骨3本目 スケルトンスキル

 レベル9になる為、スケルトンを320匹も普通に倒すのは面倒だ。

 今こそユニークスキル持ちの俺ならではの戦い方を考えてみよう。


 まず俺は倒したスケルトンの骨粉を吸収して自身の骨密度……つまり物理防御力を上げる事ができる。


 これは素晴らしい、鉄壁になれるだろう。


 そして自身の骨の延長と言うべき、骨体から剣を作り出す事もできる。

 しかも骨密度依存の堅さであり、スケルトンと戦うにはもってこいの武器だ。


 ここで思い出してみよう。

 俺の記憶では、魔法を使うスケルトンも居たし、弓を使うスケルトンも居た。

 今の俺は魔法を使えないが、弓ならどうだろうか。


 俺は骨体から弓と矢を作ろうと念じる。

 スキル発動の感覚がある。


 すると簡単に、あっという間に、イメージ通りの骨弓と骨矢が完成した。

 魔力や骨密度が減った感覚はない。

 きっと無限に骨矢を作り出す事ができる。


 これは凄いスキルだ!……と思ったが、骨弓のしなりがかなり悪い。

 硬い分だけ性能が落ちている。


 俺のイメージが悪かったのか。

 あるいは、骨弓の性能としてこのレベルなのかは分からないが……使えない。


 こんな矢なら簡単に避けられるし、速度も出ない。

 矢も脆いのか、すぐに砕けて消える。

 威力も相当に弱いだろう、ボツだ。


 となると、やはりユニークスキル『全骨統』だ。


 スキルの理解を深める事で、出来る事が変わる筈。

 ただ死んだスケルトンの骨粉を吸収するだけの能力とは思えない。


 きっと何かがある……そう期待したい。



◇   ◇   ◇   ◇   ◇



 俺はスケルトンを1匹、捕まえてみた。


 手足を砕き、頭と胴体だけの状態。


 死んでいないからか、歯をカチカチと鳴らし噛みつこうとしてくる。

 ヘビみたいに胴体だけで動こうとしている。


 なんとも不気味だ、流石は不死のスケルトン。


 俺は手のひらを向けて、ユニークスキル『全骨統』を発動させてみる。


 うむ、何も起こらない……ちっ!


 洗脳、操作、回復、破壊、吸収、爆発などなど。

 従属化とかできたら最高なんだが……出来ない。

 色々と念じてみたが、特に変化は見られない。


 触れながらスキルを発動したらどうか。

 とりあえずやってみる。


 吸収……おや!?


 倒してもないのに、スケルトンを吸収できた。

 しっかり骨密度の値が1上がっている。


 これはもしや……いや、もう少し実験が必要だ。

 もっとスケルトンを捕まえて試してみよう。



◇   ◇   ◇   ◇   ◇



 結果から言おう。


 ユニークスキル『全骨統』は相手に触れてないと発動しない。

 だが触れてしまえば、破壊と吸収ができたのだ。


 つまり、スケルトン系の魔物に対しては、無敵に近い攻撃力を持っていたのだ。


 何故なら触れるだけで倒せるし、吸収可能なのだ。

 これは破格の能力だろう。


 だが……これだけか?

 もっと他に出来る事があるんじゃないか?

 ユニークスキルって、こんなもんか?


 いや、そうじゃない筈だ。

 ユニークスキルとは一騎当千の最高級スキルだ。


 だが……どうしても他の使い道を思い付かない。

 俺は才能の無駄遣いをしている気がする、悔しい。


 とは言っても、触れるだけで倒せるなら上等である。

 剣持ちスケルトンなんか相手にならない。


 俺はひたすら鬼ごっこのようにスケルトンを追いかける事にした。


 はい、タッチ!鬼交代!

 あ、死んだね!残念!

 哀れ、スケルトン、安らかに眠れ。


 足の速さ、防御力の高さ、スキルの性能を活かしたスケルトン狩り……。

 うん、地味である。


 だが墓地ダンジョン3階層行きの階段を発見した。

 ダンジョン内を走り回るからな。

 レベル上げの副産物と言ってもいい成果である。


 そしてとうとうレベルも上がった。




 個体名:ボーン

 レベル:9

 魔力量:55

 骨密度:805

 ユニークスキル:全骨統




 魔力量はほとんど変わらないが、骨密度は大幅に増えた。

 レベル1の時は骨密度10しかなかったのだ。

 あの頃の80倍……防御力だけは凄いと思う。


 自信が付いてきた。


 このまま2階層で鬼ごっこしてても面白くない。

 スケルトンは逃げずに突っ込んでくるし。


 手が触れたら倒せるのは良い事なのだが……それでも効率は悪い。

 さっさと先に進もう。


 いざ、3階層へ。



◇   ◇   ◇   ◇   ◇



 墓地ダンジョン3階層に降りる。

 しばらく歩くと、スケルトンを発見した。


 2階層のスケルトンは霞んだ剣を持っているだけだったが、3階層のスケルトンは槍を持ち鎧を着ている。


 随分と戦士っぽい出立ちだ。

 少し上位のスケルトンだろう。

 1匹だけだしタイマンといこうじゃないか。


 俺の存在に気付いた槍と鎧のスケルトンは即座に槍で突いてくる。


 ――カァン!


 ふっ、やはりな。

 俺の高い骨密度の前では、かすり傷をつける事さえ出来ないようだ。

 甲高い音とともに、槍の攻撃を弾いた。


 それにしても無駄な動きもなく、素早く、力強い。

 明らかに基礎の身体能力が高い。

 いや、骨体能力が高い。


 俺はスケルトンに抱きつく形でスキルを発動。

 槍スケルトンを破壊、骨粉状にする。

 やはりユニークスキルのお陰で楽勝だ。


 そして骨粉を吸収し、ステータスボードを確認。

 骨密度上昇値は……1だけか、2上がってくれたら良かったのに、残念だ。


 おそらくスケルトンの基礎能力である動きの元になる魔力量は同程度だろう。

 力と素早さが俺とほとんど変わらない。

 同レベルだろうから、取得経験値に期待だな。


 そんな事よりもだ、鎧を纏う事ができるのか。


 この発想はなかった。

 流石は先輩スケルトン、勉強になる。


 人間だった頃はスケルトンなんて魔法で即消滅させてたからな。

 鎧を着たスケルトンの存在を忘れてた。


 早速、俺も鎧をイメージして骨体を操作してみる。


 やはり簡単だ。

 俺の骨体が粉状になり、イメージ通りの鎧を着ることができた。


 だがこれで終わりじゃない。

 鎧なんか着ても意味はない。

 そもそも防御力は高いのだ。


 どうせなら、攻撃・防御・素早さを鍛えた冒険者のようになれないだろうか?

 ユニークスキルの力を使えばどうにかなりそうな気がする。


 まあ、物は試しだ。


 俺はイメージしてみる。


 強靭な首、太い腕、厚い胸、堅い腹筋、動きの起点となる腰、力強い太もも、俊敏な足。


 お、おお、そうか、こうなるのか……!


 全身を白い骨粉が覆った。

 イメージ通り、人間風の体。

 二足で立つ守護者のような風格。


 と言うか、白いゴーレムになった。

 なるほどなぁ、ゴーレムってスケルトンだったのか。

 これは知らなかった。


 見た目はゴツい人間風の白いゴーレム。

 だが人間やゴーレムと違い関節の動きは良い。

 腕を回転、首を回転、上半身ごと回転。

 まるでスライム、グニャグニャになる事もできる。


 そうか、スライムってスケルトンだったのか……!


 いや、流石にそれはないか。


 とにかく、これで幅広く対応できるようになった。

 これからは基本的にこの白いゴーレム状態で行動しよう。

 間違いなく対応力は向上しているはずだし。

 ただの骨よりゴーレムの方がいいだろう。


 よし、これからの骨体の方向性は定まった。


 後は魔力量を上げてパワーとスピードを補強しよう。

 となるとやはりレベル上げが必要だな。

 それに戦いにおいての技術、スキル発動の速さも重要である。

 これからはユニークスキルを瞬時に発動できるよう練習しよう。


 俺に触れた瞬間にスケルトンが消滅するような、高速スキル発動が目標だ。


 やってやる、行くぞダンジョン3階層!

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