第19話
一つ、卒業まで外に出る事は許されない
一つ、ただし、特別な事情がある時はこの限りではない
久しぶりのお母さんの声は私を安心させた。
『少し声が疲れているように感じるわ』
「大丈夫!ちょっと3年生になって勉強が難しくなっただけ」
香澄ちゃんが罰則部屋に行ってから、どこで誰が何を聞いているのかわからなくて中々頻繁に電話をすることができなかったが、鬼灯さんの事がわかってやっと安心して電話をすることができた。
かといって、全てを知った今、逆に余計なことを言わないか心配にはなるのだが。
『あなたがちゃんとした教育を受けられるのも、あの時学校の先生が来てくれたおかげだね、本当に感謝だねぇ』
神様がきちんと瑞樹の行いを見てくれていたんだね、なんていう母の言葉に苦笑しか出ない。
もし神様がいるのであればなぜ私にしたのか。そもそも神様がいるのであればこの学校を見逃すのは罪なのでは?なんて思ってしまう。
「まぁ、安定した衣食住には感謝してるよ」
『瑞樹、あんまり無理しなくていいんだからね』
「どういう事?」
『段々学校から送られてくる金額が大きくなっていて、瑞樹が勉強を頑張っている事が十分伝わったわ。でもその頃から中々連絡も取れなくなって…心配してたのよ』
勉強ではない事で大変だったなんて勿論言えるわけもなく、私はただお母さんの話を聞くことに徹した。
『勉強も大変だろうけど、クラスの子達とも仲良くして、沢山思い出を作るんだよ。最初で最後の高校生活なんだからね』
「うん、ありがとう」
心配そうなお母さんの声に申し訳なくなる。
もしかしたら自分は卒業後にすぐ誰かに嫁ぐかもしれないし、この学校のために働く羽目になるかもしれないのだ。
「ねぇ、もし、私が誰かを助けるために私を犠牲にしたらお母さんはどう思う?」
『え?』
お母さんは少し悩んだ後、
『あなたは、お父さんに似て正義感が強い所があるから』
とだけ言った。
『瑞樹がそれを選んだのなら、お母さんだけは誰が何を言おうとも、瑞樹を応援するよ』
「…ありがとう」
電話を切ると、辺りは静寂に包まれた。
目を閉じてしばらくして勢いよく歩き出す。
(よしっ)
どんな未来が待っていても、自信をもって帰れるようにしようと私は誓った。
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