第20話

テスト終了のチャイムが鳴る。

皆は出席番号順に教壇へとノートを置きに行き、私も同様に置いた後、17冊のノートをもって約束通り先生の元へ向かった。


「ありがとう。そこに置いてくれる?」

「はい」

「ついでに次の授業で使うプリントを渡すからついてきて」

職員室の奥、小さな小部屋に呼び出される。

部屋の中にはプリンターがあり、先生は1枚のプリントをコピーし始めた。


「テストが終わって、間もなく2学期が始まるわけだけど…ここの教師はまたあなたに初めて会った時のように外にスカウトしに行くわ。だから2学期以降、担任の先生…つまり私があなた達の個人データを管理するんだけど、これ、見て?」

印刷されたプリントの中から1枚だけ取った紙を見ると、私の顔写真と細かな内容が書いてあった。

「私の、成績表みたいなものですか?」

内容は、成績や得意科目だけでなく、受けた美学の内容、性格、健康診断の結果など細かく記されていた。

「今までは、各教師が内容ごとに管理していたんだけど、ここからは全て一括私の管理。つまり?」

「どこかの内容をすり替えるんですか?」

「ご名答」

ゴウンゴウンと印刷機が音を鳴らす。

「でも、それはギリギリになってから私がやる。」

「うまく行かなかったら?」

「ふふ、あなたは若いお嫁さんになるだけよ」

「最悪」

本当にこの作戦、うまく行くのか不安になる。

ここの先生になった所で校長なんかなれるのか、そして校長になった所でこの学校を変えられるのかも怪しい。

「私、先生を信じていいんですかねぇ?」

「乗りかかった船じゃない」

「沈みそうな船ですね」

「貴女が思っているより、この船には仲間がいるのよ」

「え?」

「だから、大丈夫。」

はい、とプリントを手渡される。

先ほど出来上がったばかりのプリントは温かかった。

部屋から出て私は職員室を見渡す。数人の先生と目が合った。

もしかして怪しまれてるんじゃないか、とプリントを持つ手に力が入った時、先生たちが力強い目でこちらを見てうなずくのが見えた。

「あっ…」

「ね?だから、安心して」

勿論全員ではない。でも、先生たちは私が入学するずっと前からこの計画をしているのかもしれない。

学生の中から同志を引き抜いては、いつかこの学校を変えるのだと虎視眈々と狙っているのだ。

(これは、学校と私たちの百年戦争だな)

私もその一因に来年にはなっているのかと少し客観的に考えた。

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