第6話〈部隊編成〉
今回の任務は三人まで同行が可能だ。
だから、長峡仁衛は一体誰を連れて行こうかと思っていた。
(詩游はサポートや戦闘にも有効だしなぁ)
永犬丸詩游。
狗神術式を扱う彼は、数々の契約した犬型の式神を召喚して戦う式神遣いだ。
その式神のレパートリーも豊富であり、彼が居る居ないで戦況は大きく変わる。
それ程に永犬丸詩游と言う存在は大きい。
そして何よりも、長峡仁衛と永犬丸詩游は幼馴染であり親友と言う存在でもある。
関係としても良好である為に、長峡仁衛は好んで長峡仁衛と共にしたいと思っていた。
(けど、禁区、それも〈黒泉〉か)
長峡仁衛はその禁区がどういった場所であるのか、理解していた。
曰く、泉の厭穢が溶け込んだ森林地帯であり、その一帯は、黒い墨の様に濁っている。
其処に足を踏み入れれば、まず最初に泥の様な臭い悩まされる。
それは〈黒泉〉の初期症状であり、第二に、体が水に触れている様な感覚がある。
そして、その水に触れている感覚から先は、視界が歪んで、周囲に黒い線の様なモノが浮かび出す。
そこまでなれば、例えその地帯から逃れても手遅れと言って良い。
厭穢が発する特異な瘴気が体内に充満して、一般人ならば生涯付き纏うべき障害となる。
祓ヰ師は肉体に臨核がある為に、例え瘴気が体内に充満していても、それは呪いの一種である為に、喰らっても臨核によって神胤に生成する事が可能。
そして、最終段階である現象は、自らの肉体が泥の様にふやけていき、肉体の細胞が崩壊して地面に落ちていく。それは泉の底の様に、泥の一部と化してしまうのだ。
(手駒が増やせるのが詩游の術式、その利点だけど……増やせば増やす程に厭穢の肥えに変わる、仕方が無いけど、詩游を連れて行くのは止めておくか)
ならば、誰を連れて行くか。
正直に言えば、今回の禁区解放は、長峡仁衛と辰喰ロロのみで事が足りる。
それ程に、今回の任務は簡単だ、と言うワケではない。
単純に、長峡仁衛は強い。そして、辰喰ロロの術式は、任務に適している。
故に、これ以上の人選は存在しない、そう言っても過言じゃないのだ。
(けど、それはあくまでも確率の話。生存は高くなるが、高確率と言うだけで、死なない可能性がなくなるわけじゃない)
出来る事ならば、生存率を極限にまで高めておきたい。
だから長峡仁衛は、今回の任務で絶対に死なないと言い切れる人間、そして、今回の任務に適している者を探していた。
「……あ、アイツなら、どうかな」
長峡仁衛は、ふとある人物を思いついて、その人間の元へ向かい、会いに行くのだった。
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