第2章 TS宇宙人は拠点へ帰還する

帰国命令

シャノン達は命からがら崩壊する星から脱出し、故郷や一族を失くしてしまったアリエルという人魚族の少女を保護して母船へ帰還した。



ドゴッ!

シャノンは母船に着くなりテナ中佐にぶん殴られた。


「未熟者の弟子が…よく無事でした。

簡単な任務のだったのに、まさか敵国の部隊に遭遇するとは…よく生き残ってきましたね。褒めてあげます。」

シャノンが師匠であるテナ中佐の愛情表現でもあるぶん殴りは、日常茶飯事であったがアリエルにとっては衝撃的だったようで倒れたシャノンに駆け付け抱きしめる。


「何するのおばさん!私のシャノンちゃんを傷つけるなら許さない!」

いつからアリエルの物になったんだよと思いつつ、胸の中でおばさん呼ばわりされた上司の反応を思い浮かべ爆笑する。

確か人魚族の女性は若年期が長く、テナ中佐のように中途半端な見た目をしていると結構な年齢に見えてしまうのだろう。


「おっ・・・おばっ!?てかこの小娘は誰ですか?

もしかしてシャノンが○○〇を教えたという汚された人魚族の少女…」

汚された水の星の少女だし、色々教えたけどそこらへんは元々祖母に散々教えて貰ってたよ、てかあんたわざと間違えてるだろ。

師匠の本性は知っていたので所々素が出てるのはもう気にしていなかった。


上層部から強い言葉で説明要求があり、フリューゲルに襲われた事や、アリエル等の異世界転生者の事を包み隠さず全てを通信で話してあった。

任務で訪れていた星が消滅してしまったのだ、隠し通す事も出来ないし、何より敵国が戦争を起こそうとしていたので、アリエルには悪かったが軍人として報告せざるをおえなかったのだ。


「アリエルさん、現在とても辛い状態かもしれないですが、貴方をエクシード種としてアルシェ本国から保護、引き渡し命令が下りました。

ただアルシェ領内の星出身であり、我が国の軍人にとても協力的で、敵意も皆無という事なので、ゼリス将軍が上層部にいいようになるよう交渉中です。」

テナ中佐のこの言い方、毎回思うのだがこちらの言う通りにしないと承知しないぞ、みたいな脅しを含んでいるのだが、アリエルの現在の心情を知っている身としては今回ばかりは自重してほしい。


「よくわからないけど…私はシャノンちゃんの言う事なら従うし、一緒に居られるなら他に何もいらない」

アリエルにとって信用、頼れるのはシャノンだけであるという事がその言葉から伝わってきた。

それに今の精神状態のアリエルから離れるのはかなり心配だったので、シャノンからも一緒に居る事を懇願する。


「ええ、元々シャノンは調停任務が終わったら、お姫様を届ける為に本拠地に戻る予定でしたし、体の大きな部位欠損はアルシェの施設でなければ修復出来ないので、シャノンも戻らないといけないでしょう。

おそらく研究施設に引き渡されるまでですが、それまでは一緒にいれます。」

アリエルは異世界転生者という貴重なサンプルであり、良くて命の危険はないけど研究所の施設暮らしになるという予想であろう。



するとモッズが割り込んできた。

「まぁアリエルっちは辛い目にあったし、中佐も上にいい待遇になるよう取り計らってくれよ。

宇宙どころか一つの町からほとんど出たことのなかった純粋な子供だぞ、それが研究サンプルとして扱われるなんてあんまりだ。

何なら俺っちが保護者になってやってもいいから普通の暮らしをさせてあげられないか?」

ずっと通信や報告書越しではあったが、モッズは彼女の境遇や性格を知っているので情が沸いているようだった。


「こんな原住民にイチイチ肩入れしてたらキリがないでしょう。

エクシード種という事以外、特技のない彼女がアルシェでまともな生活が出来るとは思えません。」

アルシェは人族に厳しく、貧富の差も激しいので人族の星が丸々スラムと化している事などザラである。

アリエルのような田舎星の原住民を保護しても、知識も乏しいのでまともな職につけず、スラムに落とされて酷い人生を歩む事など頻繁にあるので、研究所暮らしの方が幸せなのかもしれない。


「テナっちさ…小さい頃はそんなじゃなかっただろ?

グランディオが心をなくしちまったら、ただの道具になっちまうぞ」

正直テナ中佐は根は優しいのだが仲間以外には結構ドライな対応をする。

昔はシャノンみたいな情にも熱いみたいなタイプだったのだが、長い軍人生活で擦れてしまった。

一方モッズは元々通常の軍人だったのだが、色々あってゼリス将軍に拾われ今の立ち位置にいた。

つまりは好き好んでこの部隊にいるので、ゼリス将軍同様に仕事に私情を挟むタイプで度々テナ中佐と険悪な雰囲気になる。


その雰囲気の中、アリエルが突然宣言する。



「私は普通の暮らしはしない…アルシェの軍人になってカクス達を倒す。

そして最後にはシャノンちゃんと結婚するつもり」


…この衝撃発言に対する口論は割愛する。




──しばらく後

テナ中佐は説得したのだがアリエルの意思は固く、駄目元でその意向をゼリス将軍に伝えに部屋を退出する。

シャノンと結婚するというのは割とどうでもいいのでノータッチだった。

それと入れ替わりで生活習慣が無茶苦茶になって、惰眠を貪っていた例のお姫様が部屋に入ってきた。


「はぁ…徹夜でアニメ見ちゃったわ、て…な…女の子が増えてる」


何も知らされていなかったアメリアは人魚族の美少女に驚く一方、アリエルはアメリアの胸部分を不思議そうにガン見して、コソコソとシャノンに囁く。


「ねぇねぇシャノンちゃん、このお姉さんおっぱい大きいね。

人魚族以外の女の子ってこんな大きいものなの?」

やはりこのレベルの大きさは人魚族にはいなかったらしく、純粋な疑問として生まれたようだ。


「まぁここまでデカいのは普通ではないな。

噂によるとグランマオの王族はエロゲ爆乳になりやすいらしい。」

シャノンはファ〇ザのサブスク会員で、エロゲは数多くプレイしているヘビーユーザーであり、レビューや大手専用ブログでコテハンでコメントもしているガチ勢だった。

実は最近ブログで煽られた際に「14歳の女の子だってえっちなんだがらエロゲしますよ、女経験のない童貞にはこの作品の良さが分からないんですね」という感じで女?を自称して、ネカマ乙、いい年したおっさんがこんなコメントしてるのか…と煽られてしまったので、意地になって女の体だと分かる写真をアップしたらエロゲサーの姫と祭り上げられてしまっていたのは内緒だ。

VPNはアルシェが依頼をして日本政府を通しているので、この晒しに担当者が頭を抱えているのは知る由もない。



「えろげ?なぁにそれ?うーん…翻訳機が壊れてるのか、時々シャノンちゃんの言葉がよく分からない時があるんだ…」


シャノンが説明しようとすると、アメリアがひっぱたいてきたが、バチンと跳ね返された。

「いったぁ…なにシールド張ってるのよ!

私グランマオのお姫様なのよ!失礼ね!

それにこんな純粋な子に変な事教えるんじゃないわよ。」

ツンデレの典型みたいな叫びうるせぇな…

王位争いで勝てないから実質アルシェに亡命している姫になんの権力があるのか?

なんで姫様がそんな事知ってるんだと思ったら、俺達がいない間にテナ中佐に日本のコンテンツを紹介されたらしい。

姫様になんて物教えてんだ、後で上にチクってやろう。


「アリエルちゃんだっけ?

このスケベに何かエッチな事されなかった?」


「えっと…シャノンちゃんとはエッチな事は少しやった…

それよりそのおっぱいの方がエッチ、シャノンちゃんがずっとチラチラ見てる」

寝間着を着ていたので露出が高く、目に入ってしまっていたのをアメリアに気づかれバッと胸元を隠した。


「こっこんな小さな子に何したのよ!具体的に教えなさい!

ちゅーしたの?舐めさせたの?いれたの?」


そもそもこの姫様には全然関係ないのだが…こういう事に興味津々だったのか、ムッツリお姫様は顔を赤らめながら詳細を聞く。


「シャノンちゃん身持ち固かったからそこまでいってない…

エッチな事は子孫を残す為の大事な行為だって人魚族の皆言ってた。

それに私シャノンちゃんより年上」

アリエルは見た目幼いので分かりにくいがシャノンより年上だ。

シャノンも体も大きく、学習装置での知識の導入や高水準の教育のせいで精神も少し大人びてはいたので勘違いしやすかった。

つまりはオネショタだったりする。


「はははっ何こいつ(笑)スケベな癖して手を出せないヘタレなの?

男性向けアニメで女の子に露骨にアプローチかけられても手を出さないED主人公いたけど嫌悪感しかなかったわ。

所詮思春期で拗らせただけのクソガキってことね!」

軍人が原住民の女に手を出すのがご法度なのわかんねぇのか?

この馬鹿乳姫様がよぉ…煽りやがって…

シャノンは掴みかかろうとしたがモッズに止められた。

そんなこんなで拠点への帰路は、アリエルはシャノンにべったりで、お姫様はギャーギャー言っている時間だった。




数日後、母船は小さな星程ある巨大なスペースコロニーに到着した。

ここはいくつかあるアルシェ軍の本拠地である。

このスペースコロニーはいくつかあるアルシェ軍の本拠地であり、アルシェ宙域に3重円を描くようにかなりの数が配置されていて、それらに守られるよう中心に創造神といわれる者達が存在しているアルシェの最高意思決定機関の施設が存在するといわれている。


シャノン達の乗った宇宙船は発着場に着き、船から一行が下船するとゼリス将軍が出迎えてくれた。


「おお久しぶりだねアメリアちゃん。

こんなに大きくなって、色々辛い目にあったね…」

そのセリフと共にアメリアはゼリスに抱き着き、ゼリスも抱きしめる。

この姫様は相当将軍の事を信頼しているんだなと、航路をともにしていた者達は皆思った。

暫くするとゼリスは抱き締めるのを辞め、シャノン達の方を真面目な顔をして見る。


「ウィーバー大尉らも想定外の任務になってしまったが、そんな中柔軟に対応し、よくやってくれた。

水の星消失と周辺星への被害に関して、君たちに何も落ち度がないのは上層部の総意だから安心してくれたまえ。

ただアルシェ評議会の方々が直接事件の詳細を聞かせてくれとの命令があった。」

周囲の生物の住んでいた星にまで被害が及んでいる結構な事件だったので、シャノン達現場の責任も少なからず追及されると思っていたのだが、お咎め自体はないらしい。

アルシェ評議会というのは、今まで散々話に出てきている、創造神といわれているアルシェの最高意思決定機関の事であり、シャノンのような下っ端など直接話す機会が本来は皆無レベルの高みの存在である。


「ついて早々申し訳ないが、これから私とシャノン・ウィーバー大尉…

それからエクシード種の人魚族の彼女の3人で会議に出席せよという命令が下ったので急ぎ準備してくれたまえ」


すると一同全員が驚き、テナ中佐が皆が思っている事を代弁する。

「アリエルさんもですか…彼女のような特殊な能力を持っているだけの一般人が評議会に呼ばれるというのは、どのような事情なのでしょうか?

シャノンだけいれば事件の詳細説明も十分だと思いますが…」


ゼリス将軍は怪訝な顔をして答える。

「おそらく君たちが思っているより、彼女が異世界転生者の、それも七騎士と呼ばれる存在だというのが重要なのだろう。

評議会の方々の考えや知識は我々のような生命体の理解の及ばないレベルなのだからな」

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TS宇宙人は異世界転生者と出会い銀河を救う ヤマグチ @TaroYama_sankaku

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