大空さん

委員会を決めたときはHRなのだからもちろん一年二組という自分のクラスだった。

俺の名字は広沢であり、「ひ」が名前の最初の文字なので廊下側から数えて三番目の列の席だったが、彼女は大空という名字で最初の文字が「お」なので一列目になる。

やっぱり髪で顔が隠れていてよく見えない。

放課後は、ただでさえ長い六限の後に委員会の集まりがある。

思ったよりもあっという間に放課後になり委員会の集まりへ行った。

もちろん一緒に放送委員をやることになった彼女も。

これから一緒にやるのだから挨拶くらいしておこう。

「よ、よろしくね」

挨拶が久しぶりすぎてなんだか緊張してしまった。

「....!?よ、よろしく...」

まるで小動物みたいにビクッとして挨拶を返してきた。

その時、ドアが空いて委員会担当の先生がやってきた。

「それでは委員長など決めていこうと思う」

俺には縁のないことだ。と思い適当に推しの妄想をしていた。

あっという間に委員長などが決まりその日は解散となった。




ファンのために私は声を出す。

柄にもない可愛い動作だってする。

ファンのために。

私には声優がなくなったらもう何もない。

声優なんて変わりはいくらでもいる。

私の声優人生が終わりを迎えても大丈夫なように高校くらいは通っておこうと思い、私の学力でも行けそうな高校へ入学した。

次のライブの日程までは時間があり、当分の間は学校を休むことなく通うことにした。

とりあえず一番大事なのは「桜くるみ」という人物をライブ以外で消すこと。

前髪を目と被せ、顔を見てもただの陰キャだと思わせて高校生活は静かに過ごそうと思った。

「早速だが委員会を決めようと思う」

余ったのをやればいい。

そう思った。

最終的に余ったのが放送委員。

もう一人の人はパッとしない男子だった。

めんどくさいな。

そう思った。




放送委員の主な仕事は昼休み時の放送。

俺の学校は全学年五組なので三週間に一回のペースで放送の仕事がやってくる。

そしてその仕事が今日だ。

仕事の内容としては紙に書いてあることを読み、持参するCDを流すだけだ。

だが、放送委員は二人。

俺は一応CDを持っているが大空さんはどうなのだろうか。

もし持っていたとしてもどっちが流すのだろうか。

聞いてみるしかないか。

「CD持ってきた?」

「う、うん一応」

「俺も持ってきたんだけどどっちが流す?」

「.....」

いや、なんか言ってくれ。

「...んーじゃあ次は大空さんが流してくれる?俺が今日流すから」

「わ、わかった」

話すの苦手そうだな。

まぁいい。

何を流すかって?もちろん、俺の推しであるくるみん(桜くるみ)のセンター曲だ!

何を流してもいいならこれしかない!

そのCDをセットし、規定の音量より少し高めに流した。



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クラス一番の陰キャが俺の推しだった。 廣上晴 @Kage0602

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