星の脱出
「時間切れだぜおめぇら!この星ごと消えちまえ!」
宇宙船にカクス達が即座に乗り込むと捨て台詞らしきものを吐いて宇宙船たちはこの星から去っていく。
おそらくモッズと戦闘していた船も撤退しただろう。
ただ最後の捨て台詞が引っ掛かる。
「さすがに撤退したようだが、深追いは厳禁だな。アリエル無事か?」
話し掛けるとアリエルはハッと何かに気付き街の方へ走っていく。
そういえば街が燃やされて、死傷者が多数いたのを思いだし、一緒に向かう。
なぜか先程から地震が一定間隔で起こっているのだが今はそんな事を気に掛けている場合ではなかった。
「おばーちゃん!大丈夫!?」
アリエルは街中に大火傷を負ってぐったりしていたマリーナを発見して駆け寄る。
シャノンが治療キットを使用しようとするとそれを老婆は制止する。
「わしに使うなら他の者を治してやっとくれ。
こんな老いぼれ、もう一族には必要ないからの…」
消え入りそうな声で老婆は囁く、もう助りそうにないのは一見すれば分かってしまった。
「おばあちゃん死んじゃやだ!私にはおばあちゃんしかいないの!やだ!やだ!!」
いつもの様子からは考えられないくらいアリエルは泣きわめく。
「アリエルはいつもお利口で不満など口にした事はなかったが…
初めてわがままを言ってくれたな…叶えてあげられなくてすまん…
シャノン殿…この子を頼む…」
暫く後、老婆は息絶えてしまった。
アリエルがマリーナの亡骸の前で号泣している傍ら、突如慌てた様子のモッズから通信が入る。
「おいおいあいつらの宇宙船が去ったと思ったら星の核が臨界に達してる反応がしてるぞ。
あいつら大昔に禁忌とされた惑星破壊兵器を使いやがったな!
つかもう時間がねぇ、早く船に戻って宙域から脱出しないとヤバイぞ!」
先程から続いている地震はどんどん大きくなっており、モッズの言った事が現実味を帯びてくる。
シャノンは焦り、瞬時に考えを巡らせる。
ワープを使えば成層圏のマーカーのついている宇宙船までは飛べる。
ただ一気に飛べるのは二人までだ、しかもこれから生存者を探している時間なぞ皆無…残酷な選択をしなければならない。
「すまんアリエル、お前しか助けられなさそうだ、理解してくれ…」
アリエルを突然抱き締めると、宇宙船内のマーカーに二人はワープする。
突然の展開にアリエルは困惑しながら
「ここどこ!?皆を早く助けなきゃ!何したのシャノンちゃ…」
問いかけてる途中で体に大きな重力が掛かる。
「戻ったな、てか爆発寸前の重力収縮が起きてやがる!
スピード出すから歯ぁ食いしばれ!」
操縦席から声がした後、宇宙船全体がうねりを上げ速度が上がっていく。
シャノンがアリエルを抱きしめ席に座ると物凄い重力が掛かったあと、宇宙船の背後からものすごい衝撃破が押し寄せるが離脱が成功したのかやがて収まっていく。
しばらく後、アリエルが宇宙船の背後の窓から水の惑星があったであろう、宇宙空間に漂う岩の塊たちを呆然として眺める。
「そんな…私の故郷が…人魚族の皆が…」
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