骨16本目 墓地ダンジョンを完全攻略
魔大陸に行く前にやっておきたい事がある。
それは墓地ダンジョンの完全攻略だ。
「俺はこれから用事がある。だから数日は戻らないと思う」
俺がそう言うとセーラは呆れた顔をした。
「馬鹿なんですか?」
「ば、馬鹿とはなんだ! ご先祖様……に似てる俺に向かって!」
「依頼の報告はどうするんですか?」
「依頼の報告は任せる。それに依頼達成の報酬はセーラが貰っていいぞ」
「もう日が暮れますよー? お母さんだって料理して待ってますよー?」
「お母さんには気持ちだけ頂くと、礼を言っておいてくれ」
「はあ……分かりましたよ! では気をつけて行ってくださーい!」
セーラとは転移場で別れた。
セーラを見送った後、俺は夜のヨーセンの街を1人で歩く。
夜の街を見ながら……気付いた。
街は魔道具による照明で、昼間のように明るい。
馬車なんてもう古いのか、馬が居ない。
清潔感があるし、道も建物も綺麗だ。
感じてた違和感がスッキリした気分だ。
なるほどな、ここも未来の街なんだな。
王都に行って良かった、色々と勉強になった。
セーラには感謝しないとな。
俺を滅魔光線で蘇らせてくれたり、色々と説明してくれたり。
我ながら素晴らしい子孫を生み出したものだ。
自分で自分の過ちを褒めてあげたい。
スケベ男爵で良かった。
ああ、早く魔大陸で存分に冒険者活動がしたい。
あんな話を聞かされたら我慢できないよな。
魔大陸が楽しみだな!
俺はそんな事を考えながら歩いて、門に到着。
門番に自信満々にAランクの冒険者カードを見せた。
「街に入る時に見せてくれ」
どうやら街を出る時には身分証確認をしないようだ。
なんだよそれ、せっかく作ったのに。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
墓地ダンジョンに到着。
さあ、墓地ダンジョンを完全攻略するとしよう。
ダンジョンコアになってる魔剣を回収だ。
今回のダンジョン攻略では目標だった骨密度1万には届かないだろう。
本当は骨密度1万を達成したら魔剣をもらうつもりだった。
だが、事情が変わったのだ。
魔大陸での戦闘に備える為に、ここで全てを研ぎ澄まそう。
俺は生前、冒険者だった頃の知識と記憶をかなり思い出している。
あとは技術と勘、この骨体への慣れだけだ。
早速、自らの骨体から骨剣を作り出す。
骨剣に火属性の魔力を流し、火を纏わせる。
魔力の通りが抜群に良い。
剣であっても体の一部だからか。
生前の魔法剣士としての剣術、取り戻してみせる。
足運び、体捌き、剣術の型、魔力操作、魔力による身体能力強化、魔力感知、気配察知などなど。
確認しておきたい事を全て実行しながら10階層を目指す。
自分の得意な動きと苦手な部分も把握する。
スケルトンとしての性能、備わっているスキルを確認していて驚く事ばかりだ。
本当に素晴らしい体なのだ。
驚くを通り越して、感動だな。
スケルトンとは最弱の魔物である。
これは誰もが知っている事実だろう。
だが自分がスケルトンになって感じるのは、真逆の印象である。
スケルトンとは骨だけで動いてる不思議な魔物。
食事と睡眠がいらないとは、反則だ。
真っ暗な空間で字が読めるとか、異常だ。
ああ、聖女セーラ様、俺をスケルトンとして蘇らせてくれてありがとう!
セーラにはもっと恩返しが必要だな!
なんて事を考えながら、ダンジョンを疾走する。
ちなみに倒したスケルトンはしっかり吸収。
だがやはり、魔物の数が非常に少ない。
前回、狩すぎたせいだ。
5000匹は狩ったからな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
苦労する事もなく、墓地ダンジョン10階層に到着。
予想通り、スカルドラゴンは復活していない。
10階層は静まりかえっている。
俺はダンジョンコアである魔剣の前に立つ。
さらば、墓地ダンジョンよ。
死者の魂よ、安らかに眠れ。
俺は凶々しい漆黒の剣を手に取る。
「うほっ!?……おっと、思わず変な声が出た」
色は刀身から柄の部分まで全て艶のある漆黒。
妙に手に馴染む感覚がある。
闇属性の魔力を通すと、刀身に闇が宿る。
その状態で剣を振ると闇の斬撃が飛ぶ。
だが火属性と土属性の魔力に対する適応性は低い。
闇属性の魔力じゃないと斬撃は飛ばないのだ。
つまりこの剣は闇属性特化の魔剣だ。
剣には異常なくらい魔力が宿っている。
流石は墓地をダンジョンに変えてしまった剣である。
俺は魔剣を魔法袋に回収する。
これにて墓地ダンジョンは活動しなくなる。
もう魔物が復活しない。
さて、じゃあ残ったアンデット達を1匹残らず討伐するか。
===== セーラの日常2 =====
「そう、じゃあボーンさんは1人でダンジョンに行ったのね。お母さん張り切って料理を作ったのに、食べてもらえなくて残念だわ」
「ボーンさんって、仲良くなってみると意外と馬鹿だったんだー。お金の使い方も馬鹿みたいだし、ヤバいくらい常識がなくてー。顔もスケベ男爵みたいだしー。きっとボーンさんはスケベ男爵の生まれ変わりだよー」
「ふふ、そうね。スケベ男爵にそっくりだものね」
「あはは、絶対そうだよねー。だって親戚のおじさんって感じがするもーん。あ、いっぱいお小遣いくれる、馬鹿なおじさんかなー? でもあたしは好きだなー」
「お父さんが聞いたら嫉妬しちゃうわね。早くお父さんにも会わせたいわ」
「あ、ボーンさんはこれからは魔族国で冒険者をするんだってー」
「セーラは行かないの? 少しくらい冒険してきてもいいのよ?」
「あたしは行かないよー。あたしはここでボーンさんの財宝を待ってるー」
「あら、それは素敵ね! 財宝が楽しみだわ!」
「もー、お母さんったらー! あははははは!」
「ふふふふふふ!」
2人はやっぱり強かな女性達であった。
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