骨5本目 セーラと仲間達

 俺は聖女に出会った。


 俺を救ってくれた聖女、セーラ。

 よく喋る剣士、ユリウス。

 寡黙な盾使い、オルバ。

 ぐっすり寝てる弓使い、アナ。


 4人はCランクの冒険者パーティー。

 幼馴染の仲良しで、全員が18歳。

 自己紹介を済ませた後に色々と話してくれた。

 眠っているアナ以外の3人は、俺をスケルトンとは少しも思ってない。

 もっと他人には警戒心を持った方がいいぞ。


 ちなみに俺は25歳のCランク冒険者だと名乗った。

 完全に適当である。


 話してみると、セーラは聖女でも何でもない。

 普通の魔法使いだと言う。

 だが俺にとっては聖女様だ、間違いない。


 このダンジョンには、5階層で獲れるらしい『赤い宝玉』を狙って来たと言う。


 宝玉目当てか……たまに魔物から獲れる、大きな魔石の事だろう。

 俺には関係ないが、セーラにはお礼がしたい。

 何が欲しいか聞いてみよう。


「セーラ、俺は君に救われたんだ。お礼をしたいと思うが、金も何も持ってない。住んでいる場所と欲しい物を教えてくれないか? 必ず届けると約束しよう」


「あ、それなら、5階層で宝玉探しを手伝ってくれませんかー? あたしが欲しいのは『赤い宝玉』なんですよー!」


「よし分かった、この命を賭けて手伝おう!」


「いえ、別に、命までは賭けなくていいかなーと」


「任せてくれ! さぁ、ダンジョンを進もう!」


「え、あ、はい……」


 こうして俺もパーティーに加えてもらった。


 まずはダンジョン4階層を突破し、5階層で宝玉探しだ。

 寝ていたアナを起こし、自己紹介を済ませ、5人でダンジョンを進む事にする。



◇   ◇   ◇   ◇   ◇



 墓地ダンジョン4階層。


 出現する魔物は骨狼、骨コウモリ、槍と盾を持ったスケルトンの3種類だ。


 狼もコウモリも動きが速く、ちょっと面倒だ。

 スケルトンは突っ込んでくるから楽なのだが。


 まあ、どちらにせよ俺の相手ではない。

 俺の持つ槍っぽい骨が触れるだけで消滅させる事が可能だからな。


 俺はパーティーの先頭で、ひたすら骨槍を振り回す。

 それはもう、一心不乱に振り回している。


 俺の暴れる姿を見てる4人は唖然としていた。

 少しだけ会話が聞こえてくる。


「おいセーラ、よくあんなヤバい冒険者を助けたよな。お前すげぇよ」


「あははー、たまたまだけどねー。でも悪い人じゃないと思うよー」


「でも槍で突くだけで魔物を消滅させるって……ヤバくねぇか?」


「ヤバいよね」「あれヤバい」「ヤバすぎ」「だよな」


 若者にありがちなコメントだ。

 とりあえず「ヤバい」と言われる。

 いつの間にかヤバい奴認定を貰えた。


 俺はスケルトンだから、今更どうでもいい。

 そもそも存在自体がヤバいんだから。

 ユニークスキル持ちの魔物なんて災害級だろう。

 俺は人間を襲おうとは思わないが。


 こうしてる間にも俺の骨密度は増えていく。


 絶え間なく魔物が来て、全ての骨粉を吸収する。

 俺の経験値と骨密度になってくれる。

 素晴らしいユニークスキルを授かったものだ。

 完全にソロ無双状態である。


 ちなみにセーラ達は5階層までの地図を持っており、道に迷う事はない。

 地図が出回るって事は、この墓場ダンジョンは有名だという事だ。

 次を左とか、真っ直ぐとか、皆が指示をくれる。

 わざわざ階段を探す手間が省けるのでありがたい。



◇   ◇   ◇   ◇   ◇



 そしてたどり着いた5階層行きの階段。


 俺はさっさと降りる。


 するとセーラが情報をくれた。


「ボーンさん5階層ではジャイアントスケルトンが出ますよー! たまに頭蓋骨の中から『赤い宝玉』が見つかりますー!」


「ジャイアントスケルトン? なんだそれ、見た事がないな。とりあえず俺がソロで戦ってみる、必ず赤い宝玉を渡すからな!」


「はい!お願いしますー!」


 なるほど、ジャイアントスケルトンか。

 きっと名前通り、大きなスケルトンなのだろう。

 確かに5階層は通路も広く、天井も高い。

 大きな魔物が出現する証拠だ。


 だがスケルトン相手なら楽勝だ。

 俺のユニークスキルで骨粉にしてやろう。

 そして骨密度になってもらうんだ。


 4階層の魔物でもやはり骨密度の上昇値は1だった。

 ジャイアントなら上昇値2が期待できそうだ。


 だが俺は甘くみていた。


 ジャイアントスケルトンは、本当に、ジャイアントだったのだ。


 見た瞬間に硬直した。

 まるで巨人の骨。

 しかも動いてるし、速い。


 急に通路横から現れた、油断していた。

 俺は巨大な骨の手に潰されたのだ。


 ――ドゴォォォン……!


「うわああああ……って、別に痛くないな」


 思わず叫んで……冷静になった。


「重くて身動きがとれないだけか。……ふふふ、俺に触れたな?」


 即座にユニークスキル『全骨統』発動。


 ジャイアントスケルトンがみるみる骨粉になっていく。


 俺はすかさず骨粉を吸収した。


 おお、濃厚な骨だ、通常スケルトンとは大違いだ。


 神経は無いが、何か大きな物が俺の中に入っていく感覚がある。


 なんとも、気持ちいい……!


 すぐにジャイアントスケルトンはその巨大な姿を消した。

 骨粉など残らない、全て吸収したからな。

 残ったのは人間の頭くらいある、大きな赤い魔石。


 あれ、これが『赤い宝玉』?

 まさかの1発ドロップじゃないか。


「セーラ、これが狙ってた宝玉か?」


 俺は全身鎧についた汚れを払いながら、セーラ達に明るく声をかける。

 だが、何の反応もない。

 4人とも口を半開きにして、目を見開いてる。


「おい、どうした? 大丈夫か? 何か精神にくる魔法でもくらったか?」


「いや、ボーンさんが、死んだかと思ってー……でも死んでなくて、ジャイアントスケルトンが消滅して、え、これって赤い宝玉……え、えぇー……」


「言ってなかったが、俺はユニークスキル持ちだ。この大きな赤い魔石がセーラが欲しかった赤い宝玉で間違いないか?」


「「「「ユニークスキル……」」」」


 唖然としていた4人だったが、赤い魔石を見た途端セーラは目を輝かせた。


「……え、あ、はい、これが欲しかった赤い宝玉ですー!」


「良かった、これで少しは恩返しが出来る。受け取ってくれセーラ」


「ありがとうございますー!」


「あと何個欲しいんだ? 俺はセーラの為ならいくらでも頑張れるぞ!」


「そんな、悪いですー! 宝玉は1つだけで大丈夫ですー!」


「そうか、他に欲しい物はないか? それとも先に進むか?」


「いえ、これで帰りますー! 皆も疲れてると思うしー!」


「分かった、じゃあ俺は先にを進む事にする。みんなとはここでお別れだ。まだ礼が足りないから、住んでる場所を教えてくれないか? 何か届けるよ」


「あたしはヨーセンの街に住んでるので冒険者ギルドで住所を聞いて下さーい! あの、今回は、あたしの方こそ、ありがとうございましたー!」


「ヨーセンの街か、しっかり覚えておこう。ダンジョンを出たら、冒険者ギルドを訪ねる事にする。気をつけて帰ってくれ」


「はい!」「ありがとうございました!」「さようなら!」「また!」


 こうしてセーラ達と別れた。

 少しは恩返しが出来て良かった。


 この墓地ダンジョンを制覇したら、セーラを訪ねる事にしよう。

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