第25話 報告会

学期末において新1年生、総勢1,250人の中で見事第五位の総合成績(基礎学力、武術、魔法学全般の3種からの総合順位)を叩き出した秀才、アルビー・ハイドが選出した、初回遠征試験のメンバー八名(他二名は監視、警戒の為外側を見張ってる)は今、一つテントの中で一ヶ所に集まり作戦会議を催していた。


メンバーは俺、ヒサカ・アルドレア、眠気瞼のリラ・ルーシュ、ボブヘアーの長身オカマのエド・ブラウン、チャラ男のアイザック・カーター、赤髪生徒会長のレイラ・スイフト、堅物王子のアルビー・ハイド、褐色美女のエマ・ウィルソン。銀髪長身美人のエレノア・スチュワード


まず始めに中央に立つリーダーのアルビーが言葉を紡ぐ。


「皆、揃ったね。では対策会議を行う。最初は現状報告から。ヒサカ」


「えーと。俺達、偵察班は目的地である洞窟から六マイル程の距離で魔狼まろう六匹に遭遇。その魔狼まろう六匹を撃退後、巣の位置を特定。巣は洞窟の位置と一致した。


その後、再び奇襲を食らって逃走。

奇襲した魔狼まろう一〇匹は拠点に撤退中にリラとレイラの助力によって撃退に成功した。以上」


「次、設営班」


周りを見て仕方なしといった感じに代表してエドが口を開く。


「はいはい。私達、設営班は予定通り仕事をこなしたわ。見たら分かると思うけど、東側にテント三個分、西側にテント三個分。を設営済み。

ちょうど男女比5割だし、当然だけど東側に女、西側に男、と別れてもらうわ。

後、薪に関しても充分確保済みよ」


「次、食材調達班」


レイラが意気揚々と口を開く


「西の森で猪を三頭狩った。後、食材も結構採った。多分食べられる、でしょ」


その態度に俺の怒りの沸点が切れる


「バカか、食べられないものは食べられる用には出来てないんだよ。さっきも言ったが、三割は雑草だし、毒キノコも混ざってんだよ!

そもそも猪の肉なんて血抜きが大変なもんを狩ってくんなや」


「あんたが何でも作れるって言ったから適当に狩って来たんでしょう。やれよ」


「作り用の無いもんは作れねーだろう!少しは考えて採ってこい」


「あ?んだとごら、やんのか?」


「毒キノコ鼻にぶっさすぞ、くそアマ」


「二人とも落ち着いて。今はこれからの計画を練るべきでしょ?」


騒ぎを納めたいのかエレノアが止めに入る


「分かってるわよ。ノア」


「すまん。俺も少しむきになりすぎた」


ごほん、とアルビーが一度咳をつく。


「食材調達に関しては以後、ヒサカを動向させる事にする、いいね」


「わかったわよ」


レイラが渋々了承する


「設営班は素早く正確に限られた時間で良くやってくれた。ありがとう」


「…うん」


「任務なんだから当然よ」


「へへ、照れるー」


返事を聴いたアルビーが軽く微笑むと、最後に本題を話し出す。


「で、これからどうするかについてだけど。僕としては、一度失敗したけれども、それを踏まえた上で、もう一度挑むべきだと考えてる」


「そりゃ、逃げはないからどちらにしても挑まなきゃいけないけどさ。それにしても対策は必要でしょ」


「今度も逃がしてもらえるとは限らないしね」


「いっそうの事、一回皆で行くってのはどうよ」


「バカ。現状考えろ。敵の数も種類も分からないのに闇雲に挑んでも返り討ちに合うだけでしょ」


「なるほど、流石姫」


「そのあだ名やめて」


「慎重になるのは分かるけど、慎重過ぎても動けないだろ」


「だから、そうならない為の会議でしょ?」


「………」


「ほな。少しうちが潜ってこか?」


突然の打開案に皆の注目が褐色の美女に集まる


「エマ。あなたの潜伏力については誰も疑ってない、けど一人で行くには洞窟はあまりにも危険よ」


「ぞろぞろ引き連れて行っても気づかれて逃げ帰るのが関の山やない?」


「私は賛成かな。エマを信じる」


「私も…今の状態、少しめんどくさいし。攻略するにしても情報は必要だと思う」


「はぁ、俺は反対だ。敵には魔狼まろうが居るしオークも鼻が利く種族だ。最悪の場合、殺されるぞ」


「意見が割れたわね。皆、一回休憩にしない?」


エレノアがそう提案してきた。


「仕方ないわね」


「ウチも意義なし」


「仕方ないわね」


「わかった」


「りょりょー」


「仕方ない、か。じゃあ各自、一五分後またここに集合で」


各々がバラけて散っていく。


◇◇◇


大型テントの側に座っていたら見つけたといった表情でエマが近よって来た。


「隣いい?」


「どうぞ」


「何してるん?」


「休憩してる」


「今回の件。どう思う?」


「言っただろ?一人で行くのは反対だ」


「ヒサカくん。君の事はよー知らんけど、それは君も同じやろ。それやのに、なんでウチの事心配してくれるん?」


今回のメンバーとは一度確認も兼ねて集まったが、他メンバーが大体知り合いだったのに対して俺はアルビーと知り合い程度だった。

もちろんエマとは一度話したが挨拶をした程度で、そこにはエミリーとエドも居たのでエマ個人に話をふる事はなく一度話した事がある程度の関係だ。


「戦力をこんなとこで削る訳にはいかないだろ」


「ウチなんてたいした戦力ちゃうやん。それは君も分かっとる筈やろ」


「それ。言わなきゃダメか?」


「ダメ」


「にてんだよ。雰囲気が俺の初恋の人に」


「ん?」


「だから、一目惚れだって。好きなの」


「ウチを?ヒサカくんが?」


「そう」


みるみるうちにエマの顔が赤くなっていく


「はぁ。んな可愛い反応すんなよ。抱きしめたくなる」


「ちょっ、ちょっと待ってや。いきなりすぎて返事、とかウチ返せへんで」


「今は片思いでいいよ。けど、エマに俺の事好きになってもらえるように努力はするつもり」


「そ、そんなストレートすぎやで」


「回りくどいのは嫌いなの」


「……ウチ、そんなに似てるん?その、初恋の人に」


「あー。そんなに似てはないけど雰囲気とか目元とかは結構似てる」


「ふーん。それって、その人の事を好きな気持ちを、ウチに抱いてるだけとちゃうん?」


「違うよ」


「そんなんわからんやん」


「違うよ」


「ホンマかな…」


「マジだって」


「君、ちょっと強引過ぎるで…もう少し時間積んでくれな。混乱する」


「そうやって、悩んでくれるなら俺としては嬉しいけどね」


「ほんま、強引やなぁ」


「手、繋ぎたい」


「…ウチ、まだ付き合う言うてないで」


「言ってみただけ」


「君。今までフラれた事ないやろ」


「あるよ」


「嘘や」


「嘘じゃない。中学時代に初めて付き合った彼女にフラれたね」


「なんで?」


「俺が一方的過ぎてしんどいんだと。ま、そいつは別に彼氏出来てたから別れる理由が欲しかっただけかもだけど」


「尽くすタイプなんや」


「尽くすよ。俺は付き合ったら絶対浮気しないし」


「ふーん。なんや意外やわ」


「見た目がチャラいだけで根は真面目なの」


「真面目、ね。君がその、ウチに抱く気持ちも真剣なん?」


「一目惚れで最後にする気はないよ」


エマは少し顔を紅くすると、立ち上がる


「そろそろ時間。行こか」


「ああ」


差し出された手をぎゅっと握ると上に引かれる


その後すぐに離されたが、心に温もりが残っているようで俺の心臓の音は鳴りやむことなく、良く響き続けた。


◇◇◇


再び集まった七人がアルビーを囲むように並ぶ。


「じゃあ。対策会議を再開しようか」


「ウチはやっぱり行くで。危険は承知や、覚悟も出来た。もちろん死ぬつもりもあらへん」


「わかった。エマがそこまで言うなら任せる。けど、くれぐれも深追いはしないでね」


「分かってる。直ぐに持ち帰ってきたるわ」


「ヒサカもいいかい?」


「信用する」


「うん。ほな、決行時刻決めよか。ウチ夜目も効くし、いつでもええで」


「少し作戦を確認をした後になるが、そのあとすぐに決行してもらう。食事は帰ってからになるけどいいね」


「わかった」


「ヒサカは今から夕食の準備に取りかかって」


「わかった」


返事をすると、俺はテントの袖を捲り、料理の支度に向かった。


☆☆☆


ヒサカ、一度嘘つきました。

ちなみにシャノンとかカナとかは都合のいい利害関係なだけなので別に好きとかじゃありません。

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