第9話

一つ、この学校で行ったこと、学んだことは公言してはならない

一つ、卒業テストの内容を漏らしてはならない


風呂場で手に掴んだそれは、何十にもテープで巻かれており、その下は透明なビニールにきちんと包まれていた。

その為中に入っていた紙は濡れずにすんでいた。

数枚程度の紙は何重にも折られていたが丁寧に広げていく。

私はゆっくりとそこに書かれた文を読み始めた


これを見つけたあなたへ。

これを見つけた人が、私と同じようにこの学校がおかしいと感じている人であってほしい。

私がおかしいと感じたことをここにメモする。

私のクラスは17人のクラス。上級生達も下級生達のクラスも皆17人だった。

この絶対の数字が何を表しているのかわからないけど、もしかしたら管理がしやすいのかもしれない。


〇月〇日 3年生の一人が卒業テストに落ちたらしい。

テストの結果が分かったその日に彼女は面談で呼び出されたと噂があった。部屋の前を通り過ぎた子の話によると、「そんなのかえせない」と叫んでいたらしい。


〇月〇日 授業が厳しくなった。マナーだけでなく姿勢や休み時間の言葉遣いまで先生に注意を受ける。なにか焦っているように感じた。


〇月〇日 生理痛が酷く倒れてしまった。こんな事初めてだ。

意識が戻ると先生が血相を変えて私の体を調べるといった。私は検査を何回も受ける羽目になった。先生がお医者さんに子どもが産める体かと確認しているのが腹立たしかった。


私たちは食生活も行動も制限されている。

しかも2年生からは“美学”が始まった。見た目と中身を管理されているのだろうか。


△月△日 3年生になるとやっと普通の教科の授業が入り始めた。

“美学”が終わっている人も増えてきて自己学習の時間が多くなった。

クラスを見渡すと同じような顔をした女の子が多く、なんだか気持ち悪ささえ感じた。私も傍から見れば同じ顔に見えるのだろうか。


△月△日 卒業テストの内容が発表された。部屋に入って指示の通り動くだけのようだ。


卒業テストを受ける前日、先生が私たちに「必ず、必ず受かってほしい」と言ってきた。

今まで厳しかった先生がなぜそんなことを言うのかわからないが、受かりたくない生徒なんているはずないだろう。


手紙はここから急に乱雑に書かれている。

急いで書いたのだろうか、文字もひらがなが多くなって少し読みにくい。


△月△日 私はテストに合格した。時間が無いため急いでこれをかく。

合格の紙と一緒に男の人の写真が配られた。

先生からこの人は卒業後の夫だといわれた

いみがわからない、男はおじいちゃんのように見える

他の子たちも同じようにくばられた

そしてこの3年間でかかった私のひようの紙も。けっこんしないのであればこのお金は全てしはらえといわれた。こんなばくだいなお金を返せるはずがない。


この手紙を読んでいるあなた、私たちはこの学校につごうのいい女として育てあげられている。気を付けて。


そういえば、テストに受からなかったあの先ぱいはどうなったのだろうか

たしかなまえは、



「そんな、この名前って」

私は手の力が抜けていくのに気が付かず、持っていた紙は床に散らばって行く。

なんていうことだ。あの人はここの学校の生徒だったんだ。

「先生…」

手紙の最後に書かれた名前は、担任の先生と同じだった。








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