中層下部:蠱毒の機窟2
カンっ!
「ふぅ……」
割と登って来たけれど……まだまだ遠いなぁ。中層中部を目指すためにはここで上に上がるのがいい、っていうのは出発する前に改めて確認できたけど……遠いなっと!
カンっ!
射杭糸機をほんの少しだけ飛び出したパイプや鉄骨に引っ掛けながら、少しずつ僕はこの縦穴を登っていきつつ先日寝る前に目星をつけていた穴を目指していた。
距離としては別にそこまでものすごく遠いって訳じゃあないんだけど、いかんせん壁の管は滑るし足場も少ないから登りにくいんだよねぇ。
それに、崩れ遺跡辺りとは作られてからの時間だけじゃなくて、建材が違うせいか足場としての劣化が激しいのが更に登りにくくしてるんだよなぁ。
とはいえ、あのやばそうな奴が行き来できるくらいの耐久はあるっぽいし、少しくらい無理矢理登っても大丈夫かな?
「よし、やってみるか」
そう少し横着に考えた僕が壁に杭を打ち込み、次の足場に丁度よさそうな場所へと着地した瞬間、着地したパイプへと亀裂が入り、中から大量の蒸気が溢れ出てくる。
その蒸気に当てられた僕は足を踏み外し落下しかけるものの、射杭糸機を解いて無かった事でなんとか落ちずに済む。
びっくりしたなぁ……射杭糸機のおかげで落ちずに済んだけれど、気をつけないと。
まだこの遺跡の機構自体は生きているみたいだし、これからはこの管に安易に傷を付けるような事は控えて進もう。
にしても蒸気か……あんなに勢いよく吹き出したりするものだったんだ。
僕が乗った瞬間管が張ってるような感じがしたし、もしかして蒸気が管の中に溜まっていた?んで僕が着地した事で破裂して吹き出した……って所か。
「これ、上手いこと使ったら射杭糸機強化出来たりしないかな?」
そんな事考えながら射杭糸機の杭を投げつつ、僕はさっきの蒸気噴出のような勢いで飛んでいく杭の姿を想像し、ロマンに尻尾を震わせる。
そんな次の改造案を考えつつ登っていたからか、一息つこうとした時にはもう目的としていた横穴のすぐ近くまで来ていた。
2日くらいかかると思ってたのに……考え事してると早いもんだぁ。さて、それじゃあここで一休みしてー……いや、出口まで探してしまおう。
あの後特にトラブルもなかったし、なんかこの調子で中部への出口も見つかるかもしれない。
とはいえ、この穴から出るって事はまたあの超巨大マモノと会敵するかもしれないのか……
「……ダメダメ、この遺跡で二の足を踏んでたら何処にも行けなくなる」
大丈夫。前回みたいな状況でもない限り、僕ならどうにか出来るはずだ。
……よし。行ける────ってん?あれって出口じゃない?
なんとかあの超巨大マモノの恐怖を振り払い、水が落ちる小路へと戻った僕は、入ってすぐ左側にあった通路の奥に光が射し込んでいるのを見つける。
その光に僕は少し警戒しながらも近づき、覗き込むようにしてその光の射す天井を見ると、格子の向こうには確かに何か大きく白い建物があった。
そしてそれを見た僕は自分でも驚く程の威力の掌底をその格子に叩き込み、真上に吹っ飛んだ格子が落ちるより早く穴から飛び出る。そして────
「でれたぞぉー!」
僕は下から光の指す、その白く巨大な街の中でそう喜びに声を大にして叫ぶのだった。
水落つ遺跡の探跡者 こたつ @KOTATU64
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。水落つ遺跡の探跡者の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます