第14話 バンドのメンバー①
その翌日の放課後、朝矢たちは鎮西徐福高校生から十分ほど歩いたところにある施設のなかにいる。
鎮西徐福高校のある伊佐万市のほとんどが 田畑で囲まれてはいるが、市役所あたりはそれなりに栄えていた。
電車のとおる有人駅もあるし、ファミレスやデパートにアーケード、市立図書館、スーパーなどが立ち並んでいる。
そのなかで七階立てのデパートからまっすぐにいくとアーケードがあり、そのアーケードの一角にその施設がある。
その外見はレトロなものでレンガ造りの建物だっ。
話によれば明治時代に建てられており、元々銀行だったものを多目的施設として市が買い取ったらしい。
そんな市の管理である多目的施設のなかに地元で音楽活動をしている人のためにもうけられた音楽スタジオがある。
もちろん、それを使用するには市に掛け合って、金を払ってかりることになるのだが、ごく普通の高校生が払えるような額ではなかった。
それなのになぜか音楽スタジオを高校生に貸し出すに至ったのはどういうことなのか朝矢にはさっぱりわからなかった。
ただ伊恩が練習のためのスタジオを夏フェスまで借りれるようになったといっただけだ。
いったい、どんか権力が働いたのか。
それを考えているうちに一つの答えが見いだされた。
「伊恩の父親ってたしか市会議員だったよな。コネ使ったとやろう?」
どうやら龍仁も同じ事を考えたのだろう。
朝矢にこっそりとそう告げた。
たしかに考えられることだった。けれど
そんなコネが本当に通用するのかは謎だ。
どちらにしても学校以外の練習場所が確保できたわけだ。
こうなっていくと、夏フェスへの参加することは避けられそうにない。
だからといって朝矢が夏フェスを断る理由はないし、どちらかというとワクワクしている自分がいることも事実だ。
ただひとつ不満はある。
「なぜ、おまえがおるとや?」
その音楽スタジオには伊恩と龍仁のほかに愛美と桜花の姿があったからだ。
愛美はいかにも嬉しそうに朝矢へ手をふっており、桜花は愛美の行動をみながらため息を漏らしていた。
「誘われたから来たとよ♥️」
「はあ? だいが誘ったとや?」
自分が誘った覚えはない。
だとするならば、誘うとしたら伊恩しか考えられなかった。
朝矢は伊恩のほうを振りかえる。
伊恩はニヤニヤと笑いながら「おいが誘ったとばい」とあっさりと白状した。
「はあ? いつだ!? おいは知らんぞ! つうか、おいは嫌だといったよな」
朝矢が詰め寄るも、伊恩はまったく気にした様子もなく話を続けた。
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