第2話
その後、私は貴族令嬢としての教育の他に、家督を継ぐ為の勉強もしていました。妹はどちらも嫌がりました。妹に甘い両親はそれを許容し、遊び呆けている妹を叱る事はありませんでした。
せめて貴族としての最低限のマナーくらい覚えておかないと、後で苦労するのは妹だと言うのにそんな事も分からないなんて...本当に愚かな人達です...
そんな私達姉妹もお年頃になり、それぞれ婚約者を宛がわれました。私には侯爵家の三男のお方、妹には伯爵家の嫡男のお方がお相手となりました。私が十五、妹が十四の時です。
貴族の結婚ですから政略絡みなのは否めません。それでもお相手のお方は誠実そうで好感が持てました。同じ侯爵家ということもあり家格も釣り合います。この方となら侯爵家を一緒に盛り立てていけそうです。
妹のお相手のお方も優しそうで好印象を持ちました。ご実家の伯爵家は古くからある名門で、今回の結婚を機に陞爵も噂されています。妹も気に入ったみたいです。私はようやく肩の荷が下りる思いでした。
...だから...油断していました...
妹の「病気」はまだ完治していなかったんです...
きっかけは些細な事でした。私からのお誘いを彼が多忙を理由に断って来る事が増えて来たんです。まあ付き合って三年も経てばそういう事もあるでしょう。どうせもうすぐ結婚するんだから、そうすれば嫌でも一緒に居るんだから、あまり目くじら立てる事もないと高を括っていました。
...今思えばそれが良くなかったんでしょう...
ある日、私が家を留守にしている間、彼が先触れもなく訪ねて来ていたのです。しかも何故か妹と楽しげにお茶しています。仲良さそうに寄り添いながら...彼曰く、突然訪れて私をビックリさせたかったようですが、私が留守にしていたので仕方無く妹に相手して貰ったと。
...怪しいです。
だって目が泳いでますもん。これ、今回が初めてじゃありませんね? 私のお誘いを何度も断ったのはこういう事? しかも妹が私を見る目、アレは今までに何度も見た私の物を奪う時の目です。私は戦慄しました...
今までのように私の持ち物を奪うのとは訳が違います。貴族の結婚は家と家を繋ぐものです。その約束を反故にしたらどうなるか、貴族社会からどのような目で見られるか、子供でも分かります。ましてや妹には歴とした婚約者まで居るんです。
彼を叩き出した後、私は妹を問い詰めました。婚約者が居る身でありながら人の婚約者に手を出すとはどういう了見か? 何を考えているんだ? と。すると妹は勝ち誇ったような顔でこう言ったのです。
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