第22話 闘争心②
「君は来月から九州のローカルアイドルに所属してもらう」
それはある日突然、道宮セイラが所属していたアイドルグループ“FQ31”のプロデューサーが言い出したことだった。
“FQ31”は“fortunequest”の略で、未来のために冒険しようというコンセプトのために作られたアイドルグループらしい。
(あれ? どこかで聞いたことのある名前だなあと思った君! スルーしてくれby作者より(笑))
FQ31は今年大ブレークを果たしたグループであり、全国だれもが知っている名前になっていた。そのグループの一員として所属していたセイラだったのだが、ブレークする前に地方へと飛ばされていた。
その理由はつげられることはなかった。
けれど、その理由は何となく想像がつく。
新しくメンバーをいれるためにセイラが邪魔になったのだ。ただクビというのはあまりにも残酷だったから、地方で活躍することで大きく成長していけるとかなんとか言いくるめて、セイラを追い出した。
少なくとも、彼女はそうとらえていた。
もちろん、抵抗はした。
何度も真意を尋ねた。
けれど、プロデューサーの返答は同じだった。
とにかく地方へいけというのだ。
いずれは東京へ戻してやると入っていたのだが、それが実現するはまったく思えなかった。
なによりもセイラはいなかが嫌いだ。
交通のべんも悪いから、ショッピングにいくにも数少ないバスや電車をのりついていかなければならない。
子供が少ないから、近所には同世代の友達もいないし、じいちゃんばあちゃんぐらいしか姿がみえない。
どこまでも広がる田園地帯は、本当にどいなかそのもので、テレビで見る華やかな都会への憧れは強かった。
同時にアイドルになるという夢。
彼女は中学生になるとオーディションへ応募した。
何度か通されたのだが、どうにかFQ31のオーディションに合格し、初期メンバーとしての活動を開始することになったのだ。
ようやく田舎から解放される。意気揚々と上京したのだ、なにせまだ新規のアイドルグループ。プロデューサーの方針でどーんとデビューするわけでもなく、地道な下隅から始まったものだった。最初は秋葉原での小さなスタジオでのライブから始まり、徐々に口コミやネットで話題になっていった。
それから、半年ほど月日が流れたときにようやくプロデューサーはテレビへの出演を決めたのだ。
これで有名になれると思った矢先に、田舎へと戻された。
九州の田舎でそのプロデューサーが結成させたアイドルグループ“アンデッド”
それを聞いたときはダサイと思った。そこに所蔵するなんて吐き気さえもした。
だからいといってアイドルをやめる気はない。
仕方がない。
そこからのしあがるしかないのだ。
セイラはプロデューサーにいわれるまま、彼女が生まれ育った九州でのアイドル活動をはじめた。
だけど、ただ不満しかなかった。
とにかく規模の小さなイベントばかりへの参加は、秋葉原で活動していたころとなんの代わり映えしなかったのだ。
気づけば、それを一年も続けており、プロデューサーがセイラを呼び戻すことはなかった。
そして、“アンデット”は唐津花火大会のライブステージというそれなりの大きなイベントに出場することになった。
それには正直喜んだ。
いままでの小さなイベントとは違い、それなりに多くの客が集まるのだ。
ここでファンの心をゲットしたら、東京へ戻れる可能性もあるとセイラはささやかな期待をしていた。
けれど、セイラはその会場でひとつの衝撃をうけることにある。
イベントの始まる前のリハーサル。
セイラたちグループの前には、高校生のバンドが歌うことになっていたのだ。
高校三年生。セイラと同じ年の子達。しかも結成してまもないというバンドが歌うとはどういうことなのだろうかとセイラだけでなく他のメンバーも疑問に思ったのはいうまでもない。
さてド素人がどんなものだろうかと、セイラたちは彼らのリハーサルの様子を見ていた。
正直ガタガタだった。
いかにも出来立てホヤホヤのバンドといわんばかりに、演奏はダメ。とにかくあっていないのだ。
けれど、歌だけは違っていた。
一瞬、聞き惚れるほどに美しい歌声を奏でだしたのだ。
セイラたちはだれもが唖然とした。
同時にセイラのなかで激しい闘争心があふれでてきた。
負けるわけにはいかない。
その想いが彼女のステージでのパフォーマンスによって現れたのである。
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