第2話 転生、そして話しを聞いていなかった神
「待って!転生特典ってめっちゃ大事そうじゃん!」
「時々、忘れたまま異世界に送ることもあるし、別に良くない?私これからおやつだし」
堂々とおやつと言い始めた。何が忙しいだ。忘れたまま異世界に送られたという同志は可哀想だと思う。天使が声を掛けてくれたおかげで特典とやらを貰えそうだ。
「いやぁ〜危なかったですね、転生者さん。ミルレイヌ神のうっかりは良くあることですので」
神として致命的に駄目だろうと思う。人事は、見直しをしてこの神とやらをクビにした方が今後のためだ。
「結構昔に、特典を渡し忘れた奴。特典渡してたら強すぎて世界を壊しかねなかった。私の判断は正しかった」
「偶然じゃん……」
ドヤ顔をしてるが、アンタのミスだろ……
「天使〜、目録」
「はい、ミルレイヌ神」
と言いながら、蒼に冊子を手渡してきた。ミルレイヌ神が目録と言ったものだろう。ペラペラと巡ってみると、剣や鎧など様々なアイテムが載っている。どれも豪華そうな装飾がなされており強そうだ。
「その中からひとつだけ、好きなのをあげる。欲しいのを言ってくれたら、転生した時にアイテムボックスに入れといてあげる」
「数が多いなぁ……迷っちゃいます」
じっくりと本に目を通しておく。聖剣なんてのも格好良くて欲しい。槍や盾などもゲームでいえば最高レアリティのもので間違い無いだろう。正直これだと決めることが難しい。
「魔法が使えるなら杖が欲しいなぁ……。でもわからないんですよね?」
「一応私は、知っている。教えることは出来ないけど、杖がオススメ」
と言うことは魔法の才能があると考えることが出来る。ミルレイヌ神の適当でなければだが……
だが、なんとなくこれにしたいな……と思うものがあった。
『対魔の杖』
魔法に対抗し、魔法の力を増幅すると簡単な説明が書かれている。なんとなくだが、これが欲しいなと思った。早速ミルレイヌ神にお願いだ。
「決めました、対魔のつ「ミルレイヌ神、おやつの準備が〜」えをください」
蒼の言葉はやってきたもう1人の天使に遮られる。
「わかった。君が欲しいものはアイテムボックスに送っておくから。それとアイテムボックスのスキルは貴重だから偽装しておく。これで安心。私はおやつ食べる」
欲しいものはきちんと聞き取ってくれたようだ。ミルレイヌ神は、さっさと部屋を出て行ってしまった。
「申し訳ありません。私がお見送りさせて頂きます。どうか良い人生を歩まれますように」
「ありがとうございます。頑張ります!」
足元が光り、自らを包み込むのがわかった。色々あったが無事に異世界への転生が始まったようだ。
オギャア、オギャアと泣く声が聞こえて目が覚めた。誰が泣いているのだろうか?それはすぐにわかった。泣いているのは、自分だ。
「良く産んでくれたな!ミレイラ」
「産まれてくれてありがとう、私の赤ちゃん」
声が聞こえる。体格の良い男性に抱えられており、ベットに横になっている金髪の女性を目に捉える。この2人が自分の両親なのだろう。赤ん坊のせいか、視界が広くないため完全には見えないが……
父と思われる男が、母に自分を渡す。赤ちゃんの時から自我があるのは面白い体験だなと思っていると
「鑑定士よ、息子のスキルを見てくれるか?」
「はい、それでは失礼して」
部屋にはもう1人人物がいたようだ。思ったよりも視野が狭い。こちらも金髪の女性だ。透き通った緑色の瞳がこちらを見ている。
「どうだ?」
「ええ、素晴らしいです!紅属性のスキルを確認しました。特に、火系統の魔法使いの適性があります!」
直後、父が喜びの声を上げた。
火の魔法だろう。これはとてつもなく喜ばしいことだ。最も欲しかった属性だ。ゲームで言えば一回目でリセマラが終わった気分だ。
「なんと嬉しいことだ。今日は、お祝いだな!」
「そうね、それにこの子の名前も決めてあげましょう」
そう、名前だ。出来たら前の名前に似ていたら嬉しいなと思うもんだが、厳しいだろう。
「決めたよ、ホムラだ。この子の名前は、ホムラ」
苗字の穂村じゃん!と思った。これはあんまり変わらないからありがたいと思う。やるな!親父。
「ホムラ、産まれてきてくれてありがとう」
優しい声で、母親が抱きしめてくる。柔らかい感触にオオゥと心の中で喜んでしまう。
「アウアウ……」
言葉は話せないが、言っておく。
ミルレイヌ神の言った通り、スキルのアイテムボックスなどは隠し通せているようだ。そこは感謝したい。
アイテムボックスを確認しようと思ったが、母親もいるし眠気も凄いので眠ることにした。赤ん坊では、眠気には勝てなかった。
「ちゃんと転生したぁ?」
「はい、ミルレイヌ神。無事に転生完了です。あとは、頼まれた装備品を送るだけです」
と言いながら目録を渡してくる。
「後は私がやっておくから、君は休みな」
「わかりました、ミルレイヌ神。失礼します」
天使が出て行ったのを見て、ミルレイヌは目録を開く。
「やばっ、何が欲しいって言ってたか忘れちった。なんつってたけ?」
ポテチをつまみながら呟く。おやつで呼ばれた瞬間だったから良く聞いてなかった。必死に思い出そうとする姿は、テスト中の高校生のようだ。
「ああ、たいま……とか言ってたな。さすが私、良く思い出した。よし、送ろう!松明(たいまつ)」
と言いながら、ミルレイヌは転生特典をホムラに送るのだった。送られてきたアイテムにホムラがブチギレるのはまた後程のことであった。
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