骨15本目 セーラとデート

 セーラに案内され、服屋に入る。


 透明度の高いガラス張りの店。

 なかなか高級店っぽい。

 懐が暖かくて良かった。

 貧乏状態では来れなかったな。


 俺の服装は今の時代の若者から見たらヤバいらしい。

 なので、セーラに服を選んでもらう。


 完全にデートである。

 自分の子孫とデートって贅沢だよな。


「今の流行は黄色なんですよ!それに靴は細長いのが人気で――」


「へーそうなんだー」


 セーラが今の流行を話してくれたが驚くほど興味が無い情報だった。

 だがセーラが楽しそうなので黙っておく。


 ちなみに財宝の山にあったドレスやローブなどは古臭いらしい。


 様々な魔法陣が縫い付けてある高価な財宝なんだがな。

 機能性は高いんだが……虚しくなった。


 セーラに服を選んでもらい、いくつか購入。

 ついでにセーラにも服を買ってあげる。


 金貨数枚だったが、高いか安いか分からない。

 感覚的には安いと思うが。

 セーラが満足そうなので良しとしよう。



◇   ◇   ◇   ◇   ◇



 セーラがちょっと休憩したいとの事で、食堂に入る。


 セーラと向かい合って座る。

 客が多いな、繁盛してる店のようだ。


 俺は食べなくてもいいのだが、とりあえず酒を頼む。

 セーラは何やら聞いた事がない物を注文していた。


 俺はちびちびと酒に口を付けながら、セーラが頼んだ謎の食事を見つめる。


「ボーンさんも食べますかー?」


「ああ、少し貰おう……って、うわっ、甘いな」


「今流行りの生クリームクレープケーキの果物全部乗せ! おいしいですー!」


「まるで魔法の詠唱だな……」


「あはは! ボーンさんのその古い人ネタ、面白いですよねー!」


「まぁ、世間知らずって点では間違ってないな」


「あ、そうだ! ボーンさんに聞きたい事があったんですよー! 良かったら、ボーンさんのユニークスキルについて教えてくださーい! あたしユニークスキル持ちの人に会ったの初めてなんです! ジャイアントスケルトンの倒し方とか、呪われし竜を倒した時の話とか、聞かせてくださいよー!」


「いいぞ。冒険者同士らしく冒険について話そうじゃないか!」


 俺はセーラに一部事実をぼかしながら話して聞かせた。


「――というわけで、俺はまだ全然ユニークスキルを使いこなせてないんだよ。だからこれからの冒険者生活でゆっくり極めていくつもりだ。もっと強い魔物と戦いたいし、ダンジョンで一攫千金したいからな!」


「あたしはそこまで冒険とか魔物討伐とかに情熱は無いですねー。それじゃあ、ボーンさんは近い内に魔族国に行くんですか?」


「……魔族国? なにそれ?」


「え? えーとですね、魔族国っていうのは……」


 セーラから語られる、俺の知らない歴史の史実。

 今の時代、誰でも知っている常識。


 今から50年以上前。

 海で魔物に襲われる事なく、安全に航海する魔法陣が開発された。

 この魔法陣の発明により、活気盛んな冒険者たちは海を渡った。

 その結果、様々な大陸を発見する事になる。


 海の向こうには今まで知られていなかった種族がいた。


 人間とは異なる文化や魔法、食材や魔物、ダンジョンがあった。


 そんな新大陸の中でも、魔族が多く住む大陸がある。

 この巨大な大陸を『魔大陸』と言う。

 この魔大陸には凶悪な魔物、危険なダンジョン、桁違いの財宝があった。


 近年ではこの魔大陸にある国は『魔族国』と呼ぶ。


 冒険者達は、財宝を求めて魔族国に渡り魔大陸攻略に乗り出している。


 冒険者達にとって、魔族国におけるダンジョン攻略こそが時代の最先端だ。


 セーラの話を聞きながら興奮で手が震える。

 胸が躍る、体が昂る、魔力が荒ぶる、抑えられない。

 なんて素晴らしい発展をしているのだ。


「セーラ、ありがとう! 俺は魔族国に行く! まだ見ぬ財宝を求めてダンジョンに挑戦する! アンデッドが蠢くダンジョンなら俺にうってつけだろう! これは時代の波に乗るしかないよな!」


「あははー、言うと思いましたよー」


「よし、1人で帰れるな?」


「えっ……!? まさか今から行くんですか!?」


「駄目か?」


「まだ行きたいお店があるんですけどー!? それに本屋にも行く予定だったじゃないですかー!? 王都で1人買い物なんて寂しいんですけどー!?」


「あ、いや、そのー……」


「せめてあたしを家まで送ってくださいよー!? 大人としての責任でしょー!? それに行くなら死なないように、ちゃんと準備してから行ってください!」


「は、はい、そうですね……」


「王都なら高品質の商品が多いですよ! 冒険の準備には付き合いまーす!」


「……確かにそうだな! 最先端の冒険者装備を揃えるのも悪くないか!」


「ですですー! じゃあ買い物に行きましょー!」


 こうして俺とセーラは食堂を出た。



◇   ◇   ◇   ◇   ◇



 結果から言おう。


 最先端の冒険者装備は凄かった。

 俺の常識が通用しない。


 明るく遠くまで照らす石。

 魔力鑑定メガネ。

 酸素がなくても呼吸できるマスク。

 あらゆる汚れを浄化する棒。

 腐らない携行食。

 水が湧き出るコップ。

 万能に近い解毒薬。

 体力と魔力を同時に回復するポーション。

 高品質の紙束。

 インクが途切れないペン。

 装備の錆を落とす液体。

 臭いを消す葉。


 魔道具、食料、薬、生活必需品の発達が著しい。

 いや、発明品と言ってもいいだろう。

 気が付くと、買い物が楽しくなっていた。


 セーラの買い物にも付き合った。


 セーラと2人で馬鹿みたいに買い物をした。

 魔法袋が複数あるし、容量が大きい魔法袋なので荷物にならない。

 逆にそれが買い物に拍車をかけたのだが。


 まぁ、楽しかったからいいだろう。

 金貨も銀貨もまだまだあるし。


 そして最後に本屋だ。


 なんと今ではテイマーと召喚士は人気が無いらしい。

 従属魔法や召喚魔法についての本は少なかった。


 従属魔法の本2冊、召喚魔法の本4冊。

 たった6冊だけだったのだ。

 本屋には本が何万冊とあるのにだ。


 そんな馬鹿な、かっこいいのに。


 ……ふっふっふ、まぁいいさ。

 俺が強い魔物を従属させて常識を変えてやる。

 魔大陸が楽しみだ。


 とりあえず従属魔法の本と召喚魔法の本は全て買うことにした。

 ついでに歴史の本と、最先端の魔法陣の本と、様々な図鑑も買ってみた。

 暇つぶしに読んでみよう。

 基本的に読書は得意じゃないけどな。


「じゃあ、買う物は買ったし、そろそろ帰りましょー!」


「ああ、そうだな」


 本屋を出るともう夕方だった。


 用事を全て済ませた俺とセーラはヨーセンの街に戻る事にした。

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