第15話 修行

食堂で晩御飯を食べた後、俺は2階の闘技場に向かっていた。


(テツヤ、寝ててあの成績だもんな…)


授業の間、彼は横で爆睡していたが、授業中に出された小テストは満点だった点を踏まえると、アルビー同様テツヤもすごいやつだと思い知らされる。


その点自分は…と落ち込んでいる間に闘技場に着いたようだ。


ここで何をするかというと修行、すなわち師匠と会うわけだが、昨日の晩は遠足前の子供みたいにウキウキしていてあまり寝付けなかった。


鉄で出来た重いドアをあけると、早速師匠の姿を見つけたので、他人の目も気にせず急いで駆け寄る。


「師匠!!おすっ」


わざわざと多数の生徒が刃を交えている闘技場で声が木霊する。


「お願いしますを訳すな、あと、うるさい」


「すいませんっす。所で今日は修行初日、剣は持ってこなくていいって言ってましたけど、一体、何をやるんですか?」


「鞭でお前を叩く」


「え、どういう…」


ピシッと足元に鞭が当たる。


「何、初っぱなから素振り数千回なんて初歩みたいな事はやらん。

直ぐに実践で使う為に鞭を30分間避けつづけるというトレーニングがある、お前にはお似合いのトレーニングだろ?」


「いえ、そういう趣味は…」


ビシッビシッと鞭が足に当たる。


「いたぁあああああ」


「きびきび動け」


師匠はにっこり笑顔でご機嫌だ。

女王様の素質もあるんじゃないだろうか…


鞭が足に当たる


「いたぁあああああ」


「動け」


「はいっ」


◇◇◇


右から鞭が飛んでくる、狙いはまた足だ


横に体重をずらして避ける


鞭はピシッと音を立てながらしなりこちらにやってきた


「え?」


足に鞭が絡まりぐんっと体制を崩す


ドテン


勢いよく横にすっころんだ俺は起き上がろうと手をついた


ピシッ


今度は手に鞭が当たる


「いたぁあああああ」


ヤバい、そう確信した俺は即座に起き上がり、前を見る


(呼吸…そうだ呼吸を、呼吸を整えるんだ!!全集中…)


ビシッ


額にクリンヒットする


「いたぁあああああ」


転げ回る


「バカが、集中しろ!」


怒ってる間も鞭が飛ぶ、鞭使いがまるで鬼のようだ。


「ヒイイイ」


豆まきの豆を全部避けるが如く体の全身で鞭を避け続ける


右、左、上…


くるっと回って首に来る


危機一髪、足の力を抜く事で窮地を…


ビシッ


「ぐえっ」


首に鞭が当たる


急いで立ち上がり、動く、とにかく動く


右、右、右、上、下、上、上、


(ヤ、ヤバい…)


鞭が徐々に速くなって迫ってくる


リズムゲームのような規則性のある行動じゃない、完全ランダムで、意識を完全にずらして、やってくるので避けるのは至難の技だ。


ピシッ、ピシッ、バシッ、ピシッ、ピシャッ


靴でタップしているわけじゃない、鞭が体に当たっているのだ


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」


30分という時間がやけに長く感じる、気がつけば全身アザだらけだ。


「しいっ、しょおお。もうぅっ、30分…過ぎっ」


ピシッとした音がなりやまない、もう目で捉えた時には反射で動いている状態だ、それでも、それでも足に当たる、腕に当たる、首に当たる。


「何?私にはまだまだ余裕に見えるが?」


「何言ってんですか。もう、汗だくで、いったぁああ」


「時間なんて数えてる余裕があるのなら大丈夫だ。もっと動け」


まるで鬼、いや鬼だ。見えないだけで頭には角があるに違いない。



ビシッと腕に鞭が当たる、どうやら右腕にも鞭が見える


(幻覚か?)


「か、数が…」


「二刀流というやつだ、カッコいいだろ?」


「む、鞭増やすなぁああああ」


その絶叫は師匠には届かず完全に動けなくなるまで修行という名の拷問は続いた


◇◇◇


周りに迷惑極まりないので少し変えるかもです!

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