第三部 プロローグ

 南高は、この辺りでは一番偏差値の高い高校である。結城比奈はあまり学力は高くなかったけれど、最終的に合格することができた。並大抵の努力ではなかったと思う。一方で私のほうは、とりわけて苦労せずに同じ高校に入ることができた。


 エレベーター式で上がっていく中学校とは違い、手続きやら準備やらが大変で、比奈に合格を報告する機会が今のところ取れていない。思えば、もう丸一年、彼女とまともに話していないのだ。小学校から中学校に上がるときは通学路が一緒だったけれど、高校は逆の方角にあるし、彼女も彼女できっとばたばたしていたことだろう。


 早く、早く、早く、会いたい。会って色々話したい。会って、その柔らかい肌に触れたい。

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