第24話 迎撃

偵察に行ってた4人が帰ってきたので設営メンバー3人は野営地を設営していた。


「リン。起きなさい」


エド・ブラウンは建てるなりテントの中で早々に寝た、茶髪の小柄な女性、リラ・ルーシュを起こす。


「んー。もっと寝させてよ」


「そうはさせて貰えないそうよ」


「なんで?」


「見たら分かる」


「んー?」


私、リラ・ルーシュはテントの帯を捲り、向こう側を見渡す。

偵察に行ってた四人が魔狼まろう一〇匹を引き連れこちらに帰ってくるのが見える。


「うげ…」


私は数の多さにびびりながらも眠気を吹き飛ばし、テントから出て、弓を構える。


弓を引き絞り、矢に風を纏わす。


「ここ、かな」


パッと矢を絞っていた左腕を離す。


勢いを付けてとんだ弓は風を突っ切るように飛んでいき、見事脳天に命中した。


続けて矢を構え、弓を引き絞り、風を纏わす。


そして射る。


今度も脳天に突き刺さる。


集束エアリス


キーと音を立て風が収縮し、束を作る。


その風が弓に集まり。引き絞った弓に弾かれるように、放たれる。


空気が悲鳴を上げる音が聴こえ、次の瞬間、魔狼まろうの脳が弾け飛ぶ。


集束エアリス


再び、風が弓に集まり、弾かれるように、放たれる。


魔狼まろうの脳天が吹き飛ぶ。


「ひゅー。さすがリーちん。やるねー」


後ろから背丈の高い金髪のアイザック・カーターが顔を出す。


「そこの間男、リーの集中力が切れかねない。黙ってなさい」


「エドちん、相変わらずのお守りだねー。ま、俺らの出番はないみたいだけど」


「アイザック。状況は?」


「おや。遅めのご帰宅かい?姫。大半はリーちんが片付けたよ」


狩りに行っていた赤髪の女性、レイラ・スイフトが帰還する。


「だからそのあだ名やめてって言ってるでしょ?」


「あだ名じゃないよ」


「じゃあ。何で姫なのよ」


「そりゃ、俺が姫様扱いしたいから姫に決まってるじゃん、てっ…もう居ない」


アイザックが気づいた時にはもう居なく、青銅の片手剣を燃え上がらせながら、獅子のような速度で走り出していた。


やがて、魔狼まろう四匹と対峙する。


瞬間、風の矢が頬の横を通りすぎ、一匹の脳天が抉れる。


「さすがリー、怖いくらいに正確。私も負けてられない」


レイラがグッと踏み込む。すると魔狼まろうも応えるように三匹共一斉に飛びかかってくる。


「せーの!!」


距離にして数センチ、炎の剣が大きく振られ、迫った胴体が3体、それらすべて無惨に炎に焼かれ、斬れる。


燃え盛る炎はやがて死体すらも焼ききり黒い灰が風に流され散っていく。


「残りは…」


もう既に倒された後のようで脳天が抉れた死体が二匹転がっている。


計、一〇匹。討ち漏らしも無いようだ。


「はー。リーったら一人で殺っちゃって、つまんない」


そう愚痴を漏らしていると戻ってきたメンバーが近付いてくる。


「レイラ、助かったよ」


「あら、アルビー。私はなにもしてない。それよりも、説明してよね」


「ごめんな~、レイラはん。想定してたより、敵さんの数が多て、まさかあん一〇匹も追ってくるなんて思わんかったわ」


「バカね。それでも、斥候スカウトマンなの?」


「いやー。ホンマすんません」


「もういいわ。それよりも、拠点が完成したから。中で偵察成果を聞かせて」


「わかった。すぐ戻ろう」


そうしてアルビー達は四人共本日は戻る運びとなった。


◇◇◇


補足


リラ・ルーシュが矢を使わず風魔法にしたのは単純にそっちの方が速くて威力も高いから、それと本数がそこまでない矢の節約です。

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