骨10本目 人間になろう

 墓地ダンジョン最奥10階層。


 ボスのスカルドラゴンを倒し、財宝に巡り会えた。

 これだから冒険者は辞められない。

 一攫千金の夢があるからだ。


 俺は財宝の山を崩しながら、目当ての物を探す。

 これだけ豪華な財宝なのだ。

 きっとアレがある筈だ……っと、あった。


 俺の目当ての物、それは『魔法袋』だ。


 魔法袋とは、外見と違い容量が膨大で、重さも感じないという、冒険者必須のアイテムである。


 これがあれば財宝を運ぶのに困らない。

 俺はせっせと財宝を魔法袋に回収していく。


 回収作業をしながら魔法袋を追加で発見したら、それにも財宝を放り込む。


 これだけの財宝だからな。

 後からゆっくり財宝を確認する時に楽しみだ。



◇   ◇   ◇   ◇   ◇



 さて、これにて財宝は全て回収完了。


 ああ、そうだ、セーラに財宝を分けてあげよう。

 命の恩人なのだ、良い恩返しになるだろう。


 そうと決まればセーラに会いに行こう。

 住んでる街の名前は……なんだったか、忘れたな。

 誰かに聞けば思い出すだろう。


 その前に、人間への擬態をより完璧な姿にしたい。

 ユニークスキルの理解が深まった今なら人間そっくりになれるはず。


 俺は魔法袋から大きな姿鏡を取り出す。

 財宝の山から見つけておいたのだ。

 合わせて服も取り出しておく。


 このシャツとズボンと靴には劣化防止、汚れ防止、自動修復、自動サイズ調整など、様々な魔法陣が縫い付けてあった。


 魔法に対する耐性があれば最高級品だったが、そこまでの価値は無い。


 まずは現在の擬態解除。

 懐かしきスケルトンの骨体に戻る。


 お、おう!?

 まあ、なんということでしょう。


 俺の白かった骨体が黒い骨体になっている。

 しかもテカテカしてて光沢がある。

 滑らかな感触、すべすべだ。

 明らかにスケルトンとして進化してる。


 それに大きな魔石がある。

 胸の中心に綺麗な球状の赤黒い魔石。

 濃密な魔力が内包されているようだ。

 いや、魔力が圧縮されてるな、魔力密度が凄い。


 おかしいな……スケルトンって進化したら魔法を使うワイトになると思ってた。

 更に進化したらリッチとか言う厄災の魔物になる筈だったような……?


 それがどうだ、俺は漆黒のスケルトンになっているではないか。


 どうやら俺は特殊な進化をした、特殊個体の魔物になったようだ。

 嬉しいやら悲しいやら……まぁ、嬉しい。

 そもそも俺は存在からして特殊個体だったか。


 俺は漆黒のスケルトン、ボーンだ!


 ……魔物だとバレたら冒険者に狩られそうだ。

 きっと即、滅魔光線だろうな。

 バレないようにきっちり人間に成り済まそう。


 というわけで、人間への完璧な擬態をするとしよう。


 身長は今のままで骨体に筋肉を付けるようにする。

 ユニークスキル『全骨統』を使って骨体から骨粉を出して操作すれば簡単だ。


 モデルは記憶にある過去の若い自分だが、少し美化した脚色を加えていく。

 キリッとした顔立ちに、美しい筋肉の形も重要だ。


 今の俺なら骨粉に色を付けることも可能。

 なので髪の毛や瞳の色は茶色にするか。

 人間だと一般的な色だし、目立たないと思う。


 鏡を見ながら少しずつ自分を作り上げていく。


 ……そして完成した『俺』はどう見ても人間。

 仕草や表情も完璧だろう。

 瞬きや呼吸なんかも忘れずにしよう。


「あ、あー、よし、声もいい感じだな。素晴らしい」


 シャツを羽織り、ズボンと靴を履く。

 武器は長めの骨槍を使うことにしよう。


 大きな姿鏡は魔法袋にしっかり回収。


 これにて準備完了。


 俺はダンジョン10階層を出発する。


 ちなみにダンジョン10階層に行く階段は土魔法で埋めておいた。

 誰かにダンジョンコアを横取りされたくないからな。


 あれだけの死闘を極めたダンジョン9階層に来たが、今じゃ閑散としている。

 少し寂しい気もするが、数日も経てばアンデット達は復活してくれるだろう。

 流石にスカルドラゴンは、短期間では復活しないだろうがな。


 俺はたまに出会うアンデット達を骨槍で突き、吸収しながら階段を登っていく。

 頭にダンジョンの地図は入ってるから迷わない。


 次に来た時に道を忘れないよう印を付けたりもする。

 俺だけが分かる魔力文字による印だ。


 これで次回はすぐに10階層まで行けるだろう。



◇   ◇   ◇   ◇   ◇



 そしてたどり着いたダンジョン入口。


 太陽が燦々と輝いている。

 ダンジョンの外は昼間だ。


 俺は動かない心臓に手を当て、気分的にドキドキしながら太陽の元に出る。


 ……おお、大丈夫だ、浄化されない。

 体が崩壊する事もない。


 俺は太陽を克服したのだ。

 魔物としての格が上がったからだろう。

 高位のアンデッドになったようだ。


 通常のスケルトンなら昼間に外なんて歩けないからな。

 良かった、これでより人間らしくなった。


「さて、セーラが住んでるっていう街はどこかなっと」


 俺はセーラが住んでいる街がどこにあるのか知らない。

 なので、土魔法で地面を隆起させ、高い位置から周囲を見渡してみる。


「あ、あった、街だ!」


 意外と近くに大きな街があった。

 徒歩でもすぐに到着するだろう。


「じゃあな、墓地ダンジョン。また会う日まで」


 俺は故郷である墓地ダンジョンを去る。

 まあ、すぐに帰ってくるけどな。

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