03 β

 また、次の日も。彼女はベンチに来て。ぱぱ活とやらを続けていた。


「稼げるのか」


「稼げるよ」


 いい気なものだった。まあ、一線を越えていないのであれば、こちらから手を出す必要もない。


「でもね。そろそろ危ないかも」


「そりゃあ、男相手に綱渡りしてりゃあ危ないだろうが」


「ちがくて。なわばりが」


「縄張り?」


「うん。縄張り」


 ぱぱ活をしている若い女の、独特のテリトリーが存在するらしい。それを出たり個別に客をとったりすると、同じ女から制裁をくらう。

 注意深く、ひとつひとつ、丁寧に、聞いた。


「元締めは誰だ?」


「もとじめ?」


「その縄張りを作っている頂点のやつだよ。女か、男か。組織か、個人か」


 そこが知りたい。


「いないよ、そんなの」


「いない?」


「うん。いない。この街は平和だし」


 平和な街。


「平和な街か」


 平和な街には、ぱぱ活なんて存在しない。そう言いたかったが、黙っていた。仕方がない。これもこれで、狐狩りの宿命。

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