第38話 リバイル村

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 色々とあった。何があったか、まとめていく。


 まず、村に帰った。傷だらけのロックやヘイトリッドを見て驚く人も多かったが、逆に上半身裸だけども無傷の俺と、眠っているけれども無傷のガイアさんを見て驚く人の方が多かった。なお無事にガイアさんは目覚めた。


 最初は記憶がごちゃ混ぜになっていたのか、人の名前を思い出すのすら一苦労だったが、今では普通の会話ができる。

 ただ、俺のことを「生きていたのか」とずっと心配しているのは疑問。踏み潰された感覚とか……あ、あれ? 何があったか、俺の方が困惑してきたな。


 そこから、この村に住み続けることが難しくなったということを聞いた。もう食糧も少なく、稲作もしにくい土地のため、この場で自給自足をして生活をするのは困難となってきたらしい。皆で土地を探すも、近辺はゴブリンが彷徨いており、危険が伴うことが判明した。


 皆慌てる最中、ロックとヘイトリッドが人を受け入れてくれる村を見つけた。名前はリバイル村、アミティエのユー・エンドで出会ったレン……という討伐者が暮らしていた村。そこは近くにあるセルバー村の方が便利なため、過疎化が進んでいるとのことだった。


 リバイル村の村長は俺たちを受け入れ、無事その村で暮らすこととなった。ストラート村からはとてつもなく離れているが、もうあの村に戻ることはない。心機一転、新たな土地で生活を始めようということになった。


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「俺が、この村で討伐者やっとる……ベリ・ディールや。よろしく頼むど」


 目の前にいるのは、この村で討伐者をやっている男。豪快な男だ。全身にモンスターと戦った時の傷があるらしい。髭を生やしており、歳はガイアさんくらいらしい。


 で、そのガイアさんよりもガタイが良い上、どこか安心感がある。実際、この村はモンスターに襲われることが多いらしく、独自に結界を開発したこともあるらしい。今は何故か使われていないとのこと。


 この村に元から暮らしている村人はほぼ居ない。別荘として使っている人もいるみたいだが、ここに暮らしているのはディールと、ディールの家族と村長だけみたいだ。そのため、この村には難なく馴染むことができた。男手もおり、久々に村が賑わったからというのもあるだろう。


「スカイ言うけ、あんたの力……スゲな。俺んの娘と行かねぇか?」


 彼は少々方言が強い。俺でも最初は意味が分からなかったが、今では何となく聞き取れる。

 恐らくだが、俺の力を褒めているのだろう。”娘と行かねぇか”の意味は分からなかった。何か適当に返事でもしておこうかと思ったが、彼の娘と思われる人物が目の前に現れた。


「おとう、スカイさんを困らせんといて!」


 彼女の名前はルカ・ディール。討伐者の娘だった。歳はシアンと同じ位だろう、明るい性格をもつ人。髪は赤く、後ろで結んでいる。そばかすのある彼女も方言が強いが、父親ほどではない。ちゃんと聞き取りやすい。


「おとうの言うことなんか聞かんでええて、それよりも花畑行かねんか?」


 村の近くには、花畑がある。見たこともない花が一面に咲いている。彼女は何度も花畑に行こうと誘ってくるが、いつも忙しくて断っていた。今日くらいはいいだろう。


 赤い花や、水色の花。彩りを持った花々がそこら中に見える。遠くまでそれらが拡がっているのだ。美しい、これが美しい。素晴らしいな、生命を直接感じることができる。


「スカイさんて変わっとるよね、感性が違うみたいでな」


 言い返す言葉もない。でも、ここにいると楽しい。癒しの塊が用意されているみたいに。


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 さて、今日もやることがある。情報収集だ。これまではヘイトリッドとロックがある程度の情報を持っていた。それらはこれからは通用しない。ユー・エンドも焼けた。新たな情報が必要だ。


 で、向かう先はセルバー村。ここから少しした場所に位置する大きな村。元々リバイル村で暮らしていた人もいる。人口も百は超えると聞いた、これくらいいるなら何かしら情報を持っている人もいるだろう。


 俺とヘイトリッドとロックと、案内人としてルカさんの4人で向かった。


「おーい、ルカ! 久々じゃねぇか。こっちに住みたくなったか? ま、頑固親父がいるから住めねぇか」


「いちお感謝しとっからな、あの村も守りたいねよ」


 彼女に話しかけた男性は俺たちのことを”モンスターに襲われた村の生き残り”として認識しているらしく、握手を求めた。


「あんたらも大変だな、村長でも呼ぼうか?」


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 男性に連れられ、村長の住む家に来た。

 100人は暮らす大きな村の村長の家、とてつもなく巨大な家だ。レンガで建てられた高級そうな壁に、これまた大量の絵画が並んでいる。カーペットも敷きつめられている、まるで城なのではというくらいの外見をしている。

 中には使用人といった雇われの女性もいる。


「ただいま外出中です、お待ちください」と雇われの女性に言われた。俺たちは絵画を見ながら村長の帰りを待つことにした。


 この村の歴史が絵画によって表現されている。男が建築を手伝う姿、女が子供を育てる姿。他にも古くから伝えられている神話を再現した絵画もある。

 女性が地球を包み込む姿、男性が地球を噛み砕く姿。神話には詳しくないため、どれがどの絵なのかさっぱり分からない。


 しばらくすると、村長らしき人が現れた。


「せっかくだ、部屋に案内しよう」と俺たちにそう伝えた。ルカには外で待ってもらうことにした。


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