第13話
一つ、教師は生徒を見捨てずに育てる事
一つ、教師は生徒を常に導く存在である事
『見なかったことにしてあげる、早く寮に戻りなさい』
そう鬼灯さんの耳元でささやくと、先生は彼女を立たせてそっと背中を押した。
鬼灯さんは、一度私の方を申し訳なさそうに見た後部屋から居なくなった。
「さて、あなたはどうしようかしら」
「私も退学にさせますか?」
強気な発言に聞こえるかもしれないが、私が許しを請いたところで先生が見逃してくれる保証はない。
話がどこから聞かれていたかわからないため知らないふりをするのもおかしい。
(行くところまで行くしかない)
「私にそんな権限ないわよ」
「え?」
「一教師が簡単に生徒を退学にできるわけないでしょ」
「じゃぁ…」
「そうね…。まず、あなたがどこまで知っているのか教えてくれる?」
罠だろうか。先生に対してははっきり言っていい印象は無い。
先生は自分から聞いてきたのに、興味がなさそうに本棚に寄りかかって腕を組んだ。
「先生が、ここの生徒だったって事」
「あぁ、そうね」
「卒業テストを合格すると、誰かに嫁ぐ事になる事」
「それも半分正解。続けて」
「…卒業できなければ、ここでかかっている学費や生活費の支払いが待っている事」
「んー、ちょっと違うわね。卒業テストに受かっても支払いは必要よ」
髪の毛の先を手で遊びながら先生は私の方を見た。
「知りたい?全部」
「…はい」
「もちろん、タダじゃ教えれないけど」
「お金ですか?」
「未成年からお金を奪うほど落ちぶれちゃいないわよ。そうね…今週の金曜日の夜。迎えに行くわ」
今日はもう遅いから早く寮に戻りなさい、と言い残して先生は入口の方へと歩いていく。
「先生!」
「なに?」
「先生は…味方ですか…?」
「どうかしらね?あなたにとってどっちなのか私にはわからないわ」
やっぱりこの先生の事を好きになれないかもしれない。表情が読めないのだ。
(今週の金曜日…しかも夜。私は寮から出られないのに)
迎えに行くとはどういう事だろうか。
今日は色々なことがあって疲れた。でも学校の真実に近づいた気がして、少しだけ高揚したこの気持ちが私の行動力になったのは言うまでもない。
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