第5話〈任務同行〉
長峡仁衛を訪ねに来たのは、学園に滞在する報告機関だった。
今回、長峡仁衛が学園内に滞在していたのを確認した為、彼に任務が与えられる様になる。
「長峡仁衛、これより任務を発令する。本日より、H県の禁区・〈
禁区。それは、咒界連盟が定めた人間が侵入してはならない空間侵食型の怪異現象であり、特定の区間に入る事で瘴気による精神障害や意識混濁、特定の法則を強制順守したり、厭穢による肉体の操作権が奪われてしまう、と言った現象が起こる為に、人類が侵入してはならないように咒界連盟関係者が管理しているのだ。
「尚、今回の任務の現場責任者は長峡仁衛に該当し、長峡仁衛を含めた三名の祓ヰ師の活動が許可されている。以上」
それだけ残して報告機関の一員はその場から去った。
長峡仁衛は溜息を吐くと即座に意識を仕事様にへと切り替える。
「……良し、それじゃ、行くか」
長峡仁衛はその足で校門前へと向かう。
「待てよ、長峡。お前ひとりで行くのか?」
彼女の言葉に長峡仁衛は頷いた。
「あぁ」
「一人だと危ないだろ?」
「いいや、他に人が居た方が、俺は危ない」
それは、長峡仁衛が他の祓ヰ師が危険な目に遭わないか細心の注意を払う為だ。
長峡仁衛は祓ヰ師としては破格な能力を持つ。それは強力であり、他の祓ヰ師には無い万能さがある。
だからこそ、長峡仁衛は強者としての矜持があった。
自分よりも弱い人間を守る。それは決して上からではない。
「じゃあ、私はお前よりも弱いとでも言いたいのか?」
「別に、そうは言って無いけど………ただ、危険な場所に行ってほしくないだけだよ。俺は」
「人が傷つく様が見たくない、そんな所か?けどお生憎さまだな」
辰喰ロロはスケジュール帳を取り出して何かを書き記す。
そして、それを長峡仁衛に見せた。
「私もお前が傷つくのは見たくない。お前は傷つけて良いのは、私だけだ。だから、私も同行する。お前のメイドとして、お前を想うものとしてな」
スケジュール帳には、今夜の任務が記されている。
そして、その任務の参加メンバーには、長峡仁衛と、辰喰ロロが書かれていた。
「……そうか、お前が付いていきたいと思うのなら、俺は止めない」
そう長峡仁衛はスケジュール帳を彼女の手から取ると、パタリ、とそれを閉ざして、彼女の目を見て言う。
「矛盾だろうけど、俺は、お前を守る様に動く。本当は、来てほしくないけど」
「……あのさぁ、長峡。そうまどろっこしい言い方止めるんだな、普通に、助けに来てくれてありがとうございます。でいいだろ?」
彼女はそう言って尖った牙を見せる様に笑った。
「…はは、あぁ。助けに来てくれて、ありがとうございます」
そう乾いた笑いと共に言うのだった。
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