第16話
一つ、健康診断は必ず受ける事
一つ、体の変化で気になることがあればすぐに相談する事
帰り道、無言の私たちは同じ道をたどり寮へと向かっていた。
「そういえば…。健康診断が多い事と、生理痛で倒れた人が検査を受けた事、何か関係あるんですか?」
「私たちは、知識と容姿を見られてはいるけれど、その他に女しかできない事、あるでしょ?」
「…子ども?」
「生理痛や、体調不良が多い子はそれがマイナス評価に繋がるから」
つまり私たちは世継ぎを生むことができる前提も含まれているのだ。
「最低」
「今に始まった事じゃないわよ」
「先生は、なんで不合格になったの?」
「私は…そうね。自分に嘘が付けなかったのよ」
嘘って何?と聞きたかったが、もう寮の前へとついてしまった。
「瑞樹さん、あなたすべてを知ってこれからどうするの?」
「…わかりません」
知らない誰かのお嫁さんなんかなりたくない。
でも、自分にかかった費用を返せる自信もない。
女優を目指すにも、自分には選択権が無いし、先生は企業がくるのはまれだど言っていた。希望は薄いだろう。
「どれを選んでも地獄とは」
「…そうね。じゃぁ、私から提案」
「提案、ですか?」
「あなた、卒業テスト落ちなさい」
「なっ!!借金地獄にさせる気ですか…」
「まさか。この学園で働くのよ」
「わざと落ちるなんてできるんですか?だって卒業テストはオークションみたいなものなんですよね?」
先生は私に考えがあるからそこは心配しないでいい、と私をなだめた後、真剣な顔で私を見つめた。
「来年は私が3年生を受け持つタイミング。その後のチャンスはいつ来るかわからないわ。そして、あなたみたいにこの学校に不信感を抱いて行動できる生徒が運よく重なるとなると…もっと確率は低い」
先生は私の方を向いてにっこりとほほ笑む。
「タダでここまで教えてあげたんだから、協力しなさい」
あぁ、この人もまたこの学校に犯されている。どうしてこの学校に関わる人は脅しのようになるのか。
「先生の目的は何ですか?」
「私はね、少しでもこの学校の生徒を救いたいって思っているのよ」
「現在その生徒を脅してますが?」
「ふふ、八方ふさがりのあなたにとっても悪い話じゃないわよ」
先生は、少し間を開けた後にこう言った。
「この学校に従順なふりをして校長までのし上がるの。そして学校を変えるわ。そのための仲間が欲しい。少しでも確率を上げるために」
何か壮大なことに巻き込まれてしまったのかもしれない、と感じた時にはもう遅い。
私には最初から拒否権なんて無かったようだ。
(あぁ、考える事が多すぎて…)
もうすぐ3年生になる。最後の戦いはここからかのように、先生は私の背中をそっと押した。
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