骨4本目 ああ、聖女様!

 墓地ダンジョン3階層。


 相変わらずスケルトン戦士ばかりが出現する。

 強さはまばらで個体差があるようだ。


 俺より速く動き、力が強いスケルトンがいる。

 逆に動きが遅く、力も弱いスケルトンもいる。

 保有している魔力量が違うのだろう。


 どちらにせよ、たとえ5匹に囲まれようが俺の相手ではない。

 ユニークスキル『全骨統』で即骨粉にする。

 そして即吸収、俺の骨密度の糧となる。


 今では骨剣で戦うのではなく、骨槍を作ってスケルトンを突いたりしている。


 接触すれば俺の勝ちだからな。

 ならば間合いの長い武器の方が有利だ。


 俺ならではの戦い方が分かってきた気がする。

 それにスキル発動時間も高速になってきた。

 やはり慣れというのは大事だ。

 何事も練習あるのみ。


 そして久しぶりに変化が訪れた。

 レベルが10に上がった時だ。




 個体名:ボーン

 レベル:10

 魔力量:70

 骨密度:956

 ユニークスキル:全骨統




 お分かりだろうか。


 魔力量の上昇幅が上がった。


 今まではレベルが1上がるごとに魔力量は5の上昇だった。

 しかし、今回は15も上がったのだ。


 レベルが2桁になったからなのか?

 それともレベル10という区切りボーナスなのか?

 まあ、よく分からないが、何であっても嬉しい事に変わりはない。


 魔力量が上がれば動きが良くなるのだ。


 そしてやはり敵スケルトンの強さに応じて取得経験値にも違いがあるようだ。

 レベルの上がりが早かったし、計算が合わない。


 強い魔物と戦う事こそがレベル上げでは重要だからな。

 スケルトン攻略法は確立されてるし、この調子でレベル11を目指そう。



◇   ◇   ◇   ◇   ◇



 俺はダンジョンを彷徨うように歩く。


 もっと強いスケルトンと戦ってみたい。

 先輩スケルトンの可能性を見たい。

 どんなスケルトンに出会えるのか楽しみだ。


 スケルトン戦士を蹂躙しながら先に進んでいると、階段を発見した。


 だが階段を見つけたのは良いが……先客がいる。

 冒険者だ、男女2人ずつ、4人組だ。


 ダンジョンで階段は魔物が出現しないセーフゾーンになってる事が多い。

 だから冒険者が休憩するなら階段なのだ。

 きっと4人組は休憩しているのだろう。

 焚き火を囲んで、2人は寝てるし。


 だが、そんな事はどうでもいい。

 1人の女に見覚えがありすぎる。


 あの女……俺を骨粉にしてくれた奴だ!


 あんの、クソアマめ……!


 今こそ復讐の時……!


 体中の骨をバキバキにして…………いや、待てよ、違うだろ。


 あの女性のお陰で俺は自我を取り戻し、ユニークスキルを授かったのだ。

 むしろあの女性は、俺にとって女神なのではないか?

 もしかしたら、あの方こそ、神の化身かもしれない。


 ああ、そうか、聖女様なのか……!


 是非とも礼を言って仲良くしたい。

 何か恩返しがしたい。


 だが今の俺はスケルトン、冒険者の敵だ。

 しかも見た目は白いゴーレム。

 人間風で裸だし、変態と思われるかもしれない。


 それはまずい、俺はもう死にたくないのだ。

 このまま出会ったら間違いなく滅魔光線されるだろう。


 ……ここは本気を出して人間に擬態してみるか。


 人間に化ける魔物は数多くいる。

 代表的なのはスライムだ。

 知能が低く話す事はできないが、見た目は人間そっくりに化けられる。


 スライムもスケルトンも変わらない。

 むしろスライムはスケルトンかもしれない。

 ならばきっと俺なら人間に擬態できる筈だ。


 何事もイメージが大切。

 記憶にある自分そっくりに再現してみる。


 ユニークスキル『全骨統』で骨粉を操り、人間の形を作る。

 細かい部分まで再現してみよう。

 髪や皮膚の質感は、記憶から想像できる。


 俺は今でこそスケルトンだが、元は人間だ。

 元人間の骨が人間の形になるのだ、そう難しくない。


 しばらくして完成……したが鏡がないから完璧かどうかは分からない。


 特に髪の毛、しっかり擬態できてるか怪しい。

 皮膚も真っ白だし、裸だし、服の再現は難しい。

 瞳の色だって白そうだ。

 歯が白いのはいい事だがな。


 ……ダメだなこれは、せめて着る何かが必要だ。

 そうだ、フルプレートの全身鎧に擬態するか。

 鎧を着ることができるのは実証済だ。


 早速、全身鎧を着た戦士姿に擬態してみる。

 ついでに骨槍を持ってみる。


 外見はこれでいくらかマシになったはず。

 だが、もうひと押し、人間らしい何かが欲しい。


 ……そうだ、人間に擬態した状態なら声が出せるんじゃないか?


 ふと気になって、声を出してみる。


「あ、あー、うー、うん、普通に喋れる。これは凄いな! 過去の自分に擬態しておきながらなんだが、声帯までしっかりと擬態できてるじゃないか! ちょっと声が無機質な感じがするが……まぁ仕方ないか、スケルトンだし」


 無機質な声になってるのは、声を出してると言うより、スキルを使って声を再現してるからだろう。


 それにしても上出来ではないか。

 我ながら自画自賛してしまう。

 流石はユニークスキル、万能かつ最高級だ。


 ここまでスムーズに話せるなら魔物だと思われる事はないだろう。


 うむ、きっと完璧だろう。

 色が白いのは我慢だ。


 では早速、聖女様に挨拶に行くとしよう。



◇   ◇   ◇   ◇   ◇



 俺は休憩している4人組に近付く。

 何かの気配を感じて、警戒している様子だ。

 まずは俺から話しかけるとしよう。


「お疲れ様、ちょっといいか? そこで寝ている女性に礼を言いたいんだが」


 男性2人が見張り番だろう。

 女性2人は横になってるからな。


 4人の装備を見るに……男性は剣士と盾使いか。

 女性は弓使いと魔法使いだろうな。

 剣、盾、弓、杖を持ってる。


 剣士の男性が返事を返してくれた。


「このダンジョンをソロなのか? 少しも汚れてないところを見るに、凄腕の冒険者か? それにしても、礼とはどういう事だ? 説明してくれるか?」


 警戒しているようだ。

 いきなりダンジョンで話しかけられたら仕方ない事だろう。

 俺は出来るだけゆっくりと、敵意が無いように答える。


「俺はソロの冒険者だ、身分証は今見せられないが……名前はボーン、よろしく頼む。実はダンジョン1階層でそちらの女性が唱えた滅魔光線に救われたんだ。だから礼を言いたいと思ったのだが……」


「そういう事か、いいぞ。どうせ起きてるだろうからな。おら、セーラ、お前に客だぞ」


「あはは、起きてるのバレてた? そういう事ならお礼を貰おうかなー! セーラでーす! あたしの魔法が役に立ったみたいで良かったですー!」


 第一印象は、元気な女の子。


 彼女の名前はセーラか……不思議だ。


 何故か懐かしい雰囲気を感じる。

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