初回遠征試験
第23話 初任務
俺達、アルビー・ハイドをリーダーに据えた班は、初回遠征試験に際して、洞窟内に住む、魔物の掃討という危険度三クラス(五段階評価)の任務を負っていた。
そこは草原、俺達四人は狼型の魔物、
『
黒板を引っ掻いたような音を出しながら空気が断裂する。
刃となって放たれた風はそのまま狼に似た姿の魔物、
肉が切れ、臓器が溢れる。血が草木を濡らし、やがて地面に染み込む。
命を散らした
やったのは俺の後ろで杖を構える魔術師のヒストレア
仲間が殺される様を見とり、俺と対峙していた
俺はそれを追おうと決意するがアルビーの右手がそれを制する。
「だめだ」
「仲間を呼ばれるぞ」
そう俺がそう咄嗟に吠えた所に割り込むように声がかかる。
「大丈夫、あいつは時期に死ぬで。ワイが傷付けといたしな」
「傷を付けただけじゃ…」
「ただの傷ちゃうで。毒が塗ってあるやつや、たっぷり時間をかけて殺すタイプのな」
「僕たちは確実に逃がす為のきっかけを作ったんです」
「全部、折り込み済みってことか…」
「
「ほら、あそこでぶっ倒れてるの見えるか?距離にして数十キロ先」
受け取った望遠レンズごしに見ると確かに数十キロ先に
「ああ、見える」
「やろ。それで
「なるほど」
作戦はつまりこうだったのだろう。毒薬で弱らせた所をわざと逃がし拠点の位置を割り出す。更に毒を受けた
(な、なんだこいつら…)
連携具合の確認を兼ねて偵察しに来ただけで作戦指示は
そんな中、俺が狩りのレベルについていけてないのは明白で、六匹の
その点三人は最低でも一匹は倒しており、更に斥候のルーザーは逃がした一匹に毒をお見舞いして進路を特定の材料とした。
それはもう明白なほどに俺は足手まといそのものだった。
「ちょっとまって。地図と照らし合わせると…いかんな、こりゃ洞窟方面や」
「ちょっと見して」
「不味いな」と指を噛むルーザーに地図を見せてとアルビーが言う。
このチームの陣頭指揮はアルビーであるので詳しく見とくべきなのだろう。
「
「やな。
望遠レンズを覗きこみながら斥候のルーザーが言う。
「ふむ。どうしようか…ヒサカ、君は何かアイデアあるかい?」
「この状況で俺に答えを求めるか?俺はお前らみたく経験豊富じゃないし、足手まといの意見なんて参考にならないだろ」
「ヒサカ、君を足手まといなんて思ってる者なんてここには居ないよ。剣の扱いも慣れてきてるみたいだし、君は頭もキレる。だから君に聞いたんだ」
「お前、誉めちぎりすぎだろ…泣いちゃうぞ」
目頭が熱くなり、額に手を当て顔を隠す。
「おい、おい、ちょっと誉められただけでもう泣いとるで」
「ヒサカさんは随分涙もろい性格なんですね…」
「うう。とりあえず、
「ちょっとまってな。今確認する…」
持ち寄ったバックを漁るルーザー。
やがて、見つけ終わると、掲げて見せてくる。
「一応3個は持ってきた、ウィルソンはんも同じくらい持っとる思うけど…これで足りるかな?」
「ああ、それだけあれば後は魔法で大半は吹き飛ばせる」
「なるほど、奮迅爆発を利用するんか…洞窟は密室やし。ええんちゃうか」
「そう。それで大半は死滅させられると思う」
「いいですね、それでいきましょう」
魔法師のヒストレアと斥候のルーザーが作戦に同意する。
「威力も範囲も申し分ないとして、やっぱり数が気になるね」
「つっ…」
突然険悪な表情になったルーザーが林の方の方に向け、矢を構える。
『
離した矢が林めがけて飛んでいき、やがて一帯が煙を上げて燃え盛る。
「ヒサカはん、逃げるで」
「お、おう」
既に皆、準備は満タンで。
俺はそのまま状況が把握できていないまま拠点へと引き返すことになった。
◇◇◇
作戦概要
まず狼が六匹全員で襲ってきたので斥候のルーザーが受けると同時に二人がカバー、ルーザーは毒が付いたナイフで浅傷をつける。
それを見たアルビーと魔術師のヒストレアが一連の目的を確認。
突然の襲撃に驚いて立ち止まっていたヒサカに向けて、「ヒサカはんこっち頼めるか」とルーザーが声をかけ、別の奴の方へ。
声を聞いたヒサカが立て直し、後衛を守る基本戦術、
ヒサカが二匹相手に手こずっている間に時間を正確に見計らい、魔術師のヒストレアが
といった手順です!
ちなみに分担はアルビー二匹、ルーザー一匹、ヒストレア一匹、ヒサカ二匹(実質一匹)です。
これ、別にヒサカが弱い訳じゃないんです。他が場慣れしてるだけで。
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