お風呂イベント─序─

とある銀河の宇宙ステーション内部で怒号が響く。

「なんなんですかあの少年!私をいやらしい目で見てきて、なんであんなのを救出に寄越したんですか?」

すると怒鳴られていた、それなりに偉い立場であろう軍服を着た銀髪の女性が答える。

「そうは言ってもシャノンは私の愛弟子で部下の中でもかなり有能です。

そもそも軍特殊部隊のグランディオが救出に行っただけでも特別扱いですよ。

それにあいつは思春期でちょっとスケベなだけです。」


その言葉を聞いたお姫様がプリプリしながら叫ぶ。

「私はグランマオ星第三王女のアメリア=ミテオスなのよ!

なんでアルシェはこんな扱いするのよ」


おそらくこの少女は王族という立場がゆえ今まで甘やかされて生きてきたという事を女性は察する事が出来た。

だからこそ彼女に現実を知らしめる為に本当の事を言う。

「アメリア様を救助したのは我々の上層部が無垢なあなたを都合よく利用する為です。

普通であれば田舎星の第三王女なぞにこんな特別扱いはしません。

貴方を王にしてグランマオ星を支配する為の傀儡にしたいんですよ。」


アルシェというのは銀河の特定の国というわけではなく、いくつかの星が共同で作った組織及び宇宙域、連合国の総称である。

軍服の女性はそのアルシェ軍所属という事だ。

アルシェの中でもグランマオという星は特別特区という扱いだったが、最近先王がなくなってしまい現在子供達で王権争いの真っ只中である。


「今回貴方が乗っていた宇宙船が襲われ、未開の星に不時着する羽目になったのもおそらく別の王候補の仕業でしょう。

私達は味方のいない貴方の為に、追い討ちを掛けられないよう裏で牽制もしてたんです。」

つまりは私達が助けなければお前は死ぬぞ、という事だった。


女性が事実を羅列した後、アメリアは悲しい顔をして黙りこんでしまった。

しばらくの静寂の後、女性は気まずく口を開く。

「…なんにせよ貴方の身は我々が守ります。

そういえばこの船には大浴場があるのですが、よろしければそこでさっぱりとしてくるのは如何でしょうか?」




アメリアはお言葉に甘えて大浴場を訪れた。

なんでもここは上層部の人が昔隠れて留学していた、未開の星の日本という国の伝統的なお風呂らしい。

汚れたドレスを脱ぎ、艶かしい肢体を露にする。

彼女は足先からゆっくりとお湯に浸かっていく。

檜風呂とか言ったか…木の匂いがとても気分を落ち着けてくれる。

落ち込んでいた気分が少し晴れた気がした。


「うわビックリした、いつの間に…てエロい体のお姉さんじゃん」


湯気の中から突如声がしてそちらの方を凝視する。

そこにいたのは、少し癖っ毛気味の銀髪セミロング、将来はグラマラスになるであろう発展途上の体のボーイッシュな美少女であった。


アメリアは微笑み

「エロいって…君も近い将来そうなると思うよ。憧れてるからってあんまり見ないでね、恥ずかしいから」


まぁ大浴場だし他の人も入ってるよね…と思いながらアメリアは距離を取る為に警戒もせず立ち上がり、少女に丸出しのお尻を向ける。

するとブーという音を出して少女が鼻血を出していた。


「は?」


おかしい。そういえばこの船は今ほとんど人が出払っているといってたのに、この子はなんだ?なんでこんな美少女にあるまじき下品な顔をしている?



アメリアは数年前、グランマオの王宮に訪れていたアルシェの偉い人が話しているのを盗み聞きしたある事を思い出した。

今のグランディオは男女二つの肉体を持っているという話を。

そこでもしやと思い確かめてみる。


「もしかして貴方シャノンとかいう少年と同一人物?」


「え…うん…そうだけど。なんで分かったの?」


宇宙ステーション内部で悲鳴が鳴り響いた。

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