骨8本目 魔法ゲットだぜ!
人間が魔法を使うにはいくつか方法がある。
まずは『詠唱』する方法。
自身の魔力と空気中の魔力を言葉にして結ぶ事により魔法を発現する。
これが最も一般的な魔法を扱う方法である。
熟練の魔法使いは詠唱を短縮させる。
伝説では詠唱無しで魔法を使う者が居たとか。
きっと小声で詠唱してたのだろう。
次に『魔法陣』を使う方法。
これは魔力を練り上げる陣を描き、そこに魔力を流して魔法を発現する。
大魔法や召喚魔法を使う時は魔法陣を用いる。
正直、かなり勉強が必要なのでオススメしない。
応用として、魔法陣を空中に魔力で描き、強力な魔法を使う方法がある。
これは魔法を組むと言って、熟練の魔法使いがよく使う方法だ。
詠唱をせず魔力を操り、魔法を発現させる。
便利だが集中力が必要だ、ソロには向かない。
例外として武器を使う場合がある。
分かりやすく言えば魔力の通りが良い剣に火属性の魔力を通し、剣に火魔法を纏わせたりする。
これが魔法剣士と呼ばれる者たちの戦闘方法だ。
ちなみに俺が人間だった時は、魔法剣士だった。
魔法も詠唱短縮で使えたはず。
思い出してみると俺は意外と凄腕の冒険者だったんだな。
まあ、こんな話はどうでもいい。
大事なのは魔物が使う魔法についてだ。
魔物は詠唱したりしない。
魔法陣を描く技術など無い。
文字なんて知らない。
武器は振り回すだけである。
ではどうやって魔物は魔法を使うのか。
なんと魔物は魔力を直接操り、自らの属性に変換する事が可能なのだ。
つまり、実質的には『無詠唱魔法』なのだ。
それも連続で、規模や威力まで自由自在。
流石は『魔物』と呼ばれる怪物達である。
じゃあ俺はどうか。
今の俺はスケルトン。
完全に魔物なのだ。
「ふはははははは!」
火を自由自在に操れる、無詠唱でだ。
大きさも、威力も、爆発まで、操作可能だ。
最高だ、素晴らしすぎる。
俺は大魔法使いになれるぞ……!
スケルトンはやはり人間の進化した姿だったのだ!
多分、分からないが、そんな気がする。
とにかく、俺は魔物が使う火魔法を手に入れた。
これからはひたすら魔力を上げてやる。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ダンジョン7階層を進む。
火魔法を使う赤いワイト達。
ふわふわ浮いてるゴースト達。
もはやただの魔力だ、どんどん吸収していく。
この墓地ダンジョン、7階層から攻略難易度が段違いに上がった。
普通の人間……いや、熟練の冒険者であっても軽く死ぬだろう。
たまに落とし穴があったり、毒ガスが噴き出したり、えげつない罠もある。
もし、落とし穴に落ちたらワイト達に魔法を叩き込まれる。
普通ならそこで人生終了だ。
ちなみに俺には効果が無いから無視だ。
それにしても、この身に火属性を得てから思う。
ワイト達の火魔法がまるで効かない。
俺が火属性のスケルトンに進化したと言ってもいい。
抵抗力と耐性が付いたのだろう。
痛くも痒くも熱くもない、涼しいくらいだ。
もはや火魔法が心地よい。
図らずもスケルトンの弱点の1つを克服したわけだ。
こうなると分かった以上、他の弱点も克服したい。
そうすれば怖いもの無しだろう。
ああ、楽しみだ。
もっと強力なスケルトンやアンデットの魔物に出会いたい。
俺は両手指レイピアを駆使して進む。
ワイトもゴーストも串刺しだ。
そして即吸収。
気持ちいい、骨体に魔力が沁みる。
7階層のゴースト1匹につき魔力量が2上がる。
赤いワイト1匹につき魔力量が10以上、骨密度は1上がる。
6階層までのスケルトンは何だったのか。
7階層から違うダンジョンに来たみたいだ。
おっと、8階層に行く階段を発見。
さっさと8階層に行こう。
あ、その前にステータスを確認しておこう。
個体名:ボーン
レベル:23
魔力量:812
骨密度:2083
ユニークスキル:全骨統
属性:火
す、凄いな、体の感覚が違う筈だ。
明らかに強化されてる。
レベルもいつの間にか上がってる。
そしてとうとう骨密度が2000を突破した。
なんだか達成感がある。
そんなに大量のスケルトンを屠ってきたんだな。
はぁ……俺、頑張った、素晴らしい。
思わずため息……は、出ないな。
そういえば俺、呼吸しないんだった。
よーし、これからも頑張ってステータス上げだ。
俺はもしかしたら最強の魔物になれるかもしれない。
スケルトンの王?
ふっ、もはや興味は無い。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
墓地ダンジョン8階層突入。
赤いワイト、大きめのゴースト、そして大剣持ちスケルトンが出てくる。
お、灰色のワイト発見!
即座に指レイピアを突き刺して吸収!
さてさて……おお、なんと!
今度は土魔法をゲットだ!
個体名:ボーン
レベル:25
魔力量:960
骨密度:2145
ユニークスキル:全骨統
属性:火・土
うん、良い調子だ。
こうしてる間にも絶えず魔物が襲って来てくれる。
どんどん吸収してどんどんステータスが上がっていく。
あ、とうとう魔力量が1000を突破した……けど、感動する暇はない。
ひたすら指レイピアを縦横無尽に繰り出すのに忙しいのだ。
吸収、吸収、吸収……ほんとに絶え間ないな。
ひたすら魔物を串刺し吸収しながら、前へ前へ進む。
魔物の大量湧きはありがたい。
何故なら俺の一撃は複数攻撃になるからだ。
それも一撃必殺、触れただけで消滅する攻撃だ。
まさに俺の為に用意されたステージだ。
だがそんなボーナスタイムは長く続かない。
どんどん魔物の数が減っていく。
ダンジョンで魔物が減る現象は時々起きる。
強力な魔物1匹に魔力が集中するのが原因だ。
こんな時には予想外の凶悪な魔物が誕生する。
つまり俺の事だ、スケルトンだからな。
どうやらダンジョン内の魔力を俺が独占しすぎた。
ふぅ、狩りすぎたか。
次の9階層に期待しよう。
ちょうど階段を発見したところだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
俺は意気揚々と9階層に降りる。
そこは魑魅魍魎が闊歩する世界。
墓地ダンジョンの集大成。
今まで出会ったアンデット達が勢揃いしていた。
しかもなんか体が大きい。
ジャイアントスケルトンなんか、スペシャルジャイアントサイズだ。
いいだろう、やってやる。
覚悟するんだな……そして、後悔しやがれ。
「全員まとめてかかってこいやぁ!」
墓地ダンジョンとの死闘が始まった。
===== セーラの日常 =====
「あーあ、まだ帰ってこないのかなー」
「どうしたのよセーラ、机に突っ伏して」
「あ、お母さん。赤い宝玉をくれた鎧の人なんだけどさー、必ず来るって言ってたのに全然来ないのー」
「ふーん、その人の事、気になってるの?」
「違うよー。そんなんじゃないよー。あ、でも何となく、心配はしてるかなー」
「ふふふ、あらあら。もしその人が会いに来たら、お母さんにも紹介してね?」
「あはは、どうしよっかなー」
「でもその鎧の人は強いんでしょう? それなら心配しなくても大丈夫よ」
「うん、本当はそこまで心配してないけど、お礼は期待してるー! きっとお金をいっぱいくれる! そんな気がするんだー!」
「まぁ! それはとっても素敵ね! お母さんも楽しみに待ってるわね!」
「お母さんったらー」
「ふふふふふ!」
「あははははー!」
2人は意外と強かな女性達であった。
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