第2話 三角公園

 数学の担任は、江村章一先生である。イケメンで、体格が良く、柔道部の顧問である。

 津田は、中学生になってから、ずっと、江村先生に数学を習っている。現在は三年目だ。

 江村先生は、授業のとき、説明や解答をよく間違う。間違いに気付いている生徒が多数いる。気付いているけど黙って聞き流している。いちいち指摘するほどのことではないと思っている。

 けれども、間違いを積極的に指摘し、攻撃する生徒が存在する。稲田である。もっとも、津田は同じクラスになったことがないので、稲田の実際の攻撃場面を見たことがない。見たことがないが知っている。これを公知の事実と言うと佐和が分析して、喋りまくっている。

江村先生が、間違いを指摘されたときに言うセリフの一つは、「弘法も筆の誤り」である。このセリフに対して稲田は、「誤ってばっかりやんけ」と攻撃するらしい。

 江村先生の別のセリフは、「猿も木から落ちる」である。これに対しては、稲田は、「落ちてばっかりやんけ」と攻撃するらしい。


 津田の友達の黒田君が、三角公園の少し南に住んでいるので、二人で行ったことがあるが、そのとき、稲田を見た。学校で見るのと同じく、シャープな感じだ。


 稲田は、津田と同じA高校に進学し、そして国立M大学に入学した。その後、津田とはまったく連絡がなくなっていた。

 稲田は、国立D大学の理科系の教授になっていたが、三〇歳代で脳内出血で死亡したそうだ。




       

 


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