中層下部:落水の小路

「はっ……はっ……はっ……!」


 どーして……


「どーしてこうなったぁー!」


「ヂュヂュゥゥゥウ!!」「シャアァァァア!」「ゴポッゴポポォ」


 あれから僕は、後ろから聞こえてくる数だけでなく種類まで更に増えた鳴き声を聞きながら、全力で逃げ回りながら思わずそう叫ぶのだった。

 どうしてこうなったのかというと……


 ーーーーーーーーーーーー


「ふっ……ふっ……ふっ……」


 とりあえず最初こそ全速力で逃げ始めたけれど、この速度で同速なら全力で飛ばせばなんとか逃げ切れそうかな?

 よし、そうと決まればそこの角を曲がった所で全力出して────


「あでっ」


 なんかむにっとしたものに思いっきりぶつかってしまった……っていかんいかん!早い所逃げない……と……


「シュルルルル」


 わぁー……でっかい頭に大きな目だなぁー……逃げる!


「ッシャアァァァア!」「ヂュエェェェアァアア」


 うわっ!あいつらまでもうきやがった!つ、次だ!次の曲がり角曲がった所で一気に振り払っ────


「ゴポポォ……」


「スラッ!」


 やばい!水辺でスライムはまじやばい!倒せないし高速で移動してくるし本当に────


「ヂュヂュヂィィィア!!」「シャァァァァア!!」「ゴポポォォオ……」


「やばいってぇぇえええ!」


 ーーーーーーーーーー


 と言うことがあり、今現在全力で逃げている僕の後ろにはネズミと蛇のマモノとスライムがそれぞれ前にいる生き物を捕食しようと追いかけている構図が出来上がっていた。


 もう走り始めてどれくらい経った……?まだ足は動くしスタミナもあるけれど、流石にそろそろなんとかしないと……って、まて。

 なんか今通り過ぎた水路すっごい広かったよな……もしかして、どこかに通じてるんじゃないか?

 ……いや、悩んでる暇はない。やっと特徴のある道を見つけられたんだ。あのデカい奴が通るからとか、ここを乗り切る為にもそんな事は考えず賭けるしかない。


 そうと決まればと僕はその場で急停止すると、さっきの通路に戻るべく目の前から山のように押し寄せるマモノの大軍を方へ向き直る。

 そしてマモノの大軍へと走り始めた僕は、そのまま奴らの牙が届くすんでの所まで走ると────


「今っ!」


 僅かに見えたマモノ達の僅かな隙間を縫うようにし、まずはネズミ共の一瞬だけ空いた僕がギリギリ通れる穴を通り抜け、次に水中へ飛び込みヘビの下をくぐる。

 そして最後に水中からすぐさま飛び出した勢いそのままに、天井に杭を投げスライムを飛び越え、なんとか窮地を脱する。


 よぉっし!何とか抜けきれたぞ!

 そうしたら後は逃げるだけ!元きた通路がなんか騒がしいし、多分アイツらが争ってこっちに来ない内に……こっち!上流の方に逃げ────


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


「う、うそ……でしょ?」


 なんで……なんで────


「こんなタイミングピッタリにあのでかいヤツがこっちに向かって来てるのぉ!」


 逃げようと決めた上流の方、そっちに僕が体を向けた途端大きな揺れと共に遠くからこちらに迫るあの超巨大なマモノの口を見た僕は、そう叫ぶと共に全力で下流の方へと走り出す。

 地面の石畳を砕く程全力で走っているにも関わらず、ジリジリと後ろから迫ってくる大きな圧を受けながら、僕が死ぬ気で分かれ道もない太い道を走る。

 すると遠くに薄らとだが、何処かに通じている証でもある光が見えてくる。


 あそこ!あそこまで行ければ!その後どうなってでもどうとでもできるから……!


「っ!くぅ……!ぅぅうおおおおぉぉぉぉぉおおお!」


 そしてその切実な思いが実ったのか、もう真後ろに大きな圧を感じながらもなんとか僕はその光の中へ突っ込み、そして────


 間に合っ────


「へ?ちょっ、うわぁぁぁぁああ!」


 真っ逆さまに落ちて言ったのであった。

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