第12話 西の平原(夜)
西の平原でモンスターを探し始めるとすぐに地面を指す下向き矢印の表示が目についた。
「これが採取ポイントだな。」
矢印に近づくとそこには一見周りの草と同じだが光の粒子を纏った草が生えていた。
「よっと……。」
それを無造作にちぎって取るとエフェクトを残して自動でインベントリに入った。
『【???(未鑑定)】を入手しました。』
「ん?未鑑定?」
インベントリを開くとそこには草のアイコンに未鑑定の表示があった。
「まさか、鑑定スキルがいるのか……。」
採取スキルの詳細を確認すると取得可能アビリティに自分が採取したもの限定で鑑定する採取物鑑定があった。
「よかった。とりあえずスキルレベルが上がったらこれを取って鑑定だな。」
ウィンドウを閉じてすぐに次の採取ポイントを探して移動を始めた。
「キュッ!」
「イテッ!」
いくつか採取ポイントを回って採取に夢中になっていた俺の後ろから突然衝撃が襲った。そのはずみで前のめりに倒れる。
慌てて振り返るとハーブラビットが貧乏ゆすりをするように後ろ足をダンッダンッと踏み鳴らしている。
「くそっ、忘れてた。」
慌ててポーチから豆鉄球を取り出して指弾で打ち出す。
「なに!?」
ハーブラビットはそれを頭で受けつつも怯まず再び体当たりを仕掛けてきた。怯むと思っていた俺は倒れたままのだったこともあり、避けられず体当たりをくらった。
「3割以上も削れた!?」
残りHPを確認すると昼間は1回の体当たりで1割程度だったのが2回の体当たりで3割以上も削られていた。
「アクティブになるだけじゃなくて攻撃力も上がるのか!」
ハーブラビットにそれ以上攻撃させないように後ろに下がりながら指弾をしっかりと当てて3発でハーブラビットは倒れた。
「HPと防御力は上がってないみたいだな。ここから先はなるべくモンスターを倒して安全確保してから採取しないと、なっ!」
背後で草を掻き分けて向かってくる音を聞いてとっさに振り返って目を見張った。
そこには3羽のハーブラビットが足を踏み鳴らしてこちらを睨みつけていた。
「3羽同時に相手にするのは無理だろ!」
俺は踵を返して走り出す。
「キュッ!!」
「ぐっ!」
すぐに背中に衝撃を受けて倒れそうになるが何とか堪えた。
「キュッ!!」
「キュッ!!」
「ぐっ!」
そのまま走ろうとしたところで続けざまに2回攻撃を受けて倒れこんだ。
「クソ……。」
反撃して何とか体勢を立て直そうと倒れたところに落ちていた石が目に入り、思わずそれを手に取った。
「うぇっ⁉」
そのまま振りかぶって投げようとしたところで石は手の中から消え、振り抜いた手からは何も飛ぶことはなく空を切った。
その隙を狙ったかのように3羽のハーブラビットのリンチにより俺はあえなく死に戻りとなった。
「はぁ~……夜のフィールドはまだ無理だったな。」
復活した噴水広場でベンチに腰を下ろして先ほどの戦闘を振り返る。
「AGIが高くて追いつかれないならともかく、いきなり背を向けて走り出したのは不味かったか。視線を切らずに、もったい無いけど投擲で牽制しながら移動するべきだったな。そういえば最後に投げそこなった石はインベントリの中か?」
致命的な隙を作ることになった石を思い出し、インベントリを開くと石のアイコンに未鑑定の表示があるスロットがあった。
「これも未鑑定か。採取物鑑定が使えるようになるまでは誰かに依頼するしかないか。商人やってるくらいだしジンなら鑑定もできるか?」
フレンドリストを確認するとジンはログアウトしていた。
「まいったな、今できることって他に何かあるか?そういえばデスペナはどうなってるんだ?」
ステータスとインベントリを確認するが特に変化はなかった。
「低レベルの間か最初数回かデスペナなしの期間があるみたいだな。それならむしろ市に戻り覚悟で特攻するのも手か。」
死に戻りする度にステータスとインベントリを確認してデスペナらしき変化がないか確認して、デスペナが発生したら特攻を中断すればいい。
「そうだな、うん。無理に戦う必要はない。今のうちにできるだけ採取して、経験値と納品でGを集めておけばいいな。」
そう決めると西の平原へ採取特攻をかけた。
「結局デスペナがないのは3回まで、4回目からデスペナ発生か。」
採取をしながら動きの遅いスライムは走って振り切り、ハーブラビットは1羽なら討伐。複数なら逃げながら採取をしつつ、追いつかれたら死に戻りを繰り返した。
デスペナは所持金の1割マイナスと次のレベルまでに必要な経験値の1割を現在の経験値からマイナス、そしてステータスの一時低下だった。現在の経験値が次のレベルまでの一割に満たない場合はおそらく経験値が0になるだけでレベルが下がることはないだろう。
「でもおかげでハーブラビットに肉が3、毛皮が4。未鑑定の草が20本。石が5個手に入ったな。ジンに鑑定してもらえるといいんだが……。」
フレンドリストを確認してもジンはまだログアウト中だった。
「仕方ない。ステータスも低下してるしデスペナ明けまで俺もログアウトして休憩するか。」
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