第9話 千鳥橋

 中学生のとき、千鳥橋の近くの私立女子校で模擬試験があった。大阪府内の中学生を対象とした試験なので、何カ所か会場があった。歌島中学の先生は、この女子高を受験場に選んだ。津田は、福地君と一緒に十三間道路のバス停から市バスに乗っていった。

 千鳥橋には、子供の頃、京治に連れられて何回か行ったことがあるのを思い出した。京治が空海に関心があり、千鳥橋から伝法まで歩いて行ったのも一回だけではない。けれども千鳥橋の町も何回か歩いた。その理由を京治は言わなかったし、津田には分らなかった。

 だけど、最近は行ったことがないので、津田には千鳥橋が懐かしい。 

 

 模擬試験の結果が送られて来た。点数が一〇〇位までの生徒の名前と中学校名を書いた表が入っている。津田は、十七位だ。津田はホッとして、うれしかった。新A中学の生徒が四十七人出ている。

 ラインオーバーした連中のことを思い出した。松本医院の息子の名前がない。川西路子もない。  


 北川美代子さんのことを思い出した。北川さんは歌島中学生である。北川さんの名前もない。北川さんの家は、富永さんの家を鼻川神社の方に歩いていったところにある非常に大きな家である。家の敷地に中津川の左岸の堤防の一部が保存されている。右岸の一部は野里住吉神社の境内に保存されている。

 歌島中学の英語暗唱大会があったとき優勝したのが北川さんである。津田は四位だった。津田は、北川さんの家からもう少し鼻川神社の方に行った家で主婦が英語を教えている小さな塾があって習いに行っている。歌島中学の生徒を学年別に教えている。学校の教科書が理解できるように教えてくれる。その先生は、神戸にある女子大学卒だということである。津田は、ここで習うことによって、学校の教科書をちゃんと理解できていると思う。

 だけど、暗唱大会があったとき、自分は英語で会話することはできないと思った。

自分の英語は大阪弁だと思うのである。津田のコロンブス・ディスカバード・アメリカは、大阪弁だ。

 北川さんは、ペラペラッと外国人と話せるだろうと感じた。誰か外国人が家に教えに来ているのではないだろうか。 


 ラインオーバーした生徒たちは、どういうように勉強しているのだろうか。      


    

    


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