第5話 新鮮な記憶

「お、俺に人殺しをやれと言うのか!」


「出来るだろ?それくらい」


「出来るわけが無いだろ!いくら悪意が募ろうと慣れようと、俺はそこまで倫理に外れた事はしない」


「大丈夫さ。ちょいと刃物をちょうどいい所に食い込まされば生命なんて容易く絶てる」


「そういう問題じゃない!俺は人間なんだ人は殺せない。生まれた世界が違おうとそこはお前も同じじゃないのか?」


「同じだと何故思う?こんな命令を君に下しているのに」


「そんなの当たり前だろ?お前は俺を助けた、それだけでそう思うには充分だ」


考え直せと必死でルカの良心に訴えかける。しかし本当は分かっていた、ルカがここに俺を連れてきて殺せと言ってきた時点で逃げられないことは…。

そうだとしても、少しでも慈悲の心が残っているならと俺は願う。そうであって欲しいと…


「見苦しいよ。分かってるくせにそうやって命乞いをして…はぁ…真昼、立場はわきまえた方がいい」


突如、身体から於曾が這い寄る。前にいる存在そのものに全身が悲鳴を上げているのだと本能が気づいた。


「初めから君に選択肢なんて無いんだ」


ルカの手がこちらに向かって伸ばされ、俺の頭を掴む。瞬間、チェーンソーで内側を抉られるような痛みが全身を巡る。


「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


痛みに対する絶叫を揚げるが周囲には誰も居らず、ルカが与える痛みだけが現実を教える。


「苦痛は最高の快楽である。これは誰の言葉だったかな?あ、そうそう思い出したよ、サディストのピアーズ君の言葉だったか。彼はね面白いんだ。彼が□□□□している時に相手の首を□□てる事が気になって聞いてみたんだよ「何で首を□□てしまうの?そんなんじゃ□□声もあげられないじゃない」って。そしたら彼は何て答えたと思う?」


こちらに問いかけるように語りかけてくるルカ。

だが、耳に入ってくるミミズのようなムカデのような触感と絶え間なく続く腸が捻れるような激痛が俺の声を奪って答える事すらかなわない。


涙が溢れる。鼻水が滴る。目が血走る。

そんな俺の様子を微笑ましく見つめ、ルカは話を続ける。


「ポカンと目を丸くして、彼はこう答えたよ「何でって、□すつもりで□□□方が相手も□□□□□だろ?それにキューってちじまった□が最高に気持ちいいんだ」って」


更にルカは話を続ける。


「つまりね。彼が言うのはすごくシンプルな話なんだ。快楽は痛みを薄くしたものにすぎないって事なのさ」


涙が鼻水がだらだらと汗が大量に吹き出す、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛痛痛痛いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ


「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


全力で痛みを和らげようと全身が悲鳴をあげる、しかし痛みはいつまでも身体に纏わりついて離れない。


意識が飛ばない、全身が釘で刺されたように痛い。意識が飛ばない、内側が針を刺されて上から食い込んで、捻れるように痛い。意識が飛ばない、頭蓋骨が割れてるように痛い。

意識が飛ばない、意識が飛ばない、意識が飛ばない…


果たして先程から何時何秒地球が何周回ったのだろう


痛みは終わらない。視界が赤い。俺は死んだの?


「でね。私は考えたんだ、実のところそれが真理なんだとしたら一生忘れられない快楽って薬よりも人為的な□みなんじゃないかってね。だからさ、覚えてよ、そして忘れないで、この快楽から逃げ切れる唯一の方法は、僕の命令に従うしかないって事を」


痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛…


長い赤色の世界が徐々に明ける。それはまるで朝日が昇り眩しい光が周囲を照らすようで、気がつけば尿意を感じる。


「お、お、お、お、お、おしっこ」


「はははははははは。第一声がそれかい?キモいな君!」


手を放されたのに気付き一瞬の安らぎが俺を迎える、しかし、再び伸びてくる手に理性が悲鳴をあげる。


「ああああああああああああああああああああ。やめてくええええ。俺が悪かった!帰してくれぇええええ」


「だーめっ」


唇をそれが撫でる。俺は再びチョコレートのような甘さを味わうのではなく新鮮な赤い痛みを味わった。


「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


痛みが再び全身を蹂躙する。痛い、痛い、痛い、痛い、痛い…

涙が枯れて、声も枯れて、目玉が飛び出そうになるのを抑えようとして、顔を無造作に触る。

痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い。


傷をつける、傷をつける、傷をつける、傷を…

開けたのはパンドラの箱。強引にこじ開けられたそれは知りたくなかった世界で、激震のように俺の脳髄が悲鳴をあげる。


「いやだ!」


血の涙が零れ、己を汚す。それは精一杯の抵抗、蓋を強引に閉じる、厳重に鎖を付けて、拒絶する。


痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い


血の涙が止まらない。意識が朦朧と沈む。


鈍痛のように残る痛みが薄れて行く気配を感じて顔を上げる。


ルカの顔は光に照らされ、見えない。ただ、声だけが確かに耳に入ってきた。


「思い出した?君の立場」


「は、はははははははは。ははははははははい…」


痛みは教えてくれた。こいつに従わなければ死よりも重い痛みを味あわされると、ならば俺は服従するしか道はないと。

涙目の俺は土下座をすることでそれの意に答えを出した。


☆☆☆


どうやら成人向け表現らしいので文字化けという形にさせていただきました。

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