第7話 ソロバン学校

 市営住宅にソロバン学校がある。市営住宅には大きい家と小さい家がある。川西路子さんの家が近所にあるが、小さい家だ。ソロバン学校は大きい家だ。

 津田は、小学校三年生のときに入塾した。川西さんが来ているかなと思ったが来ていなかった。もし川西さんが来ていたら、松本医院の息子も来ているだろうと想像したのである。

 野田先生が教えている。小柄な、イケメンの、やさしい先生である。


 野田先生と一緒に香蓑小学校にソロバンの試合に行った。自転車に乗って行った。幼稚園に近いので香蓑小学校は知っていたが、行くのは初めてだった。

 試合が終わって、帰り道、ウドン屋で天ぷらウドンをおごってもらった。


 ソロバン学校には待合室があって、わりとたくさんの本が置いてある。津田は、早いめに行って本を読む。小学生、中学生に役立つ本が置いてあるのだ。野田先生の考えだろう。

 あるとき、野田先生は、そこの川西さんが印刷会社に勤めているので、その関係で本屋さんに持って来てもらってるんだ、川西路子さんのお父さんだ、川西さんは、ここには来ていないけどな。川西さんは、線路の向こうのソロバン学校に行ってるらしいわ、と言った。新Y中学校に行くのと違うやろか、とも言った。

 そうだったのか。そういえば黒田香代子さんもここでは見ないな。


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