第7話 殺戮

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 この村は、誰もが想像する村だ。畑もあり、井戸もあり、家もある。背の高い木に囲まれているからか、ほぼ空は見えない。それがまた独特な雰囲気を醸し出している。


 また前にいるゴブリン……6体はいるだろうか。ヤツらは俺に向かって雄叫びを上げている。間違いなく見つかっている。


 ここはどう逃げるべきか?

 さっきの谷底に戻ったところで、上に登る術がない。森の中に逃げたところで、追いかけられる。ヤツらの方がこの土地を理解しているだろう。


 1体くらいなら倒せなくもない……ということは覚えている。

 今の俺だ。白蛇を討伐した俺だ。少しの身体能力と自信はある。ここにいる6体だけでも討伐して……。


 後のことは考えずに、俺はゴブリンのうちの1体の首を根っこから掴んだ。ヤツの首は、俺の手に収まるほどの細さだった。


「ギヤャャ……」


 首を掴まれたゴブリンはこの世で聞いた事のないような声を上げた。聞いたこと……あるかもしれないが。


 ドサッ……


 俺はヤツの首を掴んだまま、一思いに地面に叩きつけた。さすがにこれだけでは死なないか。

 ヤツは涙を流しながら、俺を睨んでいた。モンスターも涙を流すんだな……。


「ふんっ」


 腰に差していた2本の剣を抜き、そのままヤツの両方の目に突き刺した。二度と泣けないように……。ヤツの身体は爆散し、辺り一面を血まみれにした


「ギタァァォ……」


 残りのゴブリンは悲鳴を上げているのか、そのまま村の中へ逃げていった。俺はヤツらに反撃の準備を与えないように、そのあとを追った。


 ゴーン……


 カーン……


 鐘が鳴り響いている。間違いなく、侵入者を報せる鐘だろう。この侵入者というのは、俺だ。


 いざ村の中心部に入ってみると、更に小さなゴブリンやドレスのような服を着たゴブリンがいた。どうやら、ゴブリンにも子供や女性という概念が存在していたみたいだ。

 ヤツらにも家庭があるのか。


「ギシャシャ……!」


 棍棒を持ったゴブリンたちが、俺の目の前に立ちはだかる。さすがに抵抗してくるだろう。だが、二刀流の俺の方が有利なはずだ。ヤツらが投擲武器を使わなければの話だが。


「こいよ……」


 俺の声とともに、2体ほどが飛びかかってきた。

 遅い。これなら、俺でも避けることが出来る。俺は避けつつ、片方のゴブリンの足を掴んだ。宙ぶらりんになったヤツは「放せ」と言うように暴れ出すが、俺には到底効かない。


「ふんっ!」


 俺は躊躇いなく、ヤツを地面に叩きつけた。1回では死なないから、何度でも叩きつける。ヤツの顔面はボロボロで血塗れになっていた。歯も何本も欠けている。


「……ギヤェ……!」


 仲間がやられていれば、それを助けるのが当然だろう。何体ものゴブリンが、学ばずに俺に飛びかかろうとしてきた。

 今は武器がある。剣ではない、手に持っている”ゴブリン”だ。


 飛びかかってきたゴブリンを、手に持っている武器で地面に叩きつける。上手く飛ばなかったが、コイツも使えそうだ。


 二刀流となった俺は、武器を振り回す。見かけによらず、軽い。幼児ほどの大きさだが、それにしては軽すぎる。だからこそ振り回すことが出来る。


 バシュン……


 右手に持っていたゴブリンが爆散した。爆発は伴わないため特に支障はないが、それでも他人の血が口の中に入るのは気色が悪い。自身の身体の右半分は血塗れになった。


「ちっ……」


 その腹いせに、俺は左手に持っていた武器を右手に持ち替え、目の前で立ち尽くしていたゴブリンめがけて、思いっきり打ちつけた。


 バシュン……

 バシュン……


 2つ同時に爆散した。血で前が見えないくらいに飛び散った。自身の姿が見えないが、おそらく全身が血塗れになっているだろうな……なんて考えた。血も滴るいい男……ではないか。


 その後も、手に持った武器で叩きつけ、ゴブリンの口に剣を突き刺し、ボールのように頭を蹴り、ゴブリンの頭蓋骨を踏み砕き、村の家の中にあった紐でゴブリンの首を括り、残ったゴブリンの首を撥ねたりと……色々なことをした。

自分の欲望のまま、自分の意識なしに行っていた。


 その後、村にいるゴブリンを全員潰したところで、光が見えた奥の方へ歩いた。


「出口か……?」


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 そこから……俺は今、何故か海岸にいる。日は暮れ、目の前には海が広がっている。

 ここは……ストラート村の近くではない。村の近くに海はなかったはずだ。

 川に流されて海に来たのか……身体に付着していたはずの血は1つもなく、全て流れ落ちている。それにしては濡れているわけでもなく、身体は乾ききっている。


 鏡は無いため自身の姿を視認することは出来ないが、いつも通りの俺だ。身体もしっかりしている。筋肉が前より少なくなっているように感じるが、気の所為だろうか。


「帰るよ、ホープ」


 老夫婦が俺に向かって話しかけてきた。

ホープ……? 俺の名前はスカイ……なはずだ。


 俺は無意識のまま、彼女らの後を付いて行った。何故返事をしたのだろう……。考え直しても、よく分からない。


「どうしたの、ホープ?」と話しかけられたが、俺は答えなかった。


 そして目の前にはストラート村でもアオイ村でもない村が広がっていた。ストラート村よりも大きく、村人の数も多い。


 俺が住んでいるとされている家に帰る途中、見たこともない少女が話しかけてきた。


「ホープ、明後日は遂に向こうへ行けるね!」


 向こう……とは何のことだろうか。この村の近くに特別な何かがあるのか。


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