骨7本目 ダンジョンのその先へ

 ダメだ、飽きた。

 同じ階層をずっと周回するなんて馬鹿のする事だ。

 

 飽きたのでステータスを見てみる。




 個体名:ボーン

 レベル:15

 魔力量:322

 骨密度:1856

 ユニークスキル:全骨統




 ジャイアントスケルトンを800匹くらい倒した。

 魔石も相当に吸収した。

 俺はとても頑張ったと思うの。


 そりゃあ凄腕の冒険者や魔法使いと比べたらまだまだ弱いさ。

 きっと真面目に努力すれば、今の場所でもっと強くなれるさ。


 だが俺はそうじゃないんだ。

 頑張れるが、すぐに飽きる男なのだ。

 昔から変化を求めて冒険者をしてたんだ。

 飽きる作業には向いてないのさ。


 などと、そんなどうでもいい記憶が蘇る。


 自分に言い訳して、現状に満足して、冒険する。


 いいじゃないか。

 自由なんだから、スケルトンなんだから!


 ま、とにかく飽きたのだ。

 スケルトンの新たな可能性を見たいのだ。


 という事で、ダンジョン6階層に進む事にする。



◇   ◇   ◇   ◇   ◇



 6階層では新たな魔物が現れた。


 半透明の体でふわふわ浮いてて、表情は分からない。

 魔力で作られていると言われる魔物、ゴーストである。


 ゴーストは闇属性の魔法を使ってくる。

 攻撃魔法ではなく、視界を奪ったり、麻痺させたり、精神攻撃をしてくるのだ。

 そして物理攻撃無効である。


 ゴーストとは、魔法でしか倒せない魔物だ。

 しかも6階層では大剣を持ったスケルトン戦士も同時に出現する。

 ゴーストの闇魔法と連携して大剣で思いっきり攻撃してくるからタチが悪い。

 普通なら苦戦するだろうが、俺にとってスケルトンは敵じゃない。

 ゴーストさえどうにか出来れば余裕だろう。


 試しに長い骨槍を構えてゴーストを突いてみる。


 結果はスカッとすり抜けた。

 やっぱり物理攻撃無効か。


 ならこれはいけるかな、と思い骨槍で突いた瞬間にユニークスキル発動。


「なっ……! いけた!? 吸収した!?」


 驚く事に、何故かゴーストを吸収できた。

 骨密度は上がらなかったが、魔力量が1増えた。

 大剣スケルトンも即座に吸収、敵ではない。


 なんということでしょう。

 俺のユニークスキルはぶっ壊れであった。


 ゴーストが魔力体でだったから?

 それともアンデットだったから?

 まあ、理由は分からないが、これでゴーストも怖くない。


 と言うか、そもそも俺に闇魔法が効いた感覚がない。

 俺には脳みそも目玉も筋肉も無いからか。


 相性バッチリ、ゴーストなんて浮いた魔力だった。


「はっはっは! その浮いた魔力、回収してやろう!」


 これでダンジョン6階層は攻略したも同然になった。


 ゴーストは浮いてる魔力だし、様々な武器を持ったスケルトンは骨密度だ。

 余裕だ、楽勝すぎる。


 魔物には『逃げる』という選択肢は無いのか。


 いや、ダンジョンの魔物だからか。

 地上にいる魔物なら逃げる場合があるからな。


 どちらにせよ俺にとっては好都合。

 ひたすらステータスが上がるからな。



◇   ◇   ◇   ◇   ◇



 ダンジョン6階層は意外と狭かった。

 今までよりも短時間で階段を発見した。


 この墓地ダンジョンは奥に進むごとに道が簡単になってるようだ。

 神殿系のダンジョンではありがちな現象だな。


 ほんの数時間。

 たったそれだけの成果がこれだ。




 個体名:ボーン

 レベル:16

 魔力量:428

 骨密度:1988

 ユニークスキル:全骨統




 魔力の上昇が段違いだ。

 ゴースト様々である。

 ありがとう、浮いた魔力さん。


 しかしこれではジャイアントスケルトン狩りの無駄だった感が凄い。

 やはりレベル上げと戦闘は実力が拮抗した魔物でするべきだな。


 とりあえず行ける階層までガンガン行こう。

 攻略が難しくなったらレベル上げだ。


 いざ、墓地ダンジョン7階層へ!


 ――ドゴゴゴゴゴゴゴゴッ……!


 長い階段を降りると俺は……四方八方から火魔法を浴びせられた。

 それは途切れる事のない、まるで地獄の業火。


 軽く混乱状態である。

 即座に逃走、階段まで戻ってきた。


「なにあれ!? 何が起こった!?」


 落ち着いて階段下を観察する。


 そこにはローブを着て、宙に浮いてる赤いスケルトン達が居た。


 いや、上半身だけのスケルトンか。

 よく見ると下半身はない。

 赤い骨って不気味だな、しかも浮いてるから尚更だ。


 あ、そうだ、あいつらはワイトだ。

 魔法を使う上位スケルトン。


 赤いワイトの数は6匹。

 どうやら階段までは登ってこないようだ。


 静かに視線を交わす。


 そもそもお互い目が無いから、気配を探ってるだけ。

 ……のはずだが赤いワイト達はやる気満々に見える。


 俺が階段を降りきったら、一斉に火魔法で攻撃してくるだろう。


 はぁ、人間じゃなくて良かった。

 もし人間だったら今頃、完全に火だるまになってる。

 えげつない罠みたいなワイト達である。


 さて、階段まで追ってこないのは僥倖だ。


 セーフゾーンから攻撃して吸収してやる。

 触れさえすれば俺の勝ちだからな。


 俺は骨槍を長くして振り回す。


 振り回す、振り回す、振り回す。


 ……が、当たらない。


 素早さが段違いだ。

 魔物としての基礎能力、魔力量が桁違いなのだろう。

 流石は上位のスケルトン。

 いや、ワイト……うーん、どっちでもいいか。


 さて、これは困ったなどうしよう。


 あんな火魔法に耐えながら先に進むのは悪手だろう。

 つまりワイト達を倒さないと先には進めない。


 触れさえすれば勝ちなのだ、触れさえすれば。


 網を投げるのような感じで……いや、避けられるか。


 俺の骨体を粉状にして飛ばす……いや、微妙か。

 しっかり触れないとスキルが発動しないからな。


 うーん……じゃあやはり、突くしかない。


 素早く突く、俺の記憶ではレイピアだ。

 針のような剣、突きに特化した剣だ。


 ――ピコーン!


 頭の中に音が鳴った気がした。

 完全に気のせいだ。


 だが、良い事を思い付いた!


 突くよりも早く、刺すのだ!


 視線を下げて自分の手を見てみる。

 そこには両手合わせて10本の指があった。

 これを20本に増やしてみる。

 それからそれぞれの指の先端を、針のように細くする。


 この針をレイピアのように、目の前で伸ばして刺せばいいじゃないか!

 指を伸ばして、突くよりも早く刺す!これだ!


 作戦は決まった。


 俺はジリジリとゆっくりワイト達に近付く。


 ――ズガンッ!


 おっと、ここから先に進むと火を飛ばしてくるのか。

 なるほどなるほど、距離は掴んだぞ。


 いざ、俺の両手指レイピアをくらえ!


 ――シュパパパパ!


 俺は20本の細い針を瞬時に伸ばす。


 俺の動きが予想外だったのか、赤いワイト達は串刺しになった。


 攻撃としては弱いだろう。

 だがな、即座にユニークスキル『全骨統』発動。


 瞬時に指に吸収される赤いワイト達。


 やったぞ、作戦勝ちだ。


「どうだ! 思い知ったか! ははははははっ!」


 さてと、魔力がガッツリ増えた感覚がある。

 ステータスを確認してみよう。




 個体名:ボーン

 レベル:17

 魔力量:567

 骨密度:1994

 ユニークスキル:全骨統

 属性:火




「まじか……!」


 魔力量が一気に増えた。

 レベルも骨密度も上昇している。


 そして輝く『火』の文字。


 俺はとうとう、魔法を覚えたのだ。

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