第18話 寝坊
「..さま!...さい!!」
暗闇の中、誰かの声が聞こえた。
「蒼様!起きてください!!」
今度ははっきりと聞こえるその声は透き通るようなきれいな声だった。
そう、エインのような...エイン!?
蒼は目を開けて勢いよく起き上がる。
「起きてください!!蒼様!」
「え、エイン!?おはよう、なんでそんなに慌ててるんだ?」
蒼ははじめてエインの怒鳴り声を聞いて動揺を隠せないでいる。
エインを見ると彼女も今起きたばかりのようで髪はぼさぼさのままだった。
「おはようございます、蒼様。起きてすぐに申し訳ないのですが落ち着いて聞いてください。」
「あ、はい。」
エインは一度落ち着くと乱れた髪を手櫛でといて蒼の方に向かってベッドの上で正座をする。蒼もすぐにエインをまねてベッドの上で正座をした。
「現在の時刻は8時10分です。」
「ふむ...なにぃぃぃぃ!?」
蒼の寝ぼけた脳はエインの口から放たれた一つの事実により一瞬で覚醒した。
「球技大会まであと20分しかないじゃねえか!」
寝坊という残酷な事実により。
「ぜえ、はあ。エイン急ぐぞ!」
「はあはあ、はい蒼様!」
蒼とエインは現在時刻8時15分、幸い体操服で登校できるということもあり一瞬で支度をして今まさに学校に向け爆走中である。
二人とも球技大会に体力を温存しようなんて知恵が働く余地もないほどあせっていた。
寝坊の原因は昨日蒼とエインと魁人とヒナの4人で2対2のバスケ勝負を永遠にしていたことだと思う。
エインも珍しく蒼以外の前で笑っていたし、よほど楽しかったのだろう。
「蒼様!ペース落ちてます!」
「うぉ!すまん、もうひと踏ん張り頑張るぞ!」
蒼が昨日のエインを思い出して一人にやにやしているとエインに叱られてしまった。
それから二人は気を取り直し、学校に向かって汗だくになりながら走っていった。
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