骨6本目 スケルトンの可能性

 セーラ達と別れ、墓地ダンジョン5階層で1人になった。


 俺は試したい事がある。


 流石は先輩スケルトン達だ。

 俺はスケルトンの新たな可能性を見た。

 狼型のスケルトン、コウモリ型のスケルトン、巨大なスケルトン。


 俺にもなれるだろうか。

 いや、なるしかない。

 あの姿を取り入れて、新たなスケルトンになるのだ。


 まずは狼型スケルトンだ。

 俺は下半身だけを狼型にしてみる。

 簡単だ、念じるだけで俺の下半身は変わった。

 流石はユニークスキル、万能である。

 きっと高速で立体的に動けるだろう。


 とりあえず走ってみる。


 うーん、微妙……いや、酷い違和感がある。

 下半身だけ四足歩行なのは動きにくい。


 筋肉や神経の変わりを魔力が補ってるような感覚。

 動くだけで魔力が減っていく感覚すらある。

 ダメだな、ボツ。


 コウモリ型も同様だ。

 背中に翼を生やしてみたところ、少しだけ飛べるが魔力はガツガツ減る。

 素早く動けないし、飛ぶ事に集中してるせいで戦闘に向いてない。

 ダメすぎる、ボツ。


 最後は巨大化だ。

 ジャイアントスケルトンを見たからな。

 もうイメージはバッチリだ。

 いくぞ……!


 ――ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!


 うん、ジャイアントだ、巨大になった。

 通路と天井ギリギリまで大きくなれた。

 だが魔力の減り方が最も早い。

 元の体型が標準かつ最適なのだろう。

 やっぱりダメか、ボツ。


 俺は多分、魔力がなくなったら粉状になると思う。

 もしかしたら死んで記憶も失うかもしれない。

 魔力が無くなる実験は危険すぎる。

 魔力が増えた時にまた試してみよう。



◇   ◇   ◇   ◇   ◇



 ダンジョン5階層だが、通路は広く、天井は高く、分かれ道も少ない。

 現れるのはジャイアントスケルトンだけだ。


 攻略しやすい階だろう。


 ジャイアントスケルトンは必ず手で俺を潰そうとしてくる。

 そのタイミングに合わせてユニークスキルを発動。

 巨大な骨を破壊しながら吸収していく。


 ちなみにジャイアントスケルトンを吸収した骨密度の上昇値は1だった。

 個体差があるかもしれないが、残念な結果だ。

 もしかしたらスケルトン1匹につき骨密度上昇値は1固定なのかもしれない。


 お、レベルが上がった。




 個体名:ボーン

 レベル:11

 魔力量:90

 骨密度:1070

 ユニークスキル:全骨統




 また魔力量の上昇値が上がってる。

 これは嬉しい、成長してる。

 このままガンガン上がってほしい。


 ちなみに俺の記憶では、凄腕魔法使いの魔力量は1万とか2万とか……余裕でそれくらいあった気がする。


 俺はまだ100を越えてない、まだまだ少なすぎる。

 昔の自分のステータスは思い出せないがな。


 さて、また『赤い宝玉』と呼ばれる大きな赤い魔石がドロップした。

 どうしようかこれ。


 鞄とか持ってないし、荷物になるから邪魔だ。

 だが価値があるようだし、捨てるのはもったいない。


 俺は昔から貧乏性なのだ。

 それにセーラにプレゼントするのも良い。

 きっと喜んでくれるだろう。


 俺はとりあえず体内に収納しようと、腹に抱える。


 ――ぎゅむむむ。


 まさかの骨体が魔石を吸収した。

 ああ、凄いぞ。

 魔力が満ち溢れてくる。


 これはユニークスキルじゃないと思う。

 魔物としての、スケルトンならではのスキルだ。


 魔物の本能なのか、他の魔物から獲れる魔石を吸収するという行為。

 自分の存在が大きくなった気がする。

 ステータスを確認してみよう。




 魔力量:90→95




「はっはっは! 素晴らしい! こんな裏技があったとは!」


 思わず声が出た。

 そうなのだ、魔力量が上がったのだ。


 これから魔石を吸収していけば魔力量が上がる。

 つまり俺の基礎能力が上がる。

 素早く、力強く、より強くなれるのだ。

 こんなに嬉しい事はない。


 その名の通り『赤い宝玉』とは宝玉であった。


 ここからはジャイアントスケルトンの乱獲だ。


 赤い宝玉探しに火がついた。


 確率的には3匹に1匹は宝玉持ちだ。

 宝玉を吸収すると魔力量が3から7増える。

 きっと保有魔力の個体差があるのだろう。


 俺は疲れない。

 食事も睡眠も必要ない。

 ユニークスキルで瞬殺できる。

 もう止まる必要もない。



◇   ◇   ◇   ◇   ◇



 おそらく何日も狩りをしてただろう。


 墓地ダンジョン5階層、完全制覇。


 完璧な地図が頭に入ってる。

 6階層に行く階段の場所も把握済みだ。

 だがまだ進まない。

 5階層で強くなれるだけなるつもりだ。


 ここはダンジョン。

 ジャイアントスケルトンを倒しても倒しても、次から次に再出現する場所。


 魔力がガンガン上がる。

 骨密度はコツコツ上がる。

 危険はなく、俺に最適な場所。


 飽きるまでやってやる。

 ここでレベルとステータスを限界まで上げるのだ。


 ふはははははは……!


 俺はスケルトンの王になるぞ……!

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