第4話 ホムラ5歳

 あっという間に、5歳になってしまった。もう元の世界では、小学生になる年頃だ。言葉もかなり話しやすくなった。


「おはようございます、ホムラ様!雲ひとつない良い天気ですよ」


 ノックをした後に、家のメイドがホムラを起こすために部屋に入ってくる。ちょうど目が覚めていた所だったので布団から出る。


「おはようございます、レフィーさん」


 メイドに挨拶をすると彼女は嬉しそうな表情をする。もう抱っこしてもらえる歳でもなくなってしまったのが残念でならない。


「寝癖も直しました。ホムラ様はいつ見ても素敵ですね。将来はきっと多くの御令嬢の目を奪うことになると思いますよ!」


「ありがとう、レフィー。僕を好きになってくれる人がいてくれたら嬉しいな」


 鏡に写る、暗めの金髪の自分の姿を見た。

 黒髪黒目のどこにでもいそうな顔をしていた元の自分の姿も今の姿にかき消されてしまった。濃ゆい紫色の優しそうな目を見て、これはイケメンになれるだろか?なんて考えてみる。


 ちなみに、家の中では主語は僕にしている。うっかり俺と言った時は食卓が凍りついたものだ。





 顔を洗ってから、朝食を食べに向かう。


「おはよう、ホムラ」


「母様、おはようございます!」


 食事を取る部屋に着いたホムラに声をかけたのは母、ミレイラだ。1、2年前まではママなんて呼んでいたが、今は母様呼びだ。気恥ずかしくなったと言うような演出だ。母は、残念そうにしていたが……


「おはよう、リーラ!元気そうだね」


 母が抱いているのは、ホムラの妹だ。1年ほど前に生まれたばかりだ。ホムラ自体元の世界でも一人っ子だったので兄妹がいるというのは新鮮だ。良く可愛がりたいと思う。


 母は、もう30を超える歳になるのだが、まだまだ若い。20歳でも通りそうだ。父が惚れるのもわかる気がする。父は、大事なのは心だと言っていたが。


 母の金髪に、綺麗な青い瞳は人形と言っても差し支えない美しさがあった。リーラも母親に良く似ているため、美人に育つだろう。



「よお、ホム坊おはよう〜!」


「わぷっ!おはようございます、レレ母様」


 急に後ろから抱きしめられたために驚いてしまった。


 実は父には妻が2人いる。1人は、自分の母親ミレイラ。そして、もう1人が今抱きしめてきているレレリアーナだ。


「レレ、ホムラがびっくりしていますよ」


 母様が言ってくれる。すると、レレ母様が残念そうに離してくれた。本当に残念そうだ。


「だって、ローリエは抱っこさせてくれないんだもの」


 とニカっと笑って答える。レラ母様は、素敵な笑みをお持ちだ。周りも自然に笑顔になる。


 ローリエとは、レラ母様の息子で8歳だ。義理の兄にあたる。母親に抱きしめられるのは照れ臭くなったようだ。俺は大歓迎だが。



「おはよー、みんな!ご飯食べよう、お腹が空いてしまった」


 と言って部屋にやってくるのは、父だ。後ろからは義兄のローリエもついてくる。明るい茶髪の父は、柔らかな瞳をしておりかなりのイケメンだと言える。母様同様若く見える。


 ローリエ義兄様も父にそっくりで、これはイケメン確定だろう。羨ましい!



 食事は、すでにメイドによってテキパキと並べられている。手際が良い。




 食事が終わり、それぞれがやるべきことを行うため移動を始めていると父が声をかけてくる。


「そうそう、ホムラ。お前の魔法を鍛えるために先生を付けることにしたんだ。今日の夕方にでもここにやってくる」


「それはまた急ですね、父様!もう少し早く教えてくれても」


 別に自分は予定とかがあるわけではないし、魔法を使いたいと思っていたのは事実なので喜ばしいことだ。


「良かったわね、ホムラ。頑張るのよ!」


「はい、母様!」


 嬉しそうに母に答える。



 夕方まで何をして過ごそうかな?と思いながら食卓を出ていると義兄であるローリエが立っていた。


「魔法の訓練か、怪我しないようにな」


 心配した様子で声をかけてくれる。兄、めちゃ優しい。結構、貴族の御令嬢に人気があるというのも頷ける。


「ありがとうございます!ローリエ義兄様も、お勉強頑張ってくださいね」


 義兄は、勉学に励むというより新たな知識を得るのが好きなようで父に頼んで家庭教師を付けてもらっている。ホムラは、そこまで勉強は好きではないので家庭教師はいらないかな……と思い、もし提案されても断るつもりだ。


「ああ、共に将来に向けて努力しよう」


 と肩をポンポンと叩いて勉強部屋に向かっていった。嫌味な義兄とかじゃなくて良かったわ……と初めて話した時からホムラは思っているのだった。



夕方、魔法を教えてくれる先生がやってくる夕方まで楽しみに待つのだった。

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