骨47本目 ボーンの部屋

 朝、鏡に映る自分を眺める。


 灰色のフード付きローブ、黒色のベルトと手袋。

 銀色の胸当てと大盾、濃い茶色のブーツ。

 腰には墓地ダンジョンのコアだった闇の魔剣。

 魔法袋も腰に装備だ。

 そして上から黒いコートを羽織る。


 完璧だ、我ながらかっこいい……!


 闇の魔剣以外の全てに全属性耐性が付いてる。

 今の時点で考えられる限り、最高の装備だ。


「よし、行くぞ!」


 俺は意気揚々と部屋を出た。



◇   ◇   ◇   ◇   ◇



 今日は朝からルチャ、アル、伯爵、執事さんと冒険者ギルドに行く。


 冒険者ギルドまで馬車で移動だ。

 豪華な貴族馬車は快適に移動できて、しかも人が寄ってこない。


 普段なら「回復魔法くれ」と人が集まるからな。


 俺も回復魔法使いとして有名になったもんだ。

 と言うか、無料で治療してくれる便利な人と思われてるんだろうな。


 しばらくして冒険者ギルドに到着。


 伯爵と執事さんが先頭を歩き、受付まで向かう。


 冒険者達は「貴族だ、近寄るな」みたいな事を言って、離れていく。


 貴族に関わると面倒だよな。

 分かるぞ、その気持ち。


 受付では伯爵が分厚い書類を提出した。

 おそらく『王の墳墓』の完全攻略を報告する書類だと思われる。


 俺とルチャの冒険者カードも提出。

 どうやら星が貰えるようだ。

 星の数については「後ほど」と伯爵に言われた。


 受付で少し待たされ、ギルド職員に3階の角部屋へ案内された。


 豪華な部屋だ、まるで貴族の私室。


 半分は寝室のような造り、もう半分は執務室みたいだ。

 大きなベッドがあるし、机もソファーもある。


 俺とルチャはソファーに腰掛ける。

 アルは地面に寝転がった。

 伯爵は執務机に座り、執事さんは背後に立つ。


 そしてギルド職員が、その場で片膝をついた。


「アルレット筆頭伯爵様。筆頭伯爵位への御昇進、誠におめでとうございます」


「前置きはいい。王城から指令は届いてるな?」


「はっ、こちらが品物になります。全て王城からの指令通りに手配いたしました」


 伯爵は筆頭伯爵とかいうのに昇進したのか。


 いや、それよりも伯爵が普段と違う事に驚きだ。

 貴族らしい貴族の態度、雰囲気、威圧感もある。

 やはりこの人も、腹黒い貴族なんだな。


「確認した、下がれ」


「はっ、失礼いたします」


 ギルド職員は部屋を出て行った。


 伯爵は俺とルチャの対面に腰掛ける。


「ルチアも将来はこうやって堂々とするんだよ?」


「わたしは普段から堂々としてるの」


「ははは、うん、そうだね。ルチアは堂々としてるね」


 伯爵は笑いながら受け取った封筒の中身を取り出した。


「ではボーンさん、まずはこれを確認してください」


 伯爵が封筒から取り出したのは、Sランクのギルドカードだった。


 俺は受け取った白銀に輝くカードを見て驚愕した。


 カードにはボーン・アルレットと書かれている。

 カードの星の数は7つ。

 備考欄には『エンデ魔族国名誉伯爵』『奇跡の祝福人』と書いてある。


「なんだ、これは……? 伯爵、説明してくれ」


「見たままの身分証になります。今後ボーンさんがこの身分証を持つことにより、貴族の面倒事から解放される、そう思って受け取ってください。家名については、私の息子、ルチアの兄になったと認識してください。奇跡の祝福人は、称号です。ちなみに拒否権はありません。この国からの正当な報酬ですよ」


「そ、そうか……じゃあ、ありがたく貰おう。伯爵、ありがとう」


「いえ、これも皆の感謝の印です。では次にこちらですね」


 伯爵は封筒から鍵を取り、机の上にその鍵を置いた。


「鍵? これはどこの鍵だ?」


「この部屋の鍵ですよ。この部屋の使用権はボーンさんの物です」


「えっ……こ、この部屋を貰えるのか……!?」


「家や土地を渡そうか、という話も挙がりましたが、ボーンさんは冒険者なのできっとこの部屋の方が喜ぶだろうという結論になりました」


「素晴らしいな! 魔法袋に財宝、Sランクの身分証、冒険者ギルドの部屋! ありがとう伯爵! 凄く嬉しいよ! あ、もしかして、まだ何か貰えるとか?」


「ははは! 残念! これで以上です!」


「そうか! もっとあるかと思ったよ!」


「ははははは! いやはや、喜んでくれて良かったです」


「よし、星7になったことだし、まずは星4以上の経験値が多いダンジョンで堅実にレベル上げだな。その後は、星5の戦争跡地ダンジョンをソロで攻略したいな。最終目標は星7の悪魔のダンジョンにパーティーで挑戦したい」


「それはまた……くれぐれもルチアをよろしくお願いしますよ?」


「任せてくれ。俺は回復魔法を極めてるからな。絶対に死なせたりしない」


「ははは、父親としては安心です。では、私達はそろそろ失礼します」


 伯爵はルチャとアルに挨拶をしてから、執事さんと一緒に屋敷へ帰っていった。

 部屋に残ったのは俺とルチャとアルだけだ。


「これからどうするの?」


 ルチャが俺に尋ねてきた。


「まずはパーティーメンバーを募集しよう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る