたのだ。


 満タンのコップに水が入らないように。

 いくら入れようとしても溢れてしまう。

 魔物の本能的に分かる。


 これ以上、この体は、強くなれない。


 途中から泣きそうになりながら、ルチャのレベル上げに専念する。


 亀の魔物と戦いながら、頭の中でステータスを確認する。




 個体名:ボーン

 レベル:100

 魔力量:30000

 骨密度:7254

 ユニークスキル:全骨統

 属性:火・土・闇・回復




 レベル100という数値。

 魔力量3万で突きつけられた現実。

 これが限界だったのだ。


 終わった……いや、骨密度はまだ伸ばせる。

 だが、もし骨密度が8000で止まったら……話にならない。


「いや、待てよ、違うだろ」


 俺は特殊なスケルトン、魔物なのだ。

 ならばもっと高位の魔物に進化すればいいだけだ。


 ユニークスキルだって持ってる。


 スカルドラゴンや王様リッチ並のアンデッドを吸収すればきっと進化できる。


 俺という『器』を成長させられる。


 レベルが上がるようになる。


 魔力量だって増える。


 ここで諦める訳にはいかない!



◇   ◇   ◇   ◇   ◇



 レベル上げを始めて数時間が経過した。


「ルチャ! 今の魔力の数値は!?」


「5000を超えたの!」


「じゃあ7000まで頑張ろう! そこで休憩だ!」


「分かったの!」


「アルは大丈夫か!? まだ戦えるか!」


「戦えるのニャ!」


「よーし! ルチャのレベル上げを頑張るぞ!」


「ニャッ!」


 俺達はルチャの魔力が7000になるまで奮起した。

 異常な速度で亀を撃破し続けた。


 そして途中で気が付いた。


 あれ……もしかして、亀の甲羅って骨じゃないか?


 骨だったら、吸収できるんじゃないか?


 やってみたら……できた。


「今のは俺のユニークスキルだ!」


「凄いの」「ニャ……」


 ルチャとアルには魔法の言葉を唱えて納得させる。


 亀が降ってきたら受け止めるように吸収する。

 すると亀は消え去り骨密度が1上がる。

 だがそれをするとルチャに経験値が入らない。


 つまりだ、ルチャが寝てる間に、俺は骨密度を上げればいいのだ。


 絶え間なく空から骨密度が降ってくるのだ。

 こんなに素晴らしいダンジョンは他に無いだろう。


「疲れたの……」「ニャ」


「よし、そろそろ外に出るか」


 ルチャの魔力が7000を超えた時点で外に出る。


「とりあえず簡易宿屋に入ろう」


 簡易宿屋は大きなテントになっており、ただ寝るだけの施設だった。

 しかも地面に雑魚寝だ。


 それでも料金は金貨1枚である。

 完全なぼったくりだ。


 だが周囲に冒険者が寝てるし、従業員の監視の目もある。

 盗難や犯罪は無さそうだ。


 安心と引き換えに金貨を支払う仕組みだな。


 俺達は料金と宿屋内部を確認した後、人から離れる。


「ルチャ、アル、話がある」


 俺は頭の中で言い訳を考えながら、ルチャとアルに相談を持ちかけた。

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