第21話
それからというもの、時間はあっという間に過ぎていった。
毎日同じように授業を受けて、集団生活をしての繰り返し。
違うのは学校にいる教師の数が見るからに減ったと感じる事と、健康診断が増えた事くらいだろうか。
「これが卒業までで最後の健康診断みたいだよ」
「そっか。もうそんな時期なんだね」
白いノースリーブのワンピースに裸足。
これが健康診断の時の恰好で、ひざ下まであるワンピースはいつもの制服とは違い薄くて肌触りも滑らかだ。
一列に並んだ私たちは皆それを身にまとい、自分の番を雑談しながら待っている。
同じような白い肌、艶やかな黒髪、整った顔が並ぶとまるで人形の工場のようだと感じた。
そう感じるのはきっと私くらいなのだろう。
他のクラスメイトはいつも通りに談笑を続けている。
「あっという間に卒業になっちゃうね。私、瑞樹ちゃんと別れるって考えたらもう泣きそうだよ」
牡丹が頬に両手を当てて悲しそうな声を出すものだから笑いがこぼれてしまう。
「この学校修学旅行とかもなかったし、思い返せば写真も卒業アルバム用しか残らないかもね」
「いい学校生活だったけど、そこは心残りだね」
あと数か月で、全てが変わる。
そう思うとなんだか怖さと、寂しさと、不安が混ざったような感情が芽生えた。
私の番が呼ばれ、部屋に入る。
いくつかの機械が私の体に付けられて、静かな部屋に電子音が響く。
私は、ゆっくりと目を閉じた。
その日の夜、私は持っていたルーズリーフを久しぶりに開いた。
「花束から抜けだした貴女へ。水に入ったアネモネの中に、私の全てを残す…」
この一枚からすべてが動き始めたのだ。
「私たちは花束。贈与品って事だったのね」
机の中からお風呂場で見つけた手紙を取り出す。
私はノートを破りその続きを書き足した。
そして綺麗にたたんで袋に入れて、あの時と同じようにテープでぐるぐる巻きにする。
(きっとこうやって繋がっていくんだろう)
それをぐっと握りしめて私は風呂場へと向かった。
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