第1章 TS宇宙人は異世界転生者と出会う
調停任務
シャノンとモッズは大きなモニターのある部屋にいた。
傍らには軍服を着た女上司が佇んでいる。
モニターには沢山の勲章ついた軍服を着た美形の中年男性が写し出されていた。
「アメリア王女の救出ご苦労であった。
現場指揮官のテナ中佐。
そして直接救出に赴いてくれた、
シャノン・ウィーバー大尉。
モッズ・バークァー少佐。
君たちの迅速な行動があったからこそ王女は無傷で済んだのだ、よくやった。」
この人物はシャノン達の部隊の直接の総司令官で名前はゼリス将軍。
彼は若い頃に日本へ留学経験があり、部隊の施設所々に日本様式を採用している。
その影響で部下達も日本文化に詳しくなるらしい。
彼はグランディオの将軍の中でもかなりの穏健派として知られ、彼の部下達は暗殺や制圧等の汚い任務は課せられない清廉潔白な部隊として知られる。
ゼリスは昔からグランマオ星の王族とは交流があり、今回の王女保護も彼が上層部に利用価値ありと理屈を捏ねて決行したものであった。
「アメリア王女は小さな頃から知っていてな…あの仲の良かった兄弟達に命を狙われていると知って個人の感情で動いてしまった。
この性格をなんとかしたいのだが、どうにもならん。」
彼はとても有能だがとてつもなく情に流されるタイプであった。
その度に部下達は巻き込まれるのだが、それを承知してついて来ているので今更だ。
むしろこの人柄のおかげで人望があるのだ。
「王女はとりあえず本国に連れてきて貰おう。
とその前に君たちの現在地の近くの星でアルシェ軍に助けを求める連絡があってな。
二人にはその任務に行って貰いたい。」
「こんな急に別の任務ですか?」
詳細はこうだった。
近くには水の惑星といわれる星があり、かつては観光地として発展していたそうだ。
この星の代表的な知的生命体としては、人魚族というのが存在し自然と共に暮らしていたが、ある日悪意ある何者かによって人為的な水質汚染がなされ、観光客は途絶え、人魚族の住める場所はほとんどなくなってしまったらしい。
現在彼らはとりあえず生き残ってはいるが、色々あって同じ種族同士で分裂し争いあってしまい、それがかなり深刻的なレベルになってしまったようだ。
それでアルシェに仲裁に入って貰いたいと依頼がきたというわけだ。
もともと温厚な種族で知性も高く、そもそも星が住めない環境になってしまったのが原因なので、シャノン達が事情を直接聞きにいき、仲裁できないようであればアルシェが他の星に移住させるとのこと。
ゼリス将軍としては他星に移住させる前提で動いているらしく、要は現状を調査し報告するだけの簡単な任務であった。
シャノンはまだ14歳、バディを組んでいるモッズがいるとはいえ半人前扱いだ。
しかもゼリス将軍の部隊というのも相まって比較的簡単な任務しか与えられないようであった。
「了解しました。では行って参ります。」
シャノンは内心すぐに終わる簡単な任務だろうと思いながら、そう言って部屋を後にし、自分達の専用機に乗りこんで水の星へ向かった。
これがすべての始まりとなるとも知らずに───
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